八王子市 カスハラ防止に一手 指針とマニュアル策定
八王子市は行政サービス利用者からの迷惑行為「カスタマーハラスメント(カスハラ)」を防止するための取り組みを、4月1日から開始した。都が同日に施行した「カスタマーハラスメント防止条例」に合わせ、カスハラに対する市の指針と対応マニュアルを策定。職員が安心して職務を遂行できる環境を整備することで、市民サービスの向上につなげる狙いだ。
近年、全国の自治体でカスハラが問題視され、職員が心身の不調を訴えたり、離職につながるケースも報告されている。都の条例施行を機に市も対策に乗り出すことで、職員が安心して働ける環境づくりを目指す。
市はカスハラの定義や市の責務、職員の役割などを定めた「八王子市カスタマーハラスメント防止基本方針」とカスハラの行為類型などを記載した「対応マニュアル」を策定。基本方針では、行政サービス利用者による意見や要望はサービスの向上や業務改善につながるものとして真摯に対応することを基本としながら、暴行や脅迫、過度な要求に対しては組織として毅然と対応し、その防止に積極的に取り組むことを明記。対応マニュアルではカスハラの類型やどのような刑事罰に該当するかなどを記載する一方で「事案の状況等によって判断が異なる場合もありうる」と市民の権利を不当に侵害しないよう配慮を求めている。
また今後の取り組みとして、録音機能付き電話機導入の促進、許可のない撮影や録音の禁止、カスハラ防止や適切な対応に関する職員向け研修の実施、職員がカスハラを行わないための服務規程の見直しなどを挙げる。
4割が経験
市が昨年末に実施した職員への任意アンケートによると、過去3年間でカスハラを受けたことがある職員は約36%。福祉や税を取り扱う部署に目立ち、窓口に長時間居座ったり、対面や電話越しに大声で職員を執拗に責めたてるなどのケースがあった。迷惑行為が数十回、または半年以上続く深刻な事例もあり、市職員課の石川智也課長は「職場環境に著しく影響を与えるもので、組織として統一的な対応をする必要があった。市の考えを示すことで、市民にも浸透していくことを期待している」と今回の取り組みの背景を説明する。
またこれに先立ち市では24年7月から職員の名札の表記を「顔写真付きの漢字(苗字のみ)」から「ひらがな表記の苗字のみ」に変更。録音機能付き電話機の導入も昨年度から順次進めている。
市民の理解求める
今後の取り組みについて石川課長は「市民の皆様、また業務に関係する方たちにご理解を頂きながら、カスタマーハラスメントの防止につながる取組をしていきたい」と話し、カスハラの状況を把握しながら、対応マニュアルの改正など必要な対策を随時行っていくとしている。