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物語を紡ぐ人・橘春香

SODANE

物語を紡ぐ人・橘春香

北海道在住の絵本・童話作家の橘春香さん。

繊細な描写と柔らかい色づかいで表現される絵の世界観に、まず魅了されてしまいます。

絵本作家として活躍する橘さんですが、長編の物語も制作する異色の作家です。

また、作品の生み出す工程が独特で「絵」を描いてから「ストーリー」を作るというから驚きます。

横浜から札幌に移住し、北海道の風景も作品に大きな影響を与えているのだそう。HTBアナウンサーの森さやかが橘春香さんの作品の世界とその原点を取材しました。

「絵」からはじまる「物語」

ー 橘さんは全ての作品において、まず「絵」から手がけるのですか?

橘春香さん(以下、橘):そうなんです。すべて絵が先行で、後からストーリーを考えます。たぶんあまりそういう作家さんはいないかも…。珍しいタイプ(笑)

ー 絵本作家である橘さんが、長編の物語を手がけるようになったきっかけは?

橘:出版社の人に「橘さんの絵は、前後にストーリーがあるように見える。なんでもいいから、絵を描いてみてほしい」と言われたんです。それで東京の代官山のカフェで描いたのが、このスケッチです。

ー あっ、この絵『銀杏堂』に登場する場面の挿絵にもなっていますよね?これが『銀杏堂』の作品の源になった絵だったんですか?

橘:そうなんです。絵の前後にあるストーリーを想像して、世界が膨らんでいきます。

ー モチーフがカラフルなカタツムリだったり、ユニコーンだったり空想の動物も登場することがありますが、それは絵を描くときに思いつくのですか?

橘:そうですね。現実世界にあるものから「こういうことが起きたら面白いな」と描くこともあれば、架空の動物や空想の世界の出来事を絵にしてみたら、登場人物が勝手に動きだすことも。

石が好きで「中に入ってみたい」と思った

橘:好きなものを描くことが多いです。私は石が好きで「中にはいってみたい」と思ったところから生まれた作品が、絵本『じっとみるの』です。

ー 石の中に入ってみたい??

橘:石の層ってすごくきれいで素敵なの。大好きな石の図鑑があって、それを見ていたら描きたくなった絵がこれです。

ー 文章を書く時に意識していることはありますか?

橘:絵のイメージを言葉できているかを、意識します。そして文章を必ず音読しています。音の響きが大切で、暗唱できるくらいフレーズが心地よいものが好き。

「現実なのか?架空なのか?」分からなくなるような物語が好き

ー 物語を作る面白さや難しさは何ですか?

橘:私は現実なのか、架空なのかを行ったりきたりするような物語が好きで、読み終わった後に「本当の事だったっけ?」と思ってもらいたいから、テーマとなる物事について、事実や歴史をものすごく入念に調べます。だから、参考文献がすごいことになる…。(苦笑)

ー 空想の世界と現実を混ぜ合わせることで、ファンタジーの中にリアリティが生まれているんですね!

橘:事実を調べて、絵を描いて、物語を書くので、作品が完成するまでには3年以上かかります。当時東京に住んでいた時に「南極かたつむり」の雪のシーンを描くために、北海道に来て、すすきののホテルに泊まって制作したこともあります。北国の冬は「痛い」という感覚を初めてその時知りました。

ー 驚きました!そこまで事実やリアルにこだわって書いているんですね。

橘:「子どもにウソはつきたくない」って思っちゃうんですよね。

作家を目指したきっかけの本。今でも宝物

ー 作家を目指すようになったのはいつ頃からですか?

橘:絵を描くことは小さいころから好きだったんですが、実は3歳の時に出会った本に、大きな影響を受けました。その本がこれです。

ー 3歳のころ!!これはどういう本なのですか?

橘:月刊誌のようなものだったんですが、一般の小学生や子ども達が書いた詩にプロのイラストレーターが絵を描いて掲載している本で、とても素敵な作品ばかり。暗唱して読んでいました。絵と言葉に魅力を感じるようになって、小学1年生の夏休みに自由研究で絵本を作って学校に持っていった…それが作家を夢みた原点となりました。

北海道に移住して驚いた!「北海道の自然」創作意欲に

ー 北海道でものづくりする良さはありますか?

橘:あります!13年前、東京から札幌に来て、関東とは違う春に驚きました!北海道って、いっぺんに花がさいて、バン!と春がやってくる感じに圧倒されて…。そんな自然の姿をみたら、描きたくなって。作品も生まれました。

ー 児童書『ボンぼうや』のこの絵って…

橘:滝野すずらん公園に行って見た光景をスケッチして、物語になりました。

ー やっぱり!広い芝生の上で赤い大きな玉を転がして遊べるエリアがありますよね。

橘:はい(笑)あと、白くて子ども達が上にのってジャンプしている山みたいな遊具もあって、それも絵にして物語になっています。

ー 北海道民には馴染みの風景や光景が、物語になっていると思うと、ますます作品に親近感と愛着が湧きますね!

読書やアートに触れて「空想の世界」を広げてほしい

ー 作家として、子ども達に伝えたいことはありますか?

橘:本を読んだり物語に触れることは、自分の中の世界を広げることになります。空想の世界を持つことは、学校や自分の身近な場所で嫌な事があった時に、別の視点で物事を見られるようになったり、自分の好きな世界に逃げられる。自分の世界を大きくして豊かに生きるために、本を読んだり、アートに触れて欲しいとおもいます。

橘春香さんら5人の絵本作家がプロデュースするアート展が今日から創成スクエア札幌市民交流プラザスカーツコートで始まりました。

あわいいきものたち

アートに触れて、自分の中に眠る空想の世界を広げてみませんか?
 

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