Yahoo! JAPAN

「もう聞こえてないの…?」無反応な父の変化に戸惑う母。娘が試した、ある方法とは【体験談】

シニアカレンダー

遠方の実家では、80代の実父母ふたりきりの老老介護。父は肺の持病に加え、喉の調子も悪くなり、言葉数が減るばかり。母は「父とコミュニケーションを取るのがますます難しくなった」と悩んでいました。少しでも父のコミュニケーション能力をアップし、両親ともども快適に過ごしてほしいと願った娘の体験談です。

言葉が減り反応が鈍くなった父

週に1度程度は実家に電話をして母と話すのがここ数年の私の習慣。離れて暮らす娘の私にできる最低限だと考えていました。電話の向こうで母はたいてい、か細いながらも明るい声で老夫婦の日常の様子を伝えてくれていました。

しかしある初夏の夜、電話の向こうの母に元気がありません。母は父の様子が変わってきたと言います。「もともと言葉数の少ないお父さんだけど、このころはいっそうしゃべらなくなってしまって。もう私の言葉も聞こえているのかいないのか、話しかけても、うんともすんとも言わないことが増えてね」

食事は一緒に黙々と食べるけれど、あとは寝室のベッドで眠っている時間が増えたとか。起きてテレビを見るにしても、特に何を見たいふうでもなく、ただリモコンを握ったまま、くるくるとチャンネルを変えることが癖になっているとのこと。母は見たいと思った番組も落ち着いて見られず、父に注意しても反応は得られず、不安と不満を募らせているようでした。

季節は初夏。毎年母の精神状態、体力ともに不安定になる季節です。このままではいけないなと思いました。

都合をつけて帰省することに

私に何ができるんだろう? 何かできるはずと自問自答しつつ、あれこれ都合をつけ、盆明けにやっと実家に数日間帰省することに。600kmをひとりで運転して駆けつけました。

実家で見た父は母が言った通りの状況で、いろんな問い掛けに対して反応が薄くなっていました。久しぶりに会う娘の私を見ても、視線はさまようばかりでおよそ無反応。「父さん、元気だった?」「今夜、天ぷらで良いかな?」と尋ねても、「ん-……」。言葉は出てきません。テレビのリモコンを握って視線をそらすばかりでした。

父から何か反応を引き出したいと思い、父が昨今趣味にしていたナンプレ(数字を使ったパズル)の雑誌を広げてみました。「父さん、一緒にやってみない?」。専門の雑誌を購読し、ネット上にある問題に取り組むなど、熱心に楽しんでいた趣味です。しかし、このところ雑誌を差し出しても興味を示さないと母が言っていた通り、興味はなさそうでした。

次の日、数年来父母が熱心に世話を続けてきた家庭菜園に行こうと声を掛けましたが、返事はなく、ベッドから起き上がってきません。朝昼晩の食事時間、ダイニングに出て来るタイミングで、新聞に載っている間違い探しやクイズをやろうと誘ってみましたが、やる気は出ない様子。食べ終わるとすぐにベッドに向かってしまいます。

昔一緒にやっていた趣味を試してみた

実家滞在最終日。食事の用意をしながら母と話していて、父が昔パソコンのマージャンにはまっていたことを思い出しました。膝にすがってのぞき込む10歳の私に、父はパソコンの操作方法から麻雀のルールまで丁寧に教えてくれたのでした。

思い出した私は料理の手を止めて、部屋の隅に片付けられていた父のノートパソコンを開きました。数年前まで父が地区の役員の仕事に使っていたものです。ネットのマージャンゲームサイトを開き、「父さん、これ、どの牌(はい)を切れば良い?」と画面を見せると、父はぐっと身を乗り出してきました。のぞき込んでしばし見つめた末、「ん!」と一点を指差しました。この牌を切れという意思表示。私は父にどの牌を切るか聞きながら、マウスを動かしゲームを進めていきました。

「この手牌で役満(最高得点の役)を目指すの?」「やっぱり、この牌はいらないよねえ」。私の問いかけに、父は指差しで意思表示。その思考力・判断力はしっかりしたものでした。途中から父は自分でマウスを動かしゲームを進め、私は横に座り時々声を掛け続けました。親子二人で遊ぶ久しぶりの時間でした。父と私の共通の趣味だったパソコンマージャンが、父の何かを呼び覚ましたと思える出来事でした。

私が実家を離れる時間が来ると父は家の前で見送ってくれ、「あー、大丈夫やから」と、本当に途切れ途切れのしゃがれ声でしたが、言葉を掛けてくれました。

まとめ

母によると、私が実家を去ってしばらくの間父はノートパソコンに向かったものの、いつの間にかそっと部屋の隅に片付けていたとのことでした。その後父の無反応さは引き続きだったようですが、私とパソコンマージャンをする父の様子を見て、本当は頭の中でいろいろ考えているということがわかり、母は安心したそうです。父とのコミュニケーションにひと役買ってくれた昔の思い出に感謝です。

著者:森原あさみ/50代女性・会社員

※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。

※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています

【関連記事】

おすすめの記事

新着記事

  1. 手越祐也、初の「オールナイトニッポン0」登場!深夜にスーパーポジティブな2時間を生放送

    おたくま経済新聞
  2. 地産地消と自家製天然酵母のパンで人気の、店名の通り温かみを感ずる【パン工房陽だまり】(福島県・岩瀬郡)

    パンめぐ
  3. 「晩酌」じゃなくて「晩ごはん」。独身呑兵衛の明るい食卓、富士見台『宮ちゃん』へ

    さんたつ by 散歩の達人
  4. リサとガスパール タウンでフラワーイベント「FLOWER FESTA」花フォトスポットやメニューが登場

    あとなびマガジン
  5. ゴディバから大阪・兵庫・滋賀などの「ご当地ショコリキサー」誕生

    PrettyOnline
  6. ディズニー新ぬいぐるみシリーズが誕生 ミッキーを描くアーティストが生ドローイング

    あとなびマガジン
  7. かつやで食事の直前に「人生で初めてのことが起こった」 衝撃的ハプニングに8.3万人困惑「そうはならんやろ」

    Jタウンネット
  8. 『“Pretty Guardian Sailor Moon” The Super Live』ロンドン公演・北米ツアーを終え、日本凱旋公演が決定

    SPICE
  9. 北陸最大のアイドルフェス『かがやきフェス 2025』 NGT48、SUPER☆GiRLS、虹のコンキスタドールら第1弾出演アーティストを発表

    SPICE
  10. 【必見】「ジョリーパスタ夏の福袋」が神内容!「便利な4千円食事券+BEAMSおしゃれグッズ」の絶対ほしい中身

    ウレぴあ総研