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お金のいらない心豊かな老後を良寛と浅田次郎に学ぶ【大学教授・齋藤孝さん解説】

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お金のいらない心豊かな老後を良寛と浅田次郎に学ぶ【大学教授・齋藤孝さん解説】



人生100年時代、60代は新たなスタートラインです! そんな大切な時期をいきいきと過ごすための、頭と心のコンディショニング法を紹介しているのが大学教授・齋藤孝さんの著書『60代からの知力の保ち方』(KADOKAWA)。本書は日々のちょっとした習慣を通して、60代からの知力を無理なく、そして楽しく保つ方法を優しく解説します。「まだまだこれから!」という意欲を応援し、後半生をより豊かにするためのヒントが満載です。60代は、これまでの役割が変わり、自分を見つめ直す時期。脳と心と体をバランス良く整え、知的な活力を高めていきませんか?


※本記事は齋藤孝著の書籍「60代からの知力の保ち方」から一部抜粋・編集しました。


お金のかからない楽しみ、一点豪華主義を覚える


老いに向かう不安とはなんでしょうか。すぐ思い浮かぶのは、経済と仕事に対する不安です。しかし、これは不安ではなく、懸案事項なので、比較的整理ができる分野です。


仮に収支決算がうまくいかなかったとしても、良寛和尚、一休宗純の世界があります。私は小学生の頃この人たちの伝記を読んでからというもの、彼らの世界が大好きになりました。


良寛さんの歌集を見ますと、子どもたちとかくれんぼしたり、花を摘みに春の野に出たりしています。次の一首は手まりをついていて、春の日が暮れていくのを暮れなくてもよしと思う心情を表しています。


「この里に手まりつきつつ子供らと遊ぶ春日は暮れずともよし」


しみじみといいなと思います。他にも托鉢に出ようとしたら手まりをつく子どもに会って、そのまま一緒に手まりをついて春の一日を過ごすという長歌もあります。なんともお金のかからない暮らしぶりです。


日本古来の和歌の世界では、花鳥風月、季節の移ろいを愛で、花見、月見を楽しみました。日常の中に変化を見出し、それを愛でて共有する、豊かな感性がそこにあります。


作家の浅田二郎さんはエッセイ集『アジフライの正しい食べ方』(小学館)で、「今も昔も教養主義に拠って立つ日本人」として、貧しかった若い頃から現在に至るまで、次の言葉を心にとめているそうです。


「一に花。二に書物。三に食事」


「まず一輪の花を机上に飾り、次に書物を贖い、余裕があれば腹を満たす」というのです。心を満たし、余裕を生むのはまず、たった一輪の花でいいのです。これが日本古来の知のありようでした。


花でなくても、小さなことでもこれがあればふっと心が満たされるという対象が見つかれば、一点豪華主義の出来上がりです。無駄な欲望が自然と萎しぼみ、足るを知ることが出来ます。


私は古本さえあれば、心豊かに過ごせます。日本で他に誰も読んでいないだろうなというような本を手にすると、知の豊かさを独占しているような境地になり、心躍ります。


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