「アンコンかるた」が研修ツールとして外部採用 広がるパナソニック インダストリーのDEI教材
パナソニック インダストリー(東京都港区)は10月3日、同社が社内教材として開発した「アンコンかるた」が、他社の研修ツールとして採用されることが決定したと発表した。
同社が推進するDEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)活動の一環として社内で展開してきたツールが、外部企業における研修用途にも活用されることとなる。
アンコンシャスバイアスへの気付きを促す教材「アンコンかるた」
「アンコンかるた」は、無意識の思い込みを意味する「アンコンシャスバイアス」に対する理解を深めるため、同社DEI推進室が企画・開発した社内教材である。
アンコンシャスバイアスとは、気付かないうちに人や状況を先入観で判断する心理的傾向のことで、職場内の公平性や多様性への対応の観点から注目されている。
同教材は、社員から募集した五・七・五の標語を基に、五十音全てに対応したかるた形式で構成されている。日常の職場のやり取りに潜む思い込みに気付くことを目的とし、短時間で活用できるよう設計されている。
動画やイラストも活用 社内研修に展開
標語を基に、上司・部下・同僚とのやり取りを描いた動画も制作されており、懇談会や研修の場などで活用されている。イラストには性別や属性を限定しないよう動物のキャラクターを採用するなど、表現上の配慮もなされている。
内容の正確性と専門性を確保するため、一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所(東京都港区)が監修協力を行っている。
イベントでの紹介がきっかけに 「楽しみながら学べる」点に関心
「アンコンかるた」は、アンコンシャスバイアス研究所が主催するイベントにて紹介され、企業関係者や保護者を含む来場者から「年齢や立場を問わず短時間で活用できる」との意見が寄せられた。教材の形式や内容の分かりやすさが、幅広い層に受け入れられたとみられる。
この反応を受け、教育事業を手がけるロボライズ(兵庫県川西市)から、DEI関連の研修ツールとしての活用提案があり、今回の社外展開が実現した。
「アンコンかるた」誕生の背景 現場の社員にも届く形を模索
開発の背景には、工場などPCに長時間向き合うことが難しい現場社員にも、アンコンシャスバイアスについて伝える手段を探るという課題意識があった。短時間で視覚的に伝えられる形式を模索する中で、五・七・五の標語を用いた「かるた」という形式が採用された。
標語は社員から募集し、社内投票により五十音を選定。表現内容についても、社内外の視点からのフィードバックを受けながら調整が行われ、制作には数か月を要した。
標語完成後は、内容を基に動画と絵札の制作が進められた。動画脚本と連動したイラスト制作では、1枚の絵札で意図を表現する難しさがあったほか、ジェンダー表現への配慮から動物キャラクターへの変更が行われた。全体の制作には1年以上の期間を要した。
社内外における活用と今後の展開 社内懇談会やフォーラムなどで活用が進む
教材完成後は、社内の職場懇談会、新入社員研修、インターンシップ、DEIフォーラムなど、さまざまな場面で活用が進められている。DEIフォーラムでは、役員と社員が1チームとなってかるたを体験した後、標語についての感想や経験を共有するプログラムが実施された。
同社では、「アンコンシャスバイアスは無意識であるがゆえに、繰り返し意識する機会が必要」との考えから、かるたを継続的に活用する方針を示している。
一度の実施で終わらせず、定期的に実施することにより、組織内の対話や相互理解を促進することがねらいである。
「アンコンかるた」の詳細は、同社リリースで確認できる。一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所は、アンコンシャスバイアスの理解促進を目的とした教育・啓発活動を行う専門機関。
なお、「アンコンかるた」はロボライズより有償で提供される。
 
                