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【宮島未奈さん(富士市出身)原作「成瀬は天下を取りにいく」のコミック第1巻】 「ありがとう西武大津店」のラスト2ページに見る、コミック版の「落とし前」

アットエス

静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は12月9日に初版発行(奥付)された宮島未奈さん(富士市出身)原作の「成瀬は天下を取りにいく」のコミック第1巻(新潮社)を題材に。小説版の「ありがとう西武大津店」と「膳所から来ました」のコミカライズで、構成はさかなこうじさん、作画は小畠泪さん。新潮社のウェブ漫画誌「コミックバンチKai」の5~8月掲載分を収録している。

2024年本屋大賞に輝き、(コミックの帯によると)累計95万部を突破した宮島さんの青春小説「成瀬シリーズ」の漫画単行本第1弾。レモンイエローを背景に西武ライオンズのユニホームを着たおかっぱ頭の女子を配した表紙からは、小説へのリスペクトがうかがえる。

小説2話分をコミックでは6話に分けているため、小説1話につきコミックでは3回の「ラスト」を作らなくてはならない。構成、作画の腕の見せどころだが、各回とも次回への興味を持続させる工夫があって感心した。

「ありがとう西武大津店」のラスト2ページは、小説版の最後の場面に若干の変更を加えていて、成瀬の友人の島崎のせりふも注意深く変更されている。これはここまで積み重ねてきた、コミック版独自の成瀬、島崎の関係構築の帰結として、実に理にかなっている。

小学校の卒業式で島崎が成瀬にあえて「苦言」を呈する、成瀬が西武大津店に初めて立った日のテレビ放送を見て島崎が泣くなど、小説にはないエモーショナルな場面を差し込んだコミックならではの「落とし前」のつけ方なのだろう。

小説版と比較して成瀬と島崎の「シスターフッド味」を1.2倍ぐらいに膨らめているコミック版。この微妙な底上げの仕方こそ、原作へのリスペクトそのものだと感じた。(は)

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