期末前に増える書類……今が運用ルール改定の好機! 【紙とデータ】ハイブリッド時代の文書管理術
宅配収納サービス「サマリーポケット」を運営する株式会社サマリーの整理収納アドバイザーが整理、保管のポイントを紹介する本企画。前回の備品・在庫管理に続き、今回は書類の整理、保管について解説します。デジタル化が進む現代でも、紙の書類は依然として多く存在し、その管理方法は業務効率に大きく影響します。書類が増える年度末に向けて今から、書類の管理方法を見直してみましょう。
書類管理の基本的な考え方
保存期間による分類の重要性
書類の整理で最も重要なのは、法定保存期間を理解することです。書類は「法定保存文書」と、それ以外の2種類に分けられます。法人税法や会社法など、関連法規で定められた保存期間を確認し、書類を適切に分類します。たとえば、税務関係書類は原則として7年間(例外的に10年間)、株主総会議事録は永久保存が必要です。また、契約書類は契約終了後一定期間の保管が必要となります。これらの法的要件を踏まえた上で、自社の管理ルールを設定しましょう。
保管から廃棄までの一貫したフロー
書類の発生から廃棄までの一連のフローを明確にし、社内規程として整備することが重要です。特に機密情報を含む書類については、取り扱い担当者の指定や保管場所の制限、廃棄時の手順など、詳細なルールを設定しましょう。
定期的な見直しと棚卸し
書類の保管状況は定期的に確認し、保存期間を過ぎたものは適切に廃棄します。たとえば年末の大掃除は、棚卸しの絶好の機会です。廃棄する際は、シュレッダーやセキュリティボックスを使用するなど、情報漏えい防止に努めましょう。
書類を整理、保管する際に覚えておきたい4つのポイント
1. ファイリングシステムの構築
効率的な書類管理の基礎となるのが、統一されたファイリングシステムです。まずは書類を部署名やエリアなどで大分類し、その中でさらに中分類、小分類と細分化していきます。各分類にはカラーコードを割り当て、背表紙にはインデックスを付けることで、視認性を高めましょう。
2. 保管場所の最適化
書類の保管場所は、オフィスのレイアウトと業務フローを考慮して決定します。頻繁に使用する書類は担当者の手の届く範囲に配置し、参照頻度の低い書類は共有の書庫やキャビネットに移動させます。キャビネット内は上段から下段に向かって新しい年度の書類を配置し、取り出しやすさを考慮した配置を心掛けるといいでしょう。
3. 共有ルールの確立
書類を複数人で共有する場合は、明確なルールを設定することが重要です。紙の書類を参照する場合は、付箋などを用いてファイルに取り出した人の名前や部署を記載することで所在を明らかにしましょう。電子データについては、編集権限と閲覧権限を適切に設定します。
デジタルツールを活用した共有方法として、クラウドストレージやグループウエアの文書管理機能を利用することで、より効率的な運用が可能です。特に在宅勤務が増加している昨今では、必要な書類にリモートでアクセスできる環境を整備することが重要となっています。
4. 電子化と原本のハイブリッド管理
現代のオフィスでは、紙の書類と電子データを併用した「ハイブリッド管理」が主流となっています。たとえば、請求書や領収書は受け取り後すぐにスキャンし、経理システムに取り込んで日常的な処理はデータで行い、原本は月次でまとめて保管、キャビネットに整理するといった方法です。
スキャンした書類には、以下のような命名規則を設定することで、検索性を高めることができます。
「部署名_書類種類_取引先名_日付」
例:総務部_請求書_A社_20240131
また、原本とデータのひも付けを確実にするため、原本の保管ファイルやボックスには、対応する電子データの保存先を記載しておきましょう。紙の書類やフォルダーにQRコードを貼り付け、スキャンデータと連携させるシステムを導入している企業もあります。
ハイブリッド管理を実践することで、紙の書類と電子データそれぞれの利点を生かしながら、効率的な文書管理を実現することができます。
ハイブリッド管理をする場合のポイント
効率的な電子化の進め方
書類の電子化を進める際は、スキャンした電子データの管理方法を事前に決めておくことが重要です。ファイル名の付け方や保存先フォルダーの構造、アクセス権限の設定など、運用ルールを明確にします。また、原本の電子化が法的に認められているかどうかを確認し、電子化後の原本の取り扱いについてもルールを設けましょう。
紙の原本と電子データを併用する場合は、それぞれの特性を生かした管理が必要となります。日常的な参照は電子データで行い、原本は書庫や外部保管など、通常業務の邪魔にならないスペースで管理することで、業務効率化が見込めます。
外部保管サービスを活用した原本管理
保存しなければならない期間は残っているものの、日常的な参照の必要性が低い書類については、外部保管サービスの活用が効果的です。特に以下のような書類が外部での保管に適しています。外部に保管する場合、保管期間が近いものをまとめておくことで、さらに管理しやすくなります。
・過年度の決算書類や税務関係書類
・完了したプロジェクトの関連書類
・退職者の人事関係書類
・過去の契約書や議事録
外部保管サービスを利用することで、オフィススペースを有効活用できるだけでなく、書類の劣化や紛失のリスクも低減でき、必要に応じて取り出すことも容易に行えます。また、高度なセキュリティ体制の下で保管されるため、機密情報の管理も安心です。
効率的な書類管理は、業務効率の向上だけでなく、コンプライアンスの観点からも重要です。今回ご紹介した方法を参考に、自社に合った管理方法を構築してみてはいかがでしょうか。書類の整理、保管は一度で完結する作業ではありませんが、継続的な取り組みにより、より効率的なオフィス環境を実現することができます。
前回の備品・在庫管理と併せて、年末の大掃除を機に、より良い職場環境づくりにお役立てください。