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コーチングとは?メリット・デメリットや実践手順などを解説

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コーチングとは?メリット・デメリットや実践手順などを解説【求人ボックスジャーナル】はたらき方やキャリアを考える機会を創出するメディア

自ら目標設定を行い、主体的に行動する過程をサポートする「コーチング」。コーチングを受ける相手の主体性や問題解決能力を育んだり、相手との信頼関係を深めたりといった効果があり、人材育成やマネジメントによく活用される手法です。
そこでこの記事では、コーチングのメリットやデメリット、習得方法、具体的な実践手順などについて分かりやすく解説します。

コーチングとは。歴史や意味を解説

コーチングとは、 対象者自らが目標を設定し、それらを達成できるよう支援する手法 です。一方的な指示を出すのではなく、対象者の気づきを促し、主体的な行動を引き出すことが重要なポイントです。コーチングはスポーツ、芸術、教育、ビジネスなどの幅広い分野で活用されています。

コーチングの起源は16世紀にさかのぼり、当初は「馬車」を意味していました。馬車は「大切な人を望む場所へ案内する」という役割を担っていたことから、人々の目標達成を支援する概念へと発展したのです。
1950年代にハーバード大学助教授のマイルズ・メイス氏が著書『The Growth and Development of Executives』のなかで、人材開発や育成においてコーチングは非常に有用な手法であることを述べ、ビジネス界でも注目されるようになりました。1980年代には多くの研究や書籍が発表され、現代ではコーチングは独立した専門分野として確立しています。

ティーチングとの違い

コーチングとティーチングは、人材育成や教育の分野で用いられる重要なアプローチですが、その手法と目的には大きな違いがあります。

ティーチングは、経験豊富な人(上司や教師など)が、経験の浅い人(部下や生徒)に対して 知識や技能を教える一方向的なプロセス です。この手法では、 明確な上下関係が前提となっており、即座に正確な情報や技術を伝える必要がある状況で役立ちます 。
一方、コーチングは 双方向的なコミュニケーションを重視 します。上司と部下、あるいはコーチとクライアントという関係性であっても、 対等な立場でのやりとりを基本 とします。相手が自ら解決策を見出せるようにサポートすることがコーチングの目的です。

このように、ティーチングが直接的な知識や技能の伝達を重視するのに対し、コーチングは個人の潜在能力を引き出し、自発的な成長を促進することに焦点を当てています。

カウンセリングとの違い

コーチングとカウンセリングは、どちらも個人の成長や問題解決を支援する手法ですが、その目的やアプローチには重要な違いがあります。

カウンセリングの目的は、主に心理的な問題の解決や精神的な健康の回復です。相手の過去の経験や現在の感情に焦点を当てながら問題の根源を探り、トラウマや不安、抑うつなどの心理的課題に対処します。
一方、コーチングの目的は、現在の状態から望ましい未来の状態へ変化させることです。相手の現在の状況を出発点とし、ゴール地点(目標)の設定とその達成に向けたアクションプランの作成を支援します。

このように、カウンセリングが「治療」的な側面を持つのに対し、コーチングは「成長」や「パフォーマンス向上」に重点を置いたアプローチを行います。

コーチングの3つのメリット

幅広い分野で活用されているコーチングですが、具体的にどのような効果があるのでしょうか。ここでは、コーチングの主なメリットを3つ紹介します。

自発的な行動を促進

コーチングは、対象者自ら答えを見出すプロセスを支援し、自発的な行動を促します。その結果、相手は自分自身でコーチングを行う「セルフコーチング」のスキルも習得可能です。ただし、正しくセルフコーチングを行えないと独りよがりな目標や成果を設定してしまうリスクがあります。他者からフィードバックをもらうなどして客観的な判断を行うことが大切です。

問題解決能力の向上

指導者が適切な問いかけ・質問や建設的なフィードバックを行うことで、対象者は自分の強みや弱みを分析したり内省したりでき、自己の内面を深く探る機会を得ます。相手はこの機会を積み重ねるなかで自身の改善点を客観的に把握し、解決策を考える力やさまざまな状況に対して適切に対処していく力が培われます。

信頼関係の強化

コーチングの核心は、深い対話を通じた相互理解にあります。継続的な対話を重ねることで、双方の理解が深まり、強固な信頼関係が築かれていくのです。信頼関係が深まり風通しのいい関係が構築できると、課題や悩みを共有しやすくなるので、課題解決や悩みの解消のスピードも向上します。

コーチングの2つのデメリット

一方でコーチングにはデメリットもあります。ここでは、代表的な2つのデメリットについて解説します。

時間と労力がかかる

コーチングは相手の自己認識と成長を促すプロセスに重点を置くため、成果が現れるまでに時間がかかります。そのため、迅速に対応すべき課題がある場合や時間が限られている場合などには向いていません。また、コーチングの本質は1対1の深い対話にあるため、多数の人材を同時に育成することにも適していません。対象者が増えるほど指導者側の負担が増加し、質の高いコーチングを維持することが困難だからです。即時的な成果や大規模な人材開発を目指す際は、コーチング以外の手法も併用するなど状況に応じた柔軟なアプローチが必要でしょう。

指導者のスキルに左右される

コーチングの効果は、指導者の経験や能力に大きく依存します。コーチングの経験や知識が豊富な指導者は、的確な質問とフィードバックを通じて相手の成長を促進できますが、経験の浅い指導者では十分な成果を引き出せない可能性があります。また、コーチングにはコミュニケーション能力や洞察力も求められるため、指導者のこれらのスキルの差によって対象者の成長に差が生まれてしまう可能性もあります。

コーチングのビジネスでの活用法

コーチングは個人の成長や課題解決、関係性の強化などに有効なため、ビジネスシーンでも役立つ手法といえます。特に、ある程度の知識やスキルを持った相手に指導する場合や、メンバーと一緒に課題を解決したい場合などにおいて有効です。具体的には、管理職のマネジメントスキル育成や入社2年目社員の指導、成果を出せるチームづくりなどの場面で効果を発揮します。
コーチングの対象者の知識やスキルが不十分だと、課題解決のための適切な目標設定ができず、新たなアイデアが創出されにくいため、コーチングを行う前にティーチングで学習したり、経験を積んだりすることを優先させるとよいでしょう。

コーチングを成功させるために必要な3つのスキル

前述のとおりビジネスシーンでも役立つコーチングですが、その効果を発揮させるためには一定のスキルが必要です。ここでは、コーチングを成功させるために欠かせない3つのスキルについて解説します。

「傾聴」の姿勢で相手を深く理解する

積極的な傾聴は、コーチングの基本スキルです。傾聴とは、単に相手の言葉を聞くだけでなく、 その背後にある感情や意図、さらには非言語的なメッセージまでも捉える姿勢 を指します。相手の話に耳を傾けながら、適切なうなずきやアイコンタクト、体の向きなどのボディランゲージを通じて、深い共感と理解を示すことが重要です。この姿勢により、相手は安心して自己開示でき、双方の理解を深める機会を得られます。
また、傾聴を通じて得られた内容は、そのあとのコーチングを効果的に行うための貴重な情報源となるので、コーチングの質を高めるためにも欠かせないスキルです。

適切な「質問」で相手の気づきを促す

適切な質問をするスキルは、相手の自己洞察と成長を促すために欠かせません。特に、 制約を設けず自由に回答できるオープンエンドの質問は相手に深い思考を促し、新たな視点や可能性を得るきっかけ となります。例えば、「その状況でどう感じましたか?」などの質問は相手の内省を促し、「もし条件や制限がなかったらどうしたいですか?」のような仮説的質問は既存の枠組みを超えた思考を引き出します。さらに、「そこから何を学びましたか?」といった質問は経験の意義を見出す手助けとなるでしょう。

相手のいいところを「承認」する

コーチングにおいて、相手のいいところを「承認する」のは極めて重要です。 相手が努力したことや成功したこと、成長したことなどに対してポジティブなフィードバックを与える と、自信と自己効力感を高められます。
効果的な承認を行うためには、以下の3つのポイントを意識しましょう。

「すぐに」褒める

行動や成果のすぐあとに承認することで、より強い印象を与え、ポジティブな行動の強化につながります。

何がよかったかを「具体的に」褒める

漠然とした褒め言葉よりも、具体的な行動や成果を提示することで、相手は自身の強みをより明確に理解できます。

褒める内容に「一貫性を持たせる」

継続的に同じ点を評価することで相手はより強固な自信を持てるようになります。

コーチングを習得するには

前述したスキルを持ち合わせていても、正しい方法を習得していなければコーチングの効果は発揮されません。ここでは、コーチングの習得方法として代表的なものを4つ紹介します。

書籍やeラーニングで学ぶ

コーチングについて書かれたビジネス書を読んだり、eラーニング(オンライン学習)を受講したりして学ぶ方法です。これは「まずは知識を身に付けたい」といったコーチング初心者に向いています。書籍やセミナーは比較的安価なものが多く、費用を抑えて手軽に学べる点がメリットです。また、eラーニングではテストを受けられるサービスが付いている場合もあり、知識の定着率を高められます。

スクールやセミナーで学ぶ

スクールで学んだり、企業などが開催するセミナーや研修に参加したりする方法もあり、コーチングのプロから直接ノウハウを学ぶことが可能です。企業によっては社内で研修を行っている場合もありますが、個人的に社外セミナーやスクールで学ぶ場合、カリキュラムや期間、レベルに応じて料金は異なるものの、それなりの費用がかかります。また、セミナーやスクールによって「座学メイン」「ロールプレイングで実践に近い形で学べる体験型」などさまざまな学習スタイルがあるので、自分に合った料金、内容で選ぶことが大切です。

実際にコーチングを受ける

指導される側として実際にコーチングを受けるといった方法もおすすめです。コーチングを受けることで、技術の実践的な適用方法やその効果を直接体感できます。特に、コーチングの専門家や経験豊富で技術の高い人などから指導を受けるとより効果的です。専門家などの傾聴の姿勢や質問スキル、フィードバックの仕方などを経験することで、理論だけでは得られない深い洞察と実践的なスキルを習得できるでしょう。

資格を取得する

前述の方法で知識やスキルを身に付けたら、その習得度を客観的に評価するために資格取得を目指すのもいいでしょう。
代表的な資格としては、国際的に認知度の高い「国際コーチング連盟(ICF)のアソシエイト・サーティファイド・コーチ(ACC)資格」があります。この資格は、60時間以上のトレーニングと100時間以上のコーチング実践が要求され、国際標準のコーチングスキルを証明します。国内では、「一般社団法人日本コーチ連盟(JCF)のコーチング資格」が知られており、基礎から上級まで段階的に取得できるシステムが特徴です。これらの資格を取得する過程で自身の知識やスキルを強化し、実践レベルのコーチングスキルを習得できます。

コーチングの効果的な進め方

コーチングには大きく分けて5つのステップがあり、この流れに沿って進めることで効果的に機能します。ここでは、その5つのステップについて解説します。それぞれ質問例も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

①現状の課題把握

まずは、相手の現在の状況や課題を明確にします。現状を知るための大まかな問いかけを行い、相手の出発地点を明らかにしましょう。その返答に対して、リソースを確認したり、異なる角度からの質問を投げかけたりし、対象者に気付きを与えながら現状を深く掘り下げていきます。

質問例

「最近の仕事の調子はどうですか?」 「どのような課題がありますか?」 「最近、チームメンバーからフィードバックを受けたことはありますか?」 「その課題に対して、どのようなリソースが不足していると感じますか?」

②明確な目標設定

次に、相手が達成したい具体的で測定可能な目標を設定します。抽象的な質問から段階的に具体的な質問へ移行するように問いかけると、すべき行動が明確となっていきます。最終的な目標自体は抽象的にならないよう、対象者にとって適切な数値を盛り込んで設定されているか指導者がフォローをするのもポイントです。対象者自ら目標について考えることで、ただ会社の目標を達成するためではなく自主性が高められ、モチベーションを保ちながら行動を起こせます。

質問例

「どのような結果を得たいですか?」 「目標達成後に得られる成果やメリットは何ですか?」 「最終的な目標達成のために、どのような短期的な目標を設定しますか?」

③情報の精査

続いて、上記①で把握した現状と上記②で決めた目標のギャップを洗い出します。現在起きている問題だけでなく、これから起きそうな問題も予測して考えることが大切です。次に、そのような課題を解決できるような目標達成のためのリソースを探ります。相手が持っているリソースだけでは不十分な場合は、必要なリソースをどう確保するかをともに考えましょう。そして行動の方向性として自由に多くの複数案を提示し、そのなかから実行可能なもの、問題解決に有効なものを精査して、実際に何を行うか本人に選択させます。

質問例

「過去の失敗の原因は何だと思いますか?」 「あなたが持っている経験やスキルは何ですか?」 「時間はどれくらい確保できますか?」 「目標を達成するために必要なことは何ですか?」

④段階的な計画立案

行動の方向性が決まったら、より具体的なアクションプランを作成します。一気に大きな行動を起こすのではなく、それぞれのアクションには明確な期限を設けて、段階的に取り組んでいくことが目標達成のコツです。ひととおり完成したら指導者側が前向きな評価を行いながら、ブラッシュアップを促しましょう。

質問例

「実現可能な内容ですか?」 「欠けているアクションや段階はないですか?」 「この行動はいつまでに達成させますか?」 「行動をどのように評価しますか?」

⑤経過のフォロー

行動計画ができたらあとはそれに沿って行動していくのみですが、コーチングはここで終了ではありません。計画どおりに行動できているかどうかや、目標達成の進捗具合について定期的に確認するといったフォローアップが必要です。自己評価や不足要素がないかなどの問いかけを行い、相手が適切に軌道修正できるようサポートしましょう。

質問例

「これまでの進捗を振り返って自己評価はどうですか?」 「目標達成のために調整や追加すべき行動はありますか?」

まとめ

今回は、相手の能動的な行動を促し目標達成を支援する手法である「コーチング」について解説しました。相手の成長や能力アップの促進、相手との信頼関係強化などの効果があるため、ビジネスにおける人材育成やマネジメントにぜひ活用したい手法の一つです。
この記事を参考にコーチングについての理解を深め、コーチングスキルの習得や実践に取り組んでみてください。

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