Yahoo! JAPAN

Little Black Dress「PLAY GIRL」インタビュー――この曲を聴いて、勇気を持って一歩を踏み出してほしい!

encore

──昨年11月にレーベルを移籍した心境から聞かせてください。

「2024年はすごく変化のあった1年でした。いろんなご縁というか、運命的な出会いというか…。奇跡的なことが繋がってレーベルを移籍することになったんですが、何かしら自分の心の中で準備が出来ていれば、チャンスは来てくれるんだということを感じました」

──心の中での準備というのは?

「昨年6月に2枚目のアルバム『SYNCHRONICITY POP』をリリースしたことで新境地を開拓した実感がありました。それまではフォークロックだった志向を自分の中で作り方を変えてみたり、新しい自分に出会うことができたアルバムだったんです。そこで、“ロックの私”と“シティポップの私”という2つの軸が明確になりました。 軸を据えて尚“もっと好きなことを突き詰めてみたいな”、“ちょっとハジケたいな”というタイミングで移籍の話をいただいたんです。」

──2つのはっきりとした軸が見つかって、その後はどんなものを考えていたんですか?

「ちょうど迷っていたんです。『SYNCHRONICITY POP』を作るのにすごくパワーを使ったので、“次は何を作ったらいいんだろう?”という思いもあったし、“もっとシティポップを作ってみたい”という気持ちもありました。でも、振り返ってみると、私がロックの曲を書くときは自分のメッセージ性を入れ込むことが多いんです。2024年は大きな災害から始まって、皆さんが心の中にいろんな感情を溜め込んでいる年だったんじゃないかと思っていて。じゃあ、私の真骨頂と言うか、ライブでお客さんと一体になれる楽曲をリリースしようということになりました」

──移籍第1弾として昨年11月22日に「チクショー飛行/猫じゃらし」が配信リリースされました。

「「チクショー飛行」はとにかく“チクショー”と叫びたいという気持ちで作りました。既にライブで披露していて、ファンの方から“リリースしてほしい”という声が多かったこともあって、念願のリリースでした。自分の中でも「野良ニンゲン」(2019年6月配信リリース)以来と言っていいくらいブワーッて弾けた曲だったので、自分自身もすごくすっきりしました」

──「チクショー飛行」は作詞作曲だけじゃなく、編曲も遼さんご自身による曲ですが、<人生の分かれ道で立ちつくし/離陸寸前>というフレーズもありますが、ご自身の環境が変わった当時の心境も描かれていますか?

「飛びたくなるんでしょうね(笑)。ただ、「チクショー飛行」に関して言えば、“チクショー”という言葉自体はネガティブなワードですけど、“ネガティブとポジティブをうまく融合させる”ということを自分の中でモットーとしていました。だから、悲しい思いや悔しい気持ちを笑い飛ばして、羽ばたいてほしいって言うか…。“いろんな方のテーマソングになってほしい”っていう思いを込めた曲になっています」

──MVはどんなイメージでした?

「芸術的ですよね。“感情をすごくぶつける楽曲だからどうなるんだろう?“と思っていたら、人の脳みそを覗いているような作品になって…私の脳みそかもしれないし、皆さんの脳みそかもしれないですよね。監督の髙田(青二才)さんとご一緒出来て、面白い作品ができたなと思っています。」

──ミュージックビデオが白いワンピースで始まるのも意外だったんですよ。遼さんと言えば、当然、黒いドレスワンピースのイメージなので。

「そうですね。髙田さんと企画を話し合ったときに、虚像と実像、過去の自分と今の自分、白の自分と黒の自分…。いろんなものに当てはめられる対比がいいんじゃないかという話になりました。私もレーベル移籍したばかりで、新しいスタート、生まれ変わりみたいなことろもあるので、そういう要素も入れつつ、“皆さんの脳みその中にある自分を解放させて!”みたいなメッセージも込めました」

──そして、「チクショー飛行 / 猫じゃらし」から約2ヶ月で早くも新曲がリリースされます。

「私にとっては、“いよいよ!”って感じです。実は、動き出してからすごくスピーディーで、昨年11月からのこの3ヶ月間は、いつか本が一冊書けるんじゃないか?ってくらいの流れだったんです。現在のディレクターさんと出会ってから、「チクショー飛行」と「猫じゃらし」をリリースして、主題歌のタイアップが決まって…怒涛の3ヶ月でした」

──ドラマ『マイ・ワンナイト・ルール』の主題歌が決まった時はどう感じましたか?

「すごく嬉しかったです。しかも、『マイ・ワンナイト・ルール』の主題歌のお話がありますと伺って、原作と脚本を読ませていただいたんですけど…「PLAY GIRL」が、“作品に合いすぎる!”と思いました」

──原作や脚本を読んでどう感じました? ちょっと話しづらくはあるんですが…。

「そうですよね。なんて言ったらいいんでしょう(笑)。30代女性の性の悩みを解放していくようなドラマですけど、明るくコミカルに寄り添ってくれる内容になっていると思います。原作の漫画を読んでいた時から、主人公の成海綾さんは天真爛漫で、足立梨花さんのイメージにぴったりだなと感じていました。こういう時代に果敢にぶっ込んでるのが面白いですし、いろんな人に届いてほしいです。ドラマがオンエアされてから、自分のレギュラーラジオ番組にもドラマの感想が届くんですが、10代の女性から40〜50代の男性まで、本当に幅広くて。女性からは“すごく共感するところがある!”っていう感想が多いですし、男性は“平岡祐太さん演じる堂島さんみたいな言葉が言えたらいいな”って言う…本当に性別の境目なく、世代を超えていろんな層の人に届いてるドラマなので、もっと広がってほしいですね」

──1話配信から5日間でTVer100万回再生を突破したことがニュースになっていましたが、遼さん自身はドラマを見てどう感じましたか?

「性欲と貞操観念、理性と感情の葛藤を提示してくれているドラマですし、“こういう自由な生き方もありなんだな”というところには共感します。まさにこの「PLAY GIRL」も自由をテーマにした曲になっていて、歌詞の中で明確なワードとしてあるわけではないのですが、いろんな含みを持たせているんです」

──もともとはどんな想いから生まれた曲だったんですか?

「10代後半の頃、上京してすぐに広尾でアルバイトをしていたんですが、乗り換えが恵比寿だったんです。だから、よく恵比寿で友達とご飯に行ったり、散歩したりとかしていて。“東京ってこんなにみんな自由に生きてるんだ“って感じましたし、”化粧室がこんなに賑やかなんだ!?“ってことにも衝撃を受けて…」

──女子の化粧室はそんなに賑やかなんですか!?

「当時、メイクが出来る化粧室に行ったときに、女性たちが“いざ、出陣!”みたいな空気で、マスカラをぐっと上げているわけですよ。一つの場所でみんながぐっと気合いを入れて、自分なりのスイッチを入れる。そこからみんなそれぞれ違う目的で出かけていく。仕事に行く人もいれば、遊びに行く人もいたと思うんですけど、“なんかカッコいいな”と思って。そういう美しさを書きたかったんです」

──歌い出しから情景が見える歌詞ですよね。

「私は昭和歌謡を聴いて育ったので、情景から聴き手が汲み取るメッセージっていうのを受け取って欲しくて書いてみました。私の中にもちろん明確な像があるんですけど、それを言ってしまうのではなく、想像してもらえたらなと思います」

──恵比寿駅の化粧室で小さいバックからメイク道具を出している女性が目に浮かびますよ。

「あはははは。歌詞の<マイクロサイズ ブランドバッグ>というのは皮肉ですね。女性だからとか、男性だからとかに限らず、生きていると皮肉まみれじゃないですか。相手はそんなつもりがなくても、“それはすごい皮肉だな”と感じてしまうこともあると思って。その一部分をちょっと切り取ってみました。今の時代、ファッションとか、自分の持ち物とか、何でも自由じゃないですか。中身がない人のように見えたとしても、自分がマイクロサイズのバッグを持ちたいから持っている…“ただただ飾りとしてそばに置いておきたいのよ”っていう。“自分軸で生きていく楽しみや自由っていうのをもっと開放させてよう“っていう部分です」

──<着飾った分だけ 傷つかなくてすむわ>という部分は?

「聴く人によっても変わるんですけど、気分を上げたいからメイクしておしゃれしているのか?、なりたい自分になるためにメイクをするのか?、この後に会う誰かに気に入ってもらいたいからするのか?、もしくは、別の自分になるっていう意味でメイクをする人もいると思うんです。本来の自分を隠して、別の人格として道を歩いてみたいから、とか。いろんな状況があると思うので、いろんな状況で聴いてほしいです。私も例に挙げたことは、全部あり得えます。気分を上げたいし、なりたい自分にもなりたいですし…」

──最初にお会いしたときに、自分が作った曲に対しても服を着せるみたいな言い方をされていたので、遼さんにとって“着飾る”というのは1つの大切なテーマなのかなと思いました。

「そうですね。やっぱり癖なんでしょうね、隠すのが(笑)。全部をさらけ出しているようで、実は奥底の自分に何かを着させてるっていうのは、小さい頃からの癖だったと思います」

──きっと本質的な部分ですよね。そこは焦らずに、今後、ゆっくりと探っていきたいと思っていますが、現時点では、幼少期にミュージカルで身についたものなのかな?と感じています。

「それは絶対に影響あると思います。“何かになる”って言う。私が保育園の頃から好きな昭和歌謡もそうなんです。曲によってみんな、かっこよかったり、ドレッシーだったりする。この曲も強い女性になりきって歌っています」

──ちなみに歌詞には「PLAY GIRL」というフレーズは出てこないですね。

「実は3回ぐらいタイトルが変わっているんです。最初は「トロフィーガール」ってつけていました。 “昔はアクセサリーボーイやアクセサリーガールっていう言葉があった”という話を人生の先輩に伺ったことがあって、最近はそうやって型にはめる言い方をなかなかしないじゃないですか。でも、そういう概念を現代風に書いてみたいと思って“私だったら何だろう?“って考えて、「トロフィーガール」かな?って思って、書き始めました。だから、曲の構成や歌詞もちょっと違ったんです。”もっと強さを伝えたい“と思って制作を続けて、今の形になりました」

──どんな意味と言ったらいいでしょうか?

「強くて自由な女性。自由を楽しめる女性ですね。“PLAY GIRL”には、遊び人っていう意味だけじゃなくて、いろんな意味で言われたりするんです。枠にはまらずに、自分で遊ぶっていう新しい女性像。相手が男性だけじゃなくてもいいですしね。本当に自由な世の中ですから。テーマは自由です」

──タイトルの変遷自体が、最初は強がっていた女性が、傷ついて自分の弱さを知って。自分を知ることで自信を手にして強くなっていくという楽曲の主人公とも重なっているように感じますね。そして、アレンジはユニコーンやプリプリ、スピッツでお馴染みの笹路正徳さんが手がけています。

「実は前のレーベル時代のご縁だったんです。当時、あるきっかけがあって書いていたんですけど、自分の中ではしっくりきていなくて…。“いや、違う。この曲はもっと相応しいタイミングがあるんじゃないか”と感じていました。そうしたら、今回このタイミングでリリースすることが出来ました。だから、3年ぐらいあたためていたことになります」

──それが最初におっしゃっていた曲を出すべき“タイミング”のことだったんですね。サウンドは80年代の邦楽ロックを想起させますが、笹路さんとの制作はどうでしたか?

「とても素敵な方でした。レコーディングメンバーもベテランの大先輩の皆様だったんです。ギターは土方隆行さんで、泣きのギターを弾いてくださっていて。私もレコーディングのときに一緒に歌を歌わせていただきました。“せーの”で録ったので、ライブみたいな感じで何テイクか録らせていただいて。アレンジャーは笹路さんなのに、笹路さんは私の意見をくみ取って、聞き出してくださるんです。“何でデモのときにこういうパーツをつけたの?”とか、ミックスのときも、“僕はこれいいと思うけど遼ちゃんだったらどうするかな? 低音が大きいかな、もうちょっとシャリっとした方がいいかな?”とか聞いてくださって。新しいものを一緒に生み出そうとしてくださっている気がしてすごく楽しかったです」

──完成した音源を聴いてどう感じましたか?

「“カッコいいな”というのが第一印象です。なにかしら、遊びを入れたかったんです。だから途中でオリエンタルで、異世界に連れ込まれるような変なゾーンがあって、あのパートも実は弾き語りのデモ段階から入れ込んでいたんです。私が影響を受けた昔の日本の音楽って、大体構成が決まっているものも多いですよね」

──Aメロ/Bメロ/サビ、Aメロ/Bメロ/サビ、間奏にギターソロがあって、大サビっていう。

「そう! それを予測できない感じにしたいと思って制作しました。女心は秋の空じゃないですけど、“私は一筋縄ではいかないわよ”って気持ちです」

──(笑)だから、歌謡ロックかと思いきや、美しいストリングスが入っていたり、2番のサビ後の間奏でいろんなコーラスが重なっていたり、一筋縄ではいかない展開になっています。

「今の時点ではワンコーラスしかまだドラマでは流れてないので。この曲の面白さはリリースされてからわかると言う…。だから、本当にたくさんの方に、いろんな場所で聴いて欲しいなと思っています。朝昼夜、飲み屋街、1人ぼっちのお部屋の中…。きっと、どの方にも当てはまる状況があるんじゃないかな? この曲を聴いて、ぜひ勇気を持って一歩を踏み出してほしいです!」

──踏み出しちゃっていいんですね?

「踏み出しちゃってください!」

──ワンナイトで終わるかもしれないけど…。

「そういう時はマイルールを作って(笑)。どちらにしても、見た目だけで判断してくるような人の言葉には傷つかないで欲しいですし、自由に強くなって欲しいです」

──そんな自由と強さをテーマにした曲から2025年が始まります。最後に今後の目標を聞かせてください。

「アルバムを出したいですね」

──え!もう? 『SYNCHRONICITY POP』の制作が大変だったって言ってましが…。

「はい、大変でした。でも、楽しくなっちゃったので!あとはライブもやりたくて、ライブをやるのであれば、新曲が入った新しいアルバムを聴いてもらって、一緒にはっちゃけたいです。そんなに曲数が多くなかったとしても、何かしら形にしたいと思っています。1人でも多くの方に曲が伝わって、共感してくださる方がライブに来たいと思ってくれるような1年にしたいです!」

(おわり)

取材・文/永堀アツオ
写真/中村功

RELEASE INFROMATION

2025年2月5日(水)配信

Little Black Dress「PLAY GIRL」

公開収録イベント情報

出演者:Little Black Dress
開催会場:TOKYO FMホール(東京・半蔵門)
開催日程:2025年2月11日(火・祝)
開場:18:00 / 開演:18:30
チケット料金:¥3,500

<イベント詳細>
https://www.interfm.co.jp/news/single/tokyomusicshow01282025
<チケット申込サイト>
https://ticket.rakuten.co.jp/music/rtififi/TOKYO MUSIC SHOW 公開収録&ミニLIVE

おすすめの記事