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【セルフわんこそば】給仕さんがいると緊張するぅ~! という照れ屋もウェルカムな平泉スタイルが楽しい

ロケットニュース24

「わんこそば」といえば、給仕さんのかけ声とともに、次々出される蕎麦をテンポよくかきこむ岩手県の郷土料理。歴代大会ではひとりで600杯食べた猛者もいるなど、何かとニュースを賑わす食べ物だ。

盛岡や花巻ではイベント時に限らず、通年わんこそば体験ができるお店がある。しかし、給仕さんに注目されながらの食事はなかなかのプレッシャー。筆者のような人見知りで社会性に乏しい人間は、見られていると感じるだけで食事が喉を通らない。

そんな人も大丈夫だ。世界遺産で知られる平泉には、盛るのも自分、食べるのも自分の “ひとり二役わんこそば”があるという。

・盛り出し式わんこそば「芭蕉館」

やってきたのは、中尊寺などの観光名所からもほど近い「芭蕉館」というお店。大きな駐車場を有し、団体のお客さんにも対応するロードサイド店だ。

メニューは「盛り出し式わんこそば」(税込2200円)を基本とし、ワンランク上の「特」(税込2700円)になると天ぷら&デザートが加わる。

一般的にイメージされる わんこそば のような食べ放題ではなく、12杯×2段=24杯がセットになっている。希望すれば3段目は無料、4段目からは400円ずつ追加料金がかかる。それでも、都市部の蕎麦店などに比べると破格に感じられるのではないだろうか。

ほどなくテーブルに朱塗りの道具一式が並んだ。使い込まれて年季が入っているものの、思わず「うむ、苦しゅうない」と言いたくなるような豪華な膳だ。

そもそも わんこそば はフードファイトのための食べ物ではなく、「少しでも茹でたてを……」という心配りから生まれたおもてなし料理だそう。格調高い伝統工芸品「秀衡椀(ひでひらわん)」に盛るのが平泉スタイル。

並んだのは薬味の数々だ。山菜、漬物、ワサビ、紅ショウガなどのほか

蕎麦の食感ががらりと変わる「とろろ」や

油揚げに大根おろし

定番のネギや海苔もたっぷり付いている。これらの薬味を好きに組み合わせ、最後まで飽きずに蕎麦を食べられるという趣向だ。

ひとつひとつの椀は小さい。勢いをつければひとくちで飲み込めるくらいだ。

椀(=わんこ)から自分で蕎麦を移し替える。威勢のいい「じゃんじゃん」「どんどん」のかけ声は、ここ平泉にはない。実に静かだ。

おお、蕎麦だけで食べても美味しい! クセのない、優しく上品な味。たとえば同じ東北の山形県では歯ごたえも風味も力強い、いかにも「田舎蕎麦」と言いたくなるような野性的な蕎麦があるけれど、その対極にあるようなまろやかな味わいだ。

蕎麦つゆも薄めで、ほんの少しずつ注ぐ。飲んでも大丈夫な塩加減になっているのだと思う。素早くひとくちで食べるのがポイント。

継ぎ足しはセルフサービスで。次々と椀が空になっていくのが快感だ。マイペースに食べられるので、この薬味とこの薬味の組み合わせは……などと自由に試行錯誤できる。

意外だけれど紅ショウガがめちゃくちゃ合う! 酸味とともにシャキシャキした食感が加わり、きりりと引き締まった印象になる。

甘く煮染めた油揚げもいい! 温かいきつね蕎麦はよくあるけれど、冷たい麺にも甘塩っぱさが絶妙にマッチする。知らなかった。

定番の「とろろ」や「おろし」は、想像どおりに美味しい。好きなタイミングで少量ずつ使える海苔も、湿気でシナシナしないから、いつもよりずっと風味よく感じられた。

この薬味はどうか、こっちの具材は合うか、と味変をしつつ自分でおかわりしていく過程がアトラクションのよう。かなり楽しい。とはいえ小分けにしているぶん乾燥するのも早いから、素早く食べるのが基本だ。

・岩手のおもてなしマインドを感じられる郷土料理

ずらっと並んだ空の椀が気持ちいい~~~! 成人女性の筆者は2段24杯で満足、もう少し食べたい人は3段目をお願いしてもよさそう。蕎麦だから想像以上にするりとお腹に入るし、胸焼けとも無縁だ。

かつて「客人が多いとき一度に茹でられず小分けにした」「わずかの間に蕎麦がのびるのを惜しんで小分けにした」などの説がある岩手の蕎麦。隣に控えた姉(あね)さんに給仕してもらう勇気が出なかった人も、平泉式なら気兼ねはいらない。ぜひ体験してみて欲しい!

参考リンク:芭蕉館
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.

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