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【2028年4月施行予定】新遺族年金制度の変更点まとめ

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年金手帳

2025年6月13日に年金制度改革法が成立したことで、2028年4月に遺族年金制度が大きく変わる予定です。これまで男女で支給条件に差があった遺族厚生年金が見直され、男女平等なルールが新たに導入されるほか、子どもが遺された家庭に対する支援も、より柔軟で手厚くなります。

たとえば、再婚や高所得を理由に支給されなかった遺族基礎年金も、実態に応じて受け取れるようになるのです。本記事では、改正の背景や新しい支給ルール、対象者、スケジュールについてわかりやすく解説します。改正の影響を受ける可能性のある方は、ぜひ最後までご覧ください。

※本記事は2025年6月13日時点の情報に基づいています。最新の制度や状況については、必ず公式情報をご確認ください。

1. なぜ改正?遺族年金制度における課題

遺族年金制度は、家族を亡くした遺族の生活を支える大切な仕組みです。しかし、長年運用されてきたこの制度には、現代の家族構成や働き方の変化に対応しきれていない面がありました。

特に、男女間で支給条件に差があることや、制度がかつての「男性が働き、女性が家庭を守る」という家族像を前提に設計されている点に、多くの疑問の声が上がっていました。こうした課題を解消するため、政府は2028年4月から遺族年金制度の見直しを行う予定です。

ここでは、なぜ遺族年金制度の改正が必要とされたのか、その社会背景の変化や課題について、詳しく見ていきます。

1-1. 男女で異なる支給条件の不公平感

現行の遺族厚生年金制度では、男女間で支給要件に差があります。

たとえば、子どもがいない30歳未満の女性は、遺族厚生年金が「有期給付(5年間)」として支給されるのに対し、男性は55歳未満であれば遺族年金自体を受け取れません。

このような遺族年金制度の不公平感が、以前から問題視されてきました。見直し後は、子どもがいない30代女性にも5年間の有期給付が適用されるようになり、その対象は年間およそ250人と見込まれています。一方、子どもがいない60歳未満の男性も新たに有期給付の対象となり、約1万6千人が該当するとされています。

1-2. 女性の就業率上昇と家庭の形の多様化

制度見直しの背景には、家計維持の役割を男女で区別しにくくなった社会の変化があります。かつては、夫が働き、妻が専業主婦として家庭を支えるという形が一般的でした。そのため、夫を失った妻には経済的な支援が必要とされ、遺族年金が手厚く支給される仕組みが整えられてきました。

しかし、現在では女性の就業率が上がり、共働き世帯が当たり前になっています。もはや「夫が家計を支え、妻が扶養される」という前提で、制度を組み立てること自体に無理があるのです。

こうした時代の変化に合わせて、遺族年金制度も男女平等の観点から見直す必要があるとされ、改正に向けた動きが進められているのです。

2. 改正後の遺族厚生年金の新ルール

2028年4月から実施される遺族厚生年金制度の見直しは、これまでの性別による不公平や、時代に合わない制度設計を是正する大きな改革です。この見直しでは、男女で異なっていた支給条件が統一されるほか、収入による制限の緩和や、生活状況に応じた継続給付の導入など、より柔軟で公平な仕組みに変わります。

ここでは、改正後の遺族厚生年金に新たに導入される支給ルールの内容や、支援が必要な遺族への配慮措置、給付額の見直しなどについて、詳しく見ていきます。

2-1. 支給期間の男女統一|60歳未満で死亡した場合の給付

これまでの遺族厚生年金制度では、女性は年齢によって有期・無期の支給が分かれており、男性については55歳以上で死別した場合のみ60歳から無期給付という極めて限定的な範囲とされ、明確な性別差が存在していました。

しかし、2028年4月の改正により、支給要件が男女で統一されることになります。今後は、男女問わず60歳未満で亡くなった場合、原則として5年間の有期給付となります。

この見直しにより、対象となる女性は、18歳年度末までの子どもがいない、2028年度末時点で40歳未満の方となる見込みです。また、男性については、これまで対象外だった層にも支給が拡大され、18歳年度末までの子どもがいない60歳未満の方が新たに5年の有期給付を受けられる見込みです。

2-2. 配慮が必要な場合は「5年以降も継続支給」

改正後、60歳未満で死別した場合は、原則として5年間の有期給付が基本となりますが、生活状況によっては5年以降も延長し、最大65歳まで受け取り続けられる仕組みが設けられています。たとえば、障害のある方や収入が十分でない方は、5年経過後も引き続き「継続給付」を受けられるのです。

単身で就労収入が月10万円以下(年122万円以下)の場合には、継続給付が全額支給されます。また、収入が増えるに従って年金額が段階的に調整され、およそ20〜30万円/月を超えると支給が停止される仕組みです。

さらに、5年間の有期給付中には「有期給付加算」が上乗せされ、給付額は従来の約1.3倍となる予定です。このように、改正後の遺族厚生年金は、支援が必要な人に配慮がなされた設計となっています。

2-3. 収入要件の撤廃と給付額の見直し(加算あり)

これまで、遺族厚生年金の受給には年収850万円未満という要件が設けられていました。しかし今回の制度改正では、この要件が撤廃され、年収に関係なく受給できるようになります。

また、5年間の有期給付には「有期給付加算」が上乗せされ、従来の遺族厚生年金よりも手厚い支援となる設計です。さらに、「死亡分割」など給付額の見直しによる支援強化により、老齢厚生年金が増額される配慮がなされています。

なお、就労が困難な人や障害がある場合、または収入が一定以下で生活が厳しい場合には、5年間の有期給付終了後も支援が継続される「継続給付」が用意されています。こうしたさまざまな配慮により、遺族の暮らしをより幅広く、柔軟に支える仕組みへと変わっていくのです。

3. 遺族基礎年金の見直し|子どもが受け取れるように

遺族基礎年金は、本来遺された家族の生活を支えるための制度です。しかしこれまでの制度では、再婚や親の収入、養育者の関係性などによって、実際に支援が必要な子どもであっても、年金を受け取れないケースが多くありました。

こうした問題を解消するために、2028年4月からは支給ルールが見直されます。再婚や年収といった条件に左右されることなく、子どもが年金を受け取れるようになるのが大きなポイントです。

ここでは、遺族基礎年金における、注目すべき3つの見直しポイントを解説していきます。

3-1. 「母が再婚したら受け取れない」問題の解消

これまで、母親が再婚すると、たとえ亡くなった父親により遺族基礎年金の受給権が発生していた場合でも、年金を受け取れなくなる仕組みとなっていました。しかし今回の改正により、子どもが母親と生計を共にしていれば、たとえ母親が再婚したとしても遺族基礎年金を受け取ることが可能になります。

3-2. 年収850万円超の親と同居でも受給OKに

従来は、子どもと同居している親の年収が一定額(850万円超)を超えると、子どもが遺族基礎年金の対象外となることがありました。しかし、たとえ収入の高い親と生活を共にしていたとしても、家庭によっては経済的な支援が必要な状況もあります。

見直された新しい制度では、年収ではなく、「生計を同じくしているかどうか」で判断されるようになります。これにより、収入額ではなく、「生計同一性」に基づいた判断に応じて、適切な支援が行われる仕組みとなるのです。

3-3. 離婚した元配偶者が子どもを養育中に死亡した場合も対象

これまでは、たとえば離婚後、子どもを養育していた元夫が亡くなった場合、元妻は元夫の死亡後に子どもを引き取ったとしても、死亡前にすでに離婚していたため、遺族基礎年金の支給対象にならないケースがありました。また、被保険者(子どもの父か母)の死亡後、祖父母などの直系血族の養子として養育しても、制度から漏れてしまうという課題がありました。

改正により、離婚後に元配偶者が養育していた子どもも、その死亡により遺族基礎年金の対象となるようになります。さらに、祖父母などの直系血族・姻族に引き取られて生計を共にしている子どもも、年金の支給対象に含まれるようになります。

制度の対象がより柔軟に広がり、実際に子どもを支えている家族が子どものために受け取る年金を通じて、生活の安定を図れるようになるのです。

4. 今後のスケジュールと対象者

遺族年金制度の改正は、2028年4月から施行されますが、すべての変更が一斉に適用されるわけではありません。女性に関する支給要件の見直しは、既存の受給者や制度との整合性を保つため、約20年かけて段階的に実施される計画です。

また、すでに年金を受給している人や、特定の条件に該当する人は、今回の見直しの対象外となるケースもあります。自分や家族が今回の制度改正に伴い、影響を受けるのかどうかを確認するためにも、今後のスケジュールや対象者の範囲をしっかり理解しておくことが大切です。

ここでは、改正における今後のスケジュールと、その対象者について詳しく見ていきましょう。

4-1. 実施は2028年4月~段階的に

遺族厚生年金制度の見直しは、2028年4月から開始されますが、すべての変更が一度に適用されるわけではありません。女性に関しては、既存受給者との整合性確保のため、段階的な導入が予定されています。

まず、2028年4月からは女性の有期給付の対象年齢が30歳未満から40歳未満に引き上げられます。
そしてその後、約20年かけて段階的に対象年齢が60歳未満まで引き上げられていく方針です。
一方、男性については、施行日から年齢要件が撤廃され、60歳未満でも給付を受けられるようになります。(2025年3月4日時点の情報に基づく)

4-2. 改正の影響を受けないケースもある

今回の改正は、すべての人に影響を及ぼすわけではなく、以下の条件に該当する場合は従来通りの制度が適用されます。

・すでに遺族厚生年金を受け取っている場合
・60歳以降に受給権が発生する予定である場合
・18歳年度末までの子どもがいる場合
・2028年度末時点で40歳以上となる女性である場合

このように、すでに制度の恩恵を受けている方や、一定の年齢以上の方には、改正の影響が及ばないように設計されています。改正の対象になるかどうかは、自身の年齢や家族構成などによって異なるため、制度の詳細を確認し、自分がどのような立場にあるかを把握しておくことが大切です。

まとめ

今回の遺族年金制度改正は、家族構成や生活スタイルの多様化、男女の就業状況の変化を踏まえた制度改革です。これにより、給付対象や条件が見直され、より多様な家庭の実情に対応できるようになります。

今後の備えとして、保険・年金制度の見直しや相談を検討する企業・個人も増えるでしょう。ご自身やご家族がどのような影響を受けるのか、制度改正の影響をしっかりと理解し、必要に応じて年金や保険の見直しを行いましょう。

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