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【福山市】25sora(ニコソラ)〜 誰もがいきいきと働ける場所を目指すソフトクリーム屋

備後とことこ

25sora(ニコソラ)〜 誰もがいきいきと働ける場所を目指すソフトクリーム屋

「誰もがいきいきと働ける場所を作りたい」
「食べたあと、空を見上げてニコッとしてほしい」

そのような願いから、ソフトクリームとサンドイッチの店、25sora(ニコソラ)は営まれています。

目印は青い屋根とポップなのぼり。

福山市南蔵王町のお店には、こだわりの素材から作られるおいしさと、どんな立場の人でも心地良く働ける安心感があふれていました。

あと味さわやかな濃厚ソフトクリーム

25soraのメイン商品は、ソフトクリームです。
着色料や香料といった食品添加物を使用していないため、ミルクそのもののおいしさを味わえます。

こだわりの原材料

シャインマスカットのソフトクリーム(画像提供:25sora)

ソフトクリームに使われる生乳は、島根県で自然放牧をおこなう中山牧場のものです。多くの乳製品は、複数の牧場から集めた生乳をブレンドして作られます。

一方、中山牧場のミルクは、誰がどの牛から搾ったのかまでわかります。その日の気温や牛の体調、食べたものなどによってミルクの味は絶妙に変わるのだそうです。

入口ではかわいい牛がお客様を待っている

おいしいソフトクリームのために中国・四国地方の牧場を回っていた代表社員の井口泰江(いのくち やすえ)さん。その味とこだわりに惹かれ、中山牧場の生乳を使ったソフトクリームを25soraの看板商品に決めました。

その日の生乳の味にあわせ、配合される砂糖の量は変わります。その生乳のためだけの特別な配合でできあがったソフトクリーム液。
25soraでは、1日の気温にあわせてソフトクリームの固さを調整して提供しています。

こだわり抜かれたソフトクリームは、濃厚なのにあと味がさっぱり。味も固さも毎日少しずつ異なるため、その日にしか味わえないおいしさが楽しめます。

季節の生フルーツを使ったソフトクリームが人気

夏季限定の桃ソフト(画像提供:25sora)

25soraでとくに人気なのが、季節の生フルーツをトッピングしたソフトクリームです。

なかでも夏季限定の桃ソフトは、訪れたほぼすべての人が注文する人気商品だそう。桃がまるごとひとつ、ぜいたくに使われているためインパクト抜群です。

大福ソフト(画像提供:25sora)

秋には、シャインマスカットやイチジクをトッピングしたソフトクリーム。冬には、ソフトクリームとイチゴをもちもちした求肥(ぎゅうひ)で包んだ大福ソフトが登場します。

続々と新メニューが発表されるため、何度訪れても新しい味が楽しめるでしょう。

寒い季節にはサンドイッチもおすすめ

おいしさにこだわったソフトクリームでも、秋冬には売り上げが夏季の3分の1にもなるそうです。
25soraでは、ソフトクリームとともにボリュームのあるサンドイッチを販売しています。

手作りにこだわった具材

具材たっぷりのサンドイッチ(画像提供:25sora)

サンドイッチにはさむ具材は、とことん手作りにこだわっています。ドレッシングやソースもすべて手作り。カツやフライも衣をつけて店内で調理しています。

とはいえ、25soraはソフトクリームがメインのお店です。サンドイッチのみを購入する人に、ソフトクリームにも興味をもってもらえるよう、工夫もおこなっています。

たとえば、クリームコロッケのクリームにはソフトクリーム液を活用。シンプルなきのこのサンドイッチでも、ソフトクリーム液を使ったホワイトソースで、濃厚かつリッチな味わいに仕上げています。

濃厚で一度食べたら忘れられない、と評判です。

デリバリー注文も受付中

サンドイッチの売れ行きは好調

サンドイッチは出張販売やデリバリーの注文も受け付けています。サンドイッチのデリバリーは、3個以上の注文で配達料が無料になるサービスを実施しています。

手軽においしいサンドイッチが食べられると好評です。

飾られたポスター

25soraの店内には、青く大きなポスターが立て掛けられています。

ポスターには「25soraはソフトクリームとスイーツのお店。そして、障がいをお持ちの方の『働きたい』に寄りそうお店です。」という文字が書かれていました。

なぜ25soraを始めたのか、代表社員の井口さんに話を聞きました。

代表社員 井口泰江さんにインタビュー

ソフトクリームを手にする井口さん

井口泰江さんは、補助金や助成金のサポートをおこなう合同会社スマイルリンクスの代表社員です。2023年から、スマイルリンクスの事業にスイーツ販売の25soraが加わりました。

25soraを始めたきっかけや、お店にかける想いなどを聞きました。

障がいのある人が働く場所を作りたい

メニューは低い位置にも掲示

──25soraを始めたきっかけを教えてください。

井口(敬称略)──

25soraは、障がいのある人とともに働くお店です。

私の周りには障がいがある人はいなかったんです。だから、障がいは自分には関係がないものだと思っていました。

でも、たとえば今日の帰り道、事故に遭って歩けなくなるかもしれない。突然倒れて体にマヒが残るかもしれない。可能性はゼロじゃないですよね。

そうなったとき、自分や自分の家族はどうやったら生きていけるかを考えたんです。そこで、障がいがある人の働く場所がとても限られていることを知りました。障がいの程度によってお給料が低かったり、働く時間を制限されたりすることもあるようです。

そんな状況をなんとかしたいと思いました。たとえ障がいを負ったとしても、働ける場所があるなら安心できる。なんとかなると思えるかなと。そこで、お店をやってみようと決めたんです。

──なぜソフトクリームやサンドイッチなのですか?

井口──

「障がいのある人は、どういったことができるだろう」と考えて、搾るだけのソフトクリームならできるんじゃないかと思いました。サンドイッチも具材をはさむだけなら、やりやすいんじゃないかな、と。

はじめからソフトクリームやサンドイッチのお店を考えていたのではなく、障がいがある人がやりやすいことを考えてソフトクリーム屋に決めました

ソフトクリーム液も、中山牧場の生乳をメーカーが加工したものを仕入れています。機械に液を入れると、おいしいソフトクリームが作れるんですよ。誰がやっても同じようにおいしく作れることを重視しています。

ソフトクリーム液
機械にソフトクリーム液を入れる井口さん

──障がいのある人と働くうえで、何か配慮していることはありますか?

井口──

障がいの有無にかかわらず、できないことは素直に手を貸しあえる、気兼ねなく声掛けできる雰囲気作りを大切にしています。もちろん、働きやすいよう環境面でのサポートは欠かせません。

たとえば、入り口にはスロープを設けていますし、テーブルは車いすでも作業しやすいよう低めに作られています。

障がいのある人でも楽しく働いてもらえる場所として、25soraが提供できたらなって思っています。

店舗入口のスロープ
車いすでも作業しやすい低めのテーブル

また、人によってはソフトクリームの提供にどうしても時間がかかってしまうこともあります。その際には、お客様に説明してご了承いただいています。

コーンではなく、プラスティックのカップを使用しているのも、時間がかかってコーンが湿ってしまうのを防ぐためです。

カップの中のチョコパフも、ソフトクリームの水気を吸ってくれる

お客様からは「コーンのソフトクリームも導入してほしい」と言われることもありますが、おいしい状態で提供できるかを考えると、なかなか難しいですね。

誰にとっても居心地の良い場所へ

画像提供:25sora

──お客さんからの反応はどうですか?

井口──

25soraに来ると安心する」とのお声をいただいています。
25soraは、体が不自由なお客様も多く来店されています。障がいのあるスタッフにも働きやすいようお店を作っていることもあり、つながりの輪が広がっているのかもしれませんね。

お店の中では、好奇の目で見られて居心地の悪い思いをすることもありません。
誰にとっても居心地の良い空間になれたらうれしいです。

──ほかに、25soraならではの取り組みはありますか?

井口──

25soraでは、放課後等デイサービスの子どもたちに職業体験の場所を提供しています。

保護者のかたがよくおっしゃっているんです。
「学校がある間は安心できる。でも、この子が卒業したらどうなるのか、まったくわからない。私たち親がいなくなったら、この子はどうやって生きていくんだろう?」って。

そんななか、25soraで職業体験してもらうことで「こんな仕事もあるんだ」とか「これならできるぞ!」と、可能性を見つけてもらえたらうれしいです。

ソフトクリームを搾る井口さん

25soraの活動を通じて「うちでも放課後等デイサービスの職業体験を受け入れるよ」と声を掛けていただくこともあります。
子どもたちにも保護者のかたにも、未来への希望をもってもらえたら良いと思います。

──25soraを運営するうえで、大切にしていることはありますか?

井口──

25soraでは、風通しの良さを大切にしています。とくに、新メニューの開発はスタッフ全員でおこなっているんです。
スタッフが食べ歩きをしたり、SNSで見かけたりしたグルメ情報を持ち寄ってメニューを考案。試作を繰り返しながら、メニュー化していきます。

小さなお店ですから、発案から実現までのスパンが短いんです。良いと思ったアイデアはすぐに取り入れるようにしています。

スタッフからは「自分の意見を聞いてもらえるのがうれしい」とよく言ってもらえるんですよ。休憩時間に新商品の構想を練っていることもあるようです。

役職や障がいに関係なく、それぞれの意見にまっすぐ向きあうことで、話しやすい環境が生まれる。好きなようにアイデアを出しあえる、良い循環ができていると思います。

いろいろなアイデアが集まる

25soraを続けていくための努力

──25soraはInstagramに数多く投稿していますね。投稿を継続するために、何か決めていることはありますか?

井口──

開店するにあたり、Instagramのアカウントを作成しました。実は、25soraを始めるまでInstagramなんて触ったこともなかったんです。でも広告になるのなら、と見よう見まねで投稿を始めました。

Instagramではインフルエンサーさんの力を借りられるのも大きいです。開店前日にPRをお願いしたときには、フォロワー数が急増して通知が鳴り止まないほどでした。
「〇〇さんの投稿を見てきました」というかたも多く、近隣にチラシを配ることの何倍も反応がありました。

そのあとも、さまざまな人が「25soraのソフトクリームおいしい!」と投稿してくれることで、認知の拡大につながっていると思います。
続けることに意味があると思うので、スタッフのみんなと協力しながら営業日には何かしらの投稿を続けています。

入口に設置された黒板にはお客様からのメッセージが集まる(画像提供:25sora)

──最近では出張販売もされているそうですね。こちらはどこかから場所を紹介されているのですか?

井口──

いいえ。すべて飛び込み営業して置かせてもらっているんです。
ただお店で待っているだけでは、お客様も来てくれませんから。

チラシを持って、直接お店に伺って「サンドイッチを買ってもらえませんか?」ってお願いしています。すると皆さん、快く話を聞いてくださるんです。

──飛び込み!すごいですね。

井口──

人と同じことをしていても、勝てませんから。いまどき飛び込み営業は珍しいみたいで、「すごいね、よく来たね!」と言ってもらえます。
小さく1〜2個売るよりは、大きく100個の注文を取ってきたほうが良い。そう思っていろいろなところを回っています。

おかげさまで「じゃあ、300個持ってきて!」というような大口の予約をいただけることもあるんですよ。

──Instagramの投稿に飛び込み営業など、意欲的におこなっているんですね。原動力は何ですか?

井口──

私、負けず嫌いなんです。始めたからには、絶対1番になりたいと思って。そのためにできることはひたすら、何でもやろうと決めているんです。

今は25soraのためにできることをリスト化して、上から順番にひたすら実行しています。
この方法がダメなら、今度はこうしてみようかって、バージョンアップを重ねてもいます。不思議なことにアイデアはいくらでも出てくるんですよね。だから、まだまだやることはたくさんあります。立ち止まっている暇がないんですよ。

──25soraの今後の目標を教えてください。

ソフトクリームで作るフラッペも人気(画像提供:25sora)

井口──

2店舗目を出したいです。

できれば今度は、ソフトクリームの映える海沿いが良いですね。ソフトクリームもサンドイッチも、レジャーにはぴったりですし、海と相性が良いと思います。

その先で「ソフトクリームなら25soraだよね」って言ってもらえるようになりたい。福山で1番の店になりたいです。

ソフトクリームで笑顔を作る

牛とレインボーソフト(画像提供:25sora)

誰もがいきいきと働ける場所を作りたい。上を向いて笑えるようになれば良い。
25soraは、そのような井口さんの想いから始まりました。

障がいの有無にかかわらず、のびのびと働ける場所。ありのままの自分で、安心して過ごせる場所として、25soraは今日もおいしいソフトクリームを提供しています。

冷たいソフトクリームをほおばれば、思わずニコッと笑みがこぼれることでしょう。

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