道東移住3か月弱、友だちがほしくてイベントを開催した
北海道美唄市(道央)から北見市(道東)に引っ越して3か月。友だちはゼロ。人脈ゼロスタートの移住者が2024年10月12日。雲一つない秋晴れの下、北見市のお隣―美幌町でイベントを開催した。
古着からはじまる交流会―着ルンです会
時は、私が北見市に引っ越す約2週間前まで遡る。
美唄市では服の循環に触れる古着フリマ×交流会企画―着ルンです会を半年ほど毎月開催していて、その日は美唄を去る前の最後の開催準備をしている最中だった。企画のことや引っ越しのことをInstagramで発信していた私へ〈美幌でも開催しませんか?〉と声が掛かったのだ。
着ルンです会は、家に眠っている服をみんなと出し合い販売・譲渡しながら、新しい出会いやコミュニティを創出することを目的にしている企画で、これまでは、まちにある程度住み、信頼できる人たちに直接一人ひとりに「一緒に古着フリマをしない?」と声を掛けて開催していた。
でも、今回は住んでいないまち。しかも、自分が知る人がほとんどいない状態でイベントを開催することになるこの提案。私はやり切れるんだろうかと一瞬怯んだ。けれど、これもきっと何かのご縁。どうなるか分からないけど、やってみようと声を掛けてくれたWorking Space KITEN(以下、KITEN)と開催することになった。
着ルンです会 in オホーツク
北見に引っ越して2週間。KITENに直接行って、初めてのオフライン打合せが叶った。
フリマ経験がない。出したい服の量はあまりない。自分一人で販売できるか不安。そんな人でも参加しやすい形態はないか、美幌町やその周辺に住む人にフィットする出店形態は何か。担当してくれる宮﨑さんと一緒に考え、「着ルンです会 in オホーツク」の募集を始めた。
――誰も来てくれなかったらどうしよう。
正直不安でいっぱいだったけれど、「参加します!」とフォームから応募が来るたび「ありがとう!」と応募フォーム画面に向かって叫んだ。メールで連絡は取り合っても、当日まではどんな方なのか分からない状態の準備で、どんな方だろうと想像しながら、早く会いたい気持ちが増していった。
最終的に6組の出店者の方々と一緒にイベントに臨むことになった。
イベント当日、車を持っていない私は、いつもより早く起きて服とハンガーを詰めたキャリーケースを転がして駅に向かい、電車に揺られた。無人駅ワンマン列車に初めて乗った私は、先頭車両の一番前のドアしか開かないことを知らず、一向に開く気配のない3両目のドアの前で立ち尽くして、危うく降り逃しそうになりながらもなんとか美幌駅に到着した。車両のドアを開けて気持ちは全力疾走の私に道を譲ってくれた男子高生、ありがとう。まさか、電車一つ乗るのにこんなにドキドキするなんて……と汗を拭い、そこから40分徒歩でKITENを目指した。朝8時前、雲一つない秋晴れ。目に見える木々、山々。それが気持ちいのなんのって。あまりにも気持ちよくて写真に収めた。
出店するみんなと挨拶をしながら設営に取り組み、10時からイベントスタート。
屋内に入ってくる陽の光も気持ちがよくて、出店者同士でわいわい話したり、美富ベーカリーさんのココナッツドリンクでおなかを満たしたり、SNSで繋がっていたNEW HUMBERの西村さんが持ってきてくれたNEW HUMBERオリジナルグッズのどれを買うか吟味したり、来てくださったお客さんが服を選ぶのに時々お話をしたりして、ゆったりとした穏やかな時間が過ぎた。もうお話ししかしていない。
正直なところ、集客はしょっぱい結果でせっかく準備してくださったのに力不足で申し訳ない気持ちでいっぱいになった。だけど、「あっという間だった」「企画してくれてありがとう」「またやるときも参加します」「リベンジしましょう!」と皆さん温かい声を掛けてくれて、今回も本当に人に恵まれたなあとご縁に感謝した。
本当に参加してくださった皆さん、ありがとうございました!
出会うのは服だけじゃない
初めて企画を開催したことを思い出した。私は決して、古着を断捨離したかっただけでも、フリマをしてお小遣い稼ぎをしたかったわけでもなかった。一つの何かを誰かと一緒にしたくて、その誰か同士も繋がっていく場所を作りたかったのだ。その手段が、この企画では古着フリマだった。
よくあるブース分けのフリマではなく、みんなの服をごちゃまぜにハンガーラックやテーブルに並べて会計を統合する(通称ポップアップ型)ことによって、出店者が持ち場から離れられる余白を作り、出店者同士で交流し合える時間を大事にしたかった。私なりの友だちづくりである。
もちろん新しい服と出会うことも楽しめるけど、出会うのは服だけじゃなくて人。今回はほとんどがはじめましての集まりで、お互いの話を聞く中で新しい情報を知れたり、共感し合えたり、また会う約束ができたり。イベント中、そんな瞬間が散らばっていた。
私自身も「友だち」と呼んでくれる人とも出会うことができた。
反省はとてもとても多いけれど、人と人が繋がる時間を少しでも作れたのなら第一目標は達成したと自分の背中を少しは撫でてもいいだろうか。
そして、ある程度背中を撫でてあげたら、リベンジに向けて脳みそを捏ねくりまわすのだ。
今いる場所で私だからできること
先日、北見在住で道東を駆け回る方に「北見で自分にできることをしたいんです」と話すと「北見は難しい。そういう活動をしている場がなかなかない」と言われた。彼も悔しそうな表情をしているように私は見えた。
これまで私が関わってきたまちは人口2万人程度がほとんど。その約5倍もの人が暮らす北見市では、市の動き方も人の動き方も少し違うように感じる。
「でも、きっと求めている人もいるし人は来ると思うよ」とその方は言葉を続けた。
箱も何も持たない、市を動かす力も、企業を束ねる力もない平凡な一般市民(移住者)でも、今いる場所で私にできることを模索して実践する。それはどんな場所でも揺るぎなく私が大事に大事に抱えている想いだ。「今いる場所で私だからできることは何か」を私の人生における暮らしの問いとして、これからもこのまちを「私なり」に楽しむことを諦めない。
今は周辺地域だけかもしれないけれど、住んでいる間に北見市内でも何かできないか。それは趣味の場づくりなのか、生業の書くことなのか分からないけど、模索し続けようと思う。