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おマヌケな三毛猫がゆるかわいい、ルクアで個展を開く駆け出しイラストレーター・tamaのテーマは「日常×余白のサブストーリー」

SPICE

tama

最近なんだか元気が出ないと思っているあなたへ、栄養ドリンク代わりにtamanekoをおすすめしたい。2024年12月に行われたアートフェア『UNKNOWN ASIA 2024』でイープラス賞を受賞したデザイナー・イラストレーターのtamaが、2月16日(日)~27日(木)の期間、2年ぶり2度目の個展『tama SOLO EXHIBITION』を開催中だ。今回の個展は、『UNKNOWN ASIA』で展示した作品に加え、新作や人気のオリジナルグッズも多数登場。会場は大阪梅田のど真ん中・LUCUA1100で、参加型の楽しい企画も予定されている。苦労話も笑いに変えてしまう明るい人柄が作品にもにじみ出ているtamaに、作品の題材とするおマヌケなtamanekoが生まれた経緯や個展への意気込みを聞いた。

初めての個展『tama SHOP』の様子(本人提供)

コロナ禍でスタートした作家活動

――まずはイラストレーターとしての活動を始めたキッカケを教えてください。

もともと子供の頃から絵を描くのがすごく好きでした。ただ、美術の大学などは出ていません。当時は、絵を描くことを仕事にするのは難しいかなと、どこか諦めていたんです。それでも、グラフィックデザイナーとして会社に勤めつつアートスクールに通っていました。そんな中コロナ禍になって。空いた時間を利用して作ったLINEスタンプを周りに褒めてもらったのがキッカケで、SNSにイラストを投稿し始めました。仕事としての本格的なスタートは2022年に開催した、レトロ印刷 JAM大阪での初個展。そこからイラストレーターtamaを名乗り始めました。

――最初の仕事が個展だなんて。

「絵がうまくなってから個展を開催しようと思っていたらずっとできない。思い切ってやってみたら?」というアドバイスをもらって、チャレンジしました。当初は、友だちしか来ないだろうと思っていたのですが、たくさんの方が足を運んでくださり、その中でギャラリーの方と出会い​今回の個展につながりました。

――何事もやってみないとわからないですね! デザインのお仕事とイラストレーターとしての活動で、違いを感じるのはどんなところですか。

デザインの仕事は、依頼内容に合わせていくことが求められますが、自分で発信するイラストは自分がかわいいと思ったものです。ウケるかどうかドキドキしながらではあるのですが、褒めていただいたときは、すごく嬉しいです。特に昨年の『UNKNOWN ASIA』は思っていたより皆さんにリアクションをいただけたので驚きました

どれだけ描きこんでもごちゃごちゃしない秘訣

――tamaさんの作品に登場するネコのtamanekoは、フレンドリーで楽しいキャラクターですね。観ていると明るい気持ちになれます。

tamanekoのコンセプトは親しみやすさで、日常を切り取るのがテーマです。自分に似ていれば、楽にずっと描き続けられるのではないかと思い、「おマヌケ」「どんくさい」「食いしん坊」といった私らしさを入れました。

――どうしてネコなのですか。

シルエットなども含めて表現しやすいのがネコでした。また、皆さんの身近にいて、興味を持っていただけるキャラクターになればいいなと考えて選びました。私自身は猫アレルギーなんですけどね(笑)。tamanekoは三毛猫のオスという設定なのですが、実は三毛猫のオスは数が少ないそうです。その「いそうでいない」存在というのが、実際にはこんな人間らしい猫はいるはずがない。それなのに親近感がわくという「いそうでいない」tamanekoにぴったり当てはまっています。

――制作するにあたって、特に気をつけていることはありますか。

色使いですね。毎回一枚一枚に心がけているのは「なんかこの絵、面白い!」と思ってもらえるようにすること。テーマとなるものだけでなく、例えば空いたスペースに「こんなのがあったら面白いかな?」というものをどんどん足していきます。こまごまと別のストーリーが動いている絵を描くのが好きで、「あ、ここにもこんなキャラクターがいるんだ!」と気づいていただけるようにしたいと思っていて。ただ、そうすると全体がごちゃごちゃしてくる。そうならないように色の数を絞り、トーンを合わせることによって統一感を出すようにしています。

――細かく描きこまれていて、宝探しのようです。どんな画材でその色を表現されているのですか?

一番多く使っているのはアクリル絵の具です。そのほかにも自由に色々なものに手を出しています。色鉛筆をお洋服の線にちょこちょこっと使ってみたり。他の画材が入るだけで、質感に変化が出ます。

――キャンバスではなく木製パネルを使われていますね。

色鉛筆で描く際に筆圧をかけられるように、木製パネルに描いています。準備の段階でたくさんヤスリをかけて、やに止めをしてから真っ白に塗って下地を作ります。描き出すまでに時間がかかりますが、いろんな方法を試す中でこのやり方に流れ着きました。iPadで下絵を作り、印刷したものを木製パネルにトレースして描き進めていきます。iPad上でも色を塗るのですが、実際にパネルに描いてみると印象が違うことも多いので、その都度柔軟に変えていきます。

この2作の完成版は、個展でお披露目される

―ートライアンドエラーで、楽しみながら描いていらっしゃるのが伝わってきます。

もちろん失敗することもあります。一時期、クレヨンにも挑戦しましたが、イメージしたような表現が出せず​(笑)。道具も手あたり次第使ってみています。

――イラストだけでなく、オリジナルグッズにも力を入れていらっしゃいます。

もともとデザイナーということで得意分野でもあり、アート作品よりも先にグッズ制作から入った感じがあります。このアトリエには創作のため、毎日退勤後に足を運んでいるのですが、グッズの多くはここで自分で作っているんです。アトリエには失敗したものを展示しています(笑)。

過去に出したグッズや絵本(本人提供)

――ご自身のグッズで気に入っているものはありますか。

お気に入りと言われると難しいですが、一番苦労したのは絵本です。もともと私は絵本がとても好きで、いつか絶対に作りたいと思っていました。特に絵本『バムとケロ』(作・絵:島田ゆか)のシリーズが大好き。すごく影響を受けていて、こまごまと描きこんでいく今のスタイルの原点にもなっています。実際に作ってみたら、お話に沿って絵をガンガン描いていくという作業量の多さに苦戦して。私らしくサブストーリーもある絵を描きたかったので、それを全部のページにとなるとかなり大変でした。

――仕上がりを見ていかがでしたか?

すごく感動しましたし、周りの方も喜んでくれたので作って良かったなぁと思いました。ただ、もう一度作るとなったらかなり大変ですね(笑)。知り合いに教えてもらって、勢いで行ってみた香港のイベントで一番リアクションがあったのが、絵本だったんです。日本語を勉強している方も多く、簡単な言葉なら読めるようです。私は語学が堪能ではないのですが、そこでの交流がすごく楽しくて、帰ってきてからもSNSでやり取りをしています。

『UNKNOWN ASIA』での自信を糧に、大阪の中心で個展を開く

tama

――『UNKNOWN ASIA 2024』ではイープラス賞、FM802賞、そして5名のレビュアー賞を受賞されました。賞をもらって、心境や仕事での変化はありましたか。

出展するまでは、こんな感じで大丈夫かなと不安だったのですが、たくさん評価をいただき、正解はないんだという自信をもらいました。たくさんの方とつながりを持つことができ、お仕事のご相談も受けています。本当に出展してよかったと思います。初出展の方が多く、同じ悩みを持っている作家さんたちに出会うことができたのも大きかったです。近くのブースの人たちと仲良くなって、年明けに20人程が集まって新年会を開催しました。これまでは相談したくてもできなかったのですが、今は違います。皆さん、作り方などを隠さず教えてくださるので心強いです。

――作風やテーマにも影響がありそうですね。

キャラクターのコンセプトであるおマヌケや人間味というのは大きく変わらないかもしれませんが、表現方法として今後は立体や粘土など、いろんなことやってみたいと考えるようになりました。

――イープラス賞を受賞した方は、イープラスの社員さんの名刺に載せる似顔絵を描くのが恒例です。似顔絵を描くのはお好きですか?

学生時代、授業中に先生の似顔絵を渡して友だちを笑わせていた思い出があります(笑)。似顔絵は難しいですが、お渡しするとすごく喜んでもらえるので達成感がありますね。ご本人らしさを大切にしながら、tama要素とうまく組み合わせていい絵にしたいと思っています。

――名刺は似顔絵だけでなく、趣味なども絵に取り込んで描くスタイル。tamaさんの画風と相性が良さそうです。そして2月16日(日)からLUCUA1100にて、2年ぶり、2度目の個展を開催されます。どんな展示になりそうですか。

『UNKNOWN ASIA』で展示した1日のストーリーを表現している4枚の絵をメインに、さらに作品を増やしています。また、『UNKNOWN ASIA』では置いていなかったグッズもしっかり準備して、より世界観を感じてもらえる展示にしようと思っています。それと、初の試みとしてワークショップを計画中です。お客さんとお話ししながら、オリジナル猫を描いて、その場で缶バッチにしようかなと考えています。

開催中の『tama SOLO EXHIBITION』で展開中のグッズ(本人提供)

――目の前にいるお客さんの性格を絵に落とし込んでいくということですか?

それができれば理想です。画力が追いつくのか……少し心配ですが(笑)。練習しておきます。

――コミュニケーションを大事にされているからこその企画ですね。最後に、夢や目標を教えてください。

tamanekoを多くの人に好きになってもらい、絵でご飯が食べられるようになりたいです!

仕事が終わってから深夜まで制作する日々を送るtama。明るい笑顔で二刀流をこなす彼女が生み出す作品には、ポジティブなエネルギーが充満している。疲れた時は、tamanekoからパワーを受け取ろう。

取材・文=井川茉代 撮影=川井美波(SPICE編集)

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