早大 三浦さん災害リスク 地域ごとに調査 「実際に即した自主防災を」
起伏に富む丘陵地が大部分を占めている三浦半島。昨年の能登半島地震を教訓に防災の重要性が高まる中、横須賀市内各地域での防災について「共助」の視点から調査を行った論文を早稲田大学大学院の三浦エリカさん(24)=横浜市在住=が発表した。21日には長浦コミュニティセンターで、地域向けの研究発表と住民同士の意見交換会が行われた。
災害認識と対策にズレ
三浦さんは、急傾斜地が多く複数の災害リスクがあり、活断層も通る横須賀市を研究の対象に選定。各地域の防災対策や、抱えている課題などを調査した。
64町内会に取材
同論文では津波・洪水・土砂災害などの各種災害リスクについて、市が公表しているハザードマップに加え「人口」「土地利用」「宅地造成による地形改変」「避難場所の立地」などの要素を加え総合的な評価を実施。その上で市内64町内会や行政、地域包括支援センターなどにヒアリング調査を行うことで住民の避難課題について明らかにした。
ヒアリングでは、津波の浸水想定がされている町内会の半数で、津波について「被害は少ないだろう」「来ないだろう」といった意識があることが判明。防災訓練でも消火器の取り扱い方の説明のみなど、訓練の内容がハザードマップなどで想定されている災害に則していない町内会もあったという。相模湾側の一部町内会では毎年津波避難訓練が実施されていることを踏まえ、「東京湾側でも、一時避難地を津波の到達予想より高く設定するなど具体的なイメージを持った対策をすべき」と課題を指摘した。
各地区共通の課題としては、高齢者、障害者、乳幼児といった要配慮者の避難支援者が確保できないことや、若い世代の町内会加入率が低いことが浮き彫りとなった。
「共助」の大切さ説く
三浦さんの専攻は地理学。地震災害について学びを進める中で、災害時には住民同士の「共助」が多くの命を救っているというデータから自主防災の重要性を認識したという。「各地域の状況を理解し、あらゆるリスクを考慮した準備が必要。『これくらいで大丈夫だろう』と高を括らずに備えてほしい」と話した。
研究に際して協力を得た町内会の要望で実施された同発表会。参加した西逸見第1町内会の大澤岩男さん(79)は「『東京湾に津波は来ない』といった思い込みが危険だということが分かった」と学びを得た様子だった。
論文は3月に学会発表される予定だが、一般公開時期は未定。三浦さんは「発表会や意見交換会といった形で各地域の防災強化に寄与できたら」と啓発へ意欲を見せた。