おしゃれ番長、テリー伊藤とジュンコのファッション談義
ファッションデザイナー:コシノジュンコが、それぞれのジャンルのトップランナーをゲストに迎え、人と人の繋がりや、出会いと共感を発見する番組。
テリー伊藤さん
1949年、東京都築地生まれ。日本大学経済学部卒業後、TVマンとしてキャリアをスタートし、ディレクター/プロデューサーとして『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』『ねるとん紅鯨団』『浅草橋ヤング洋品店』など数々の人気番組を世に送り出しました。またタレントとしてテレビやラジオにも出演するなど、幅広く活動しています。
JK:今日まっかっか! 赤でキメましたね! 今日から冬支度? 赤にグレーのストライプが入っていて、サスペンダーも赤!
伊藤:そうですね、ウールのオーバーオールです。セーターは50年代の古着。帽子はフランスの画家が被っているような。
JK:おしゃれを本気で楽しんでますね! 服はどのぐらい持ってるの?
伊藤:5部屋ぐらい?鎌倉と世田谷あわせて5部屋ぐらい。
JK:500着かと思ったら、5部屋! じゃあ、あれとあれをコーディネートしようと思ったら、世田谷においてきちゃった!・・・とかも?
伊藤:適当ですね。たくさんありすぎて手前の10着ぐらいしか着てない(笑) 奥の方は怖くて行けない! 探検するみたいで(^^;)コシノさんも見たらビックリしますよ、多分迷子になると思う! えっ、こんなのあった?っていう5~10年着てない洋服もあるし。
JK:でも古着って今は誰も着てないものでしょ。新しいものはみんな着てるけど、古着は今の人は持ってないから、組み合わせてコーディネートすると独特の「今らしく」なるのよ。
伊藤:僕は色が好きなんですよ。街は黒が多いんで、楽し気な、おもちゃ箱をひっくり返したような服を着たいなって。
JK:夏より冬の方がいっぱい着れるわよね。
伊藤:そうそう。10月ぐらいぐらいから革ジャン着倒してます。
JK:季節よりちょっと早いのがおしゃれなのよ! いち早くっていうのがね。コーディネートはベテランね。
伊藤:でもあんまり合わせないようにしてます。方程式を覚えないようにしてる。
出水:テリーさんは小さいころからおしゃれがお好きだったんですか?
伊藤:小学生のころは物がなくて、日本全体が貧しかった時代じゃないですか。そうすると野球帽しかなくて、みんなジャイアンツの帽子。僕はそれが嫌で、築地小学校のワッペンをつけよう!と。近くのスポーツ店に行って「作っていただけますか」ってお願いして。
JK:作ってもらったの?! すごいね!
伊藤:築地小学校のTSマークをつけて、5~6人集めて作りました。中学になると、アメリカのアイビーファッションに感化されるわけですよ。ピンクのスニーカーが欲しくて、でもその時の日本には売ってない。どうしようと思って、セーターを染める染料にスニーカーを突っ込んで、ピンク色にして履いてました。
JK:学校で評判だったでしょう! 「あの目立つ子誰?」って。
伊藤:他にいなかったですよ。へんてこりんな格好でしたけど、親父もけっこうおしゃれが好きだったので、面白がってくれました。でもアイビーも最初はおしゃれな人しか着てなかったのが、日本中が着始めたら・・・
JK:VANブームが来て一色でしたよね! あれはちょっとねぇ。
伊藤:それで僕はロンドン系に行きました。ロンドンブーツ! 高校3年生ぐらいだったんですけど、原宿にホソノって靴屋さんがあったでしょう? あそこでシルバーのロンドンブーツをオーダーしました。
出水:シルバー?!?!
JK:そうやって日本独特のファッションができていくのね。1人、2人からだんだん集まってくるわけ。あの時代ってあんまりルールにとらわれない。
伊藤:ロンドンの名門学校のイートン校って知ってます?あそこって学生はみんなテールコート着てるんですよ。燕尾服。
JK:ちっちゃい子も燕尾服着てバス待ってるのを見たことある! かわいかった(*^^*)
伊藤:あれがカッコよくて、僕も燕尾服を買ってきて、それを洗濯機に入れまして(^^)ヨレヨレになったのを着てました。それがパンクっぽく見えたんですよ。
出水:あえてヨレヨレにしたんですね~!
JK:あの当時も古着がブームだったのよ。私も同じ時期ですね、ロンドンに行き始めたのは。必ず古着屋さんの通りを歩いて、気に入ったのがあったらすぐその場で着替えちゃう! 私はジョッパー買ったの、乗馬パンツ。
出水:テリーさんのファッションセオリーみたいなものはあるんですか?
伊藤:持たないようにしています。セオリーがあると縛られるので、知識は入れないようにしています。「●●であってはならない」っていう方程式が嫌。僕は演出家だから、真似したくないじゃないですか。ピカソにしてもベートーベンにしても、クリエイターは真似しないと思う。自分の世界を見たいわけだから。あと、嫉妬心もあると思う。
JK:嫉妬心?
伊藤:TV見てても、視聴率のいい番組はすぐ消しますね! 「あ~だめだ、違うことを考えよう」って。
出水:意外な一面ですね(笑)
伊藤:昔TBSで「イカすバンド天国」っていう番組があったんですよ。深夜に若い人たちがバンドやる番組で、視聴率も良くて、僕もすぐ消した。「この番組の欠点て何かな」と考えたときに、ギターが弾けることだと思ったの。ギター弾けないと、この番組に出られない。ギター弾くってことはギターもアンプも持たなきゃいけないから、お金が必要ですよ。じゃあお金のない人はどうするかっていったら、ダンスですよ!だから僕は「ダンス甲子園」を考えた。
JK:なるほど、何にも持たないで、体ひとつでね!
伊藤:ギターに勝てるのはダンスだよ!って。今じゃ学校でも授業になってますよね。だから嫉妬心みたいなものが僕のパワーになってると思います。
出水:11月23日にはテリーさんと白浜アランさんがMCを務めるイベント「TOKYO FASHION CROSSING 2024」が開催されますね。
伊藤:今年は私が演出を担当させてもらうんですが、コンセプトは「あなたもランウェイ」。去年はプロの人しか出られなかったんですけど、街を歩いてるとセンスのいい人いっぱいいるでしょう? 着こなし上手いなあって。この人たちもきっとランウェイ歩きたいだろうなと思って、都民の皆さんを募集しました。ビデオで募集したんですけど、ものすごくセンスいい!
JK:あらそう! 楽しみですね! 何が選考のポイントですか、ファッションコーディネート? それともフィーリング?
伊藤:両方です。この人はへんてこりんだけど面白い、センスはどうかなと思うけど面白い、とか。2つに分けようかなと思ってるんですよね。1つは「1万円コーディネート」。
出水:いいですね~! 真似できそう!
JK:高いからいい、安いからダメってことないものね。
伊藤:この前もコシノさんと話してたけど、いつも美味しいフランス料理ばかりじゃなくて、たまにはおでんとかもいいじゃないですか。両方あるから面白い。それに日本人は本当に感性がいい! こんなにとびきり感性がいい国民っていないんじゃないかな。日本の女子高生もミニスカート履いたり、ルーズソックス履いたり・・・自分の商品価値をあれだけ高めてるって、世界でも他にない。
JK:フランスは一見おしゃれに見えるけど、本当におしゃれな人じゃなくて、形にハマってる。日本人ってわりとしっちゃかめっちゃかでかわいいし、自由さがあると思う。
伊藤:それと、それこそ日本にはファッションのレジェンドもたくさんいらっしゃるので、そういう皆さんも紹介したいなと思っています。
JK:例えば賢三さんとか、寛斎さんとか、一生さんとか、森英恵先生とか、素晴らしいデザイナーがいい作品いっぱい残して天国に行っちゃったんですよ。そういう方々を忘れずに取り上げてくれるっていうのが、テリーさんすごいなって思った。
伊藤:日本の大レジェンドですよ! そういう人たちへのオマージュをこめて、皆さんの作品を紹介しようと。
JK:今まで一気に見れる機会はなかったんですよ! これからますます見れないですよ。本当にありがとうございます! 客観的な立場で見れるテリーさんだからできるんですよね。
伊藤:一番最後にコシノさんの作品も登場していただこうかなと(^^) 普通のショウは30分ぐらいだけど、このイベントは全部で3時間にわたります。ぜひみなさん来ていただきたいです! シークレットもあるかもしれませんよ?!
(TBSラジオ『コシノジュンコ MASACA』より抜粋)