Yahoo! JAPAN

ウルフルズ、OKAMOTO’S、The Birthday、スピッツ、吉井和哉らが祝した4時間半の宴『グランドチャウデーション』1日目レポート

SPICE

『PLUMCHOWDER 20th ANNIVERSARY SPECIAL 20/25 グランドチャウデーション』

『PLUMCHOWDER 20th ANNIVERSARY SPECIAL 20/25グランドチャウデーション』2024.12.17(TUE)大阪・大阪城ホール

ライブイベント『PLUMCHOWDER 20th ANNIVERSARY SPECIAL 20/25グランドチャウデーション』の1日目「チャウデーションDAY」が、12月17日(火)に大阪・大阪城ホールで開催された。

『グランドチャウデーション』は、大阪を拠点にコンサートプロモーションや『ロックロックこんにちは!』等のライブイベントを企画制作してきたプラムチャウダーの生誕25周年、会社設立20周年を記念し12月17日(火)・18日(水)の2日間にわたって行われ、初日の17日(火)にはウルフルズ、OKAMOTO’S、The Birthday(クハラカズユキ、ヒライハルキ、フジイケンジ)【feat. 中野ミホ/PUFFY/吉井和哉】、SPITZ、又吉直樹(ピース)、吉井和哉が出演した。
開演時間へと向かうカウントダウンを経てスクリーンには突如、笑福亭鶴瓶が映し出され、「20周年おめでとうございます! とにかくメンバーが豪華です、ビックリせんといてくださいよ……」と、慣れないアーティスト名をたどたどしく紹介していくさまに早速、笑いが巻き起こり、そのまま「それでは参りましょう、『PLUMCHOWDER 20th ANNIVERSARY SPECIAL 20/25グランドチャウデーション』、「チャウデーションDAY」開幕!」と高らかに宣言。忘れられない一夜がいよいよスタートした。

The Birthday

The Birthday

お決まりのザ・クレスツ「シックスティーン・キャンドルズ」のSEを切り裂く、フジイケンジ(Gt)のひずんだギター。それに合流するクハラカズユキ(Dr)とヒライハルキ(Ba)のド迫力のボトム……ロックバンドの問答無用のカッコ良さを、ド頭の「I SAW THE LIGHT」からこれでもかと見せつけてくれたのが、The Birthdayだ。

The Birthday、中野ミホ

「こんばんはThe Birthdayです。今日は素敵なゲストをお迎えしてやらせていただきます。事務所の後輩、中野ミホ!」とクハラがコールすれば、シルバーグレーのドレスを身にまとった中野ミホが登場。生前のチバユウスケ(Vo.Gt)もかわいがっていた彼女は、Drop‘sの休止後はシンガーソングライターとして活動。大阪城ホールというキャリア最大級の舞台でも物怖じすることなく、歴戦の猛者どもに囲まれながら「プレスファクトリー」を可憐に歌い上げる。

The Birthday

「皆さんはじめましてこんばんは、中野ミホと申します。私は以前Drop’sというバンドをやっていて、そのときにThe Birthdayと同じ事務所で、プラムチャウダーにもすごくお世話になって、そのご縁で今日は歌わせていただいています。20周年、本当におめでとうございます!」と述べた後も、The Birthdayの奏でる哀愁のビートに乗せて「LEMON」を歌唱。彼女の歌声とThe Birthdayサウンドの思わぬ親和性もさることながら、改めてチバが残した音楽の素晴らしさを思い知る。

The Birthday

The Birthday、PUFFY

次に中野ミホと入れ替わりで現れたPUFFYが、祝いの装飾が施されたそろいのタキシード風ジャンプスーツ姿で、チバから楽曲提供された「君とオートバイ」を披露する。MCでは、旧知の仲というフジイとじゃれ合いながら「いつもはケンジって呼び捨てにしてます(笑)」(吉村由美)とにぎわせ、「PUFFYに曲を書いてくれた方々は続々とセルフカバーをするんですけど、本物がやったらそっちがいいに決まってるじゃん!」(大貫亜美)、「とは言え、負けじと今日も頑張って歌いたいなと思います、好きな曲なので」(吉村)と、またもチバの提供曲「誰かが」で、一時代を築いた二声を軽やかに響きわたらせる。

The Birthday

The Birthday、吉井和哉

続くゲストボーカルは吉井和哉。ただ、そこにいるだけで華になる圧倒的なカリスマ性を感じさせ、スタンドマイクを握りしめて「爪痕」を熱唱。見とれるオーディエンスの熱い視線を一身に受け、「じゃあもう一曲」と届けたのは「声」。The Birthdayのメンバー共々熱く声を上げ、言葉ではなく歌でとことんライブに貢献する。プラムチャウダーが導いた三者三様のゲストとThe Birthdayが作り上げた、一夜限りのスペシャルライブとなった。

ウルフルズ

ウルフルズ

サンコンJr.(Dr)の強烈なドラミングに乗せ、「こんばんはウルフルズです、『グランドチャウデーション』楽しんでね~!」とトータス松本(Vo.Gt)が叫べば、いきなりの総立ち。なぜだろう、うろ覚えでもみんなができてしまう「バカサバイバー」のサビの振り付け(笑)。先ほどまでのムードをあっという間にガラリと変えたウルフルズは、ソウルフルな「愛がなくちゃ」でも城ホールを心地良く揺らしていく。

ウルフルズ

「プラムチャウダー20周年おめでとうございます! 楽屋が知ってる人ばっかりで楽しいです(笑)。同世代もいっぱいいるし、さっきPUFFYの亜美ちゃんに「髪の毛伸びましたね、三つ編みに編んであげましょうか?」って言われたけど、出番がつかえてて自分で編みました(笑)。しばらくお付き合いください」(トータス松本、以下同)

ウルフルズ

リラックスした佇まいで歌う「笑えれば」が、時代を超えてこんなにも胸に染みるのは、ウルフルズのメッセージが持つ普遍性の証明でもある。こんなにも幸せな空間が今、世界中のどこにあるだろうと思わせるウルフルズの包容力には感心するしかない。しかもやる曲やる曲知らない曲がない。さらに、翌日には真心ブラザーズとしての出番が控えるサポートギターの桜井秀俊が、あのイントロを奏でれば場内の熱気はまたもピークに! 国民的アンセム、いや関西の国歌「ガッツだぜ!!」で大いに盛り上がる。

ウルフルズ

「プラムチャウダーおめでとう、これからもいいイベントをたくさんやってください。また呼んでください!」とラストに送ったのは「バンザイ ~好きでよかった~」。ベストオブベストなセットリストで惜しみなく楽しませたウルフルズ、さすがです!

ウルフルズ

又吉直樹(ピース)

「オープニングで鶴瓶師匠もおっしゃってましたけど、何で又吉なんですかね?(笑)。呼んでいただけてうれしいです! せっかくなので僕が一緒にお話ししたい方をここに呼びたいと思います」と、たっぷり髭をたくわえた風体の又吉直樹がPUFFYを呼び込み、作文を読み上げるという謎の展開からも、『グランドチャウデーション』がただのライブイベントではないことが伝わってくる(笑)。

又吉直樹(ピース)、PUFFY

又吉が用意した4つの作文のタイトルは、「私たちの町・寝屋川市」、「母」、「僕には2人の姉がいます」、「PUFFY」。本人を前に「PUFFY」を読み始めると、PUFFYと又吉の間にある幾つもの共通項に、妙に納得するやら笑えるやら。「母」のこの母にしてこの子あり(?)なユーモラスな生態にも、するっと引き込まれてしまう。インターバルにおける又吉の存在は、何事にもユーモアを忘れないプラムチャウダーの梅木康利代表の遊び心とシャイな一面を垣間見るようで、長丁場のイベントの絶妙な潤滑油となっていた。

吉井和哉

吉井和哉

「また吉井です(笑)。今はTHE YELLOW MONKEYのツアー中なんですけど、主催者の梅木さんのお祝いということで、どうしてもソロでやってほしいと。ただ、急にはサポートメンバーが集まらなかったのでミニマムにお届けしたいと思います」と語った吉井和哉は、ギターとピアノに加えて同期を駆使した小編成で「VS」を演奏。発言通り、現在はバンド本体のツアーの真っただ中というのもあり、なかなか見られない貴重なソロのパフォーマンスで、「点描のしくみ」でも艶やかなボーカルで魅了していく。

吉井和哉

「僕は40代の10年間はほとんど梅木さんと過ごしました。40代の僕を救ってくれた大阪のプラムチャウダーに改めて大きな拍手を! ねぇ代表(と舞台袖を見る)。これからも末永く、大阪で温かいイベントを続けてもらいたいと思います。そんな梅木さんは、僕が今ソロのツアーをやっていると勘違いして、「だったらTHE YELLOW MONKEYも一曲やってください!」と頼まれたので(笑)、せっかくなので」

吉井和哉

エレキギターとキーボードとボーカルのみというネイキッドな「LOVE LOVE SHOW」を大阪城ホールで聴けるのは、ある意味、相当レアでぜいたくなシチュエーション。さまざまな事情が招いた思わぬギフトとも言える光景には、観客からも拍手喝采! 

吉井和哉

「THE YELLOW MONKEY、いいバンドなんです(笑)。THE YELLOW MONKEYもこういうイベントに出してもらいたいよね。一回も出してもらったことがないよね? 嫌いなんですか?(笑)。その日を夢見て頑張りたいと思います」と、終盤には何ともうれしい逆オファーも!? そこにいる誰もが実現する日を楽しみにするなか、朗々と「FLOWER」を放った吉井和哉、美しき。

OKAMOTO’S

OKAMOTO’S

イギー・ポップの「ザ・パッセンジャー」のSEをかき分ける、オカモトコウキ(Gt)のカッティングがシビれる「90’S TOKYO BOYS」でクールに幕を開けたOKAMOTO’S。アリーナすら軽々グルーヴさせる重く分厚いバンドサウンドを轟かせ、「プラムチャウダー20周年おめでとうございます、出順がおかしいぞー(笑)。今日もこんな素晴らしい日に入れていただいて、後輩ですけど頑張ります」とはハマ・オカモト(Ba)。

OKAMOTO’S

「プラムチャウダーから受けた愛情に、こうやって感謝できたらいいなという新曲があるので」とオカモトショウ(Vo)が告げ、1月22日(水)リリース予定のニューアルバム『4EVER』から「ありがとう」をいち早く聴かせ、真摯なメッセージを際立たせるコーラスワークと、メンバー各人の高いプレイアビリティに思わず見惚れてしまう。

OKAMOTO’S

「せっかくこの出順にしていただいたので、ここからエナジー全開で飛ばしていこうと思うんですけど、皆さんついてこれますか? ぶっ飛ばそうぜ大阪!」と、巨大なステージで所狭しとアジテートするオカモトショウが口火を切った後半戦は、「この愛に敵うもんはない」を皮切りに、オカモトレイジ(Dr)のすさまじいドラミングが炸裂した「Dance With You」、真っ赤な閃光の中で飛び跳ねまくった「BROTHER」と畳み掛ける! 

「毎日毎日、何が起きるか分からないヤバい時代に突入しましたが、それでも俺たちとあなたはこうして音楽でつながることができている。そんな美しい日々にこの曲を送らせてください!」(オカモトショウ)とささげた「Beautiful Days」まで、濃厚極まりない全6曲。プラムチャウダーの大事な日のトリ前という任務を、見事に完遂したOKAMOTO’S最高!

OKAMOTO’S

又吉直樹(ピース)

又吉直樹(ピース)

ここで、「正直なリアクションし過ぎです(笑)。気持ちは分かりますけどね」とスピッツを待ちわびた客席の反応を敏感に感じ取った又吉がまさかの再登場。だが、幼少期特有の甘酸っぱさと狂気が潜んだ「僕が忘れられない歌」、身に覚えのない罪の思わぬ犯人を描いた「苦情」、勇気と恥が生んだ笑いの原点「初めて踊った日のこと」……ミュージックラバーな又吉ならではの音楽にまつわる短編に、いつの間にやら夢中になってしまう。
去り際には、太宰治、坂口安吾、宮沢賢治、相方・綾部祐二(笑)の数々の名言で大いに場を沸かせた又吉が、その役目をきっちりと果たした。

スピッツ

スピッツ

プラムチャウダーと幾つもの名演を作り上げてきた大トリのスピッツは、「春の歌」のとんでもない名曲ぶりで瞬く間に惹きつけたかと思えば、三輪テツヤ(Gt)が先導するキレのあるレゲエのリズムと﨑山龍男(Dr)の繰り出す疾走感に踊る「8823」と、緩急自在に魅せていく。「迷子の兵隊」~「正夢」とエバーグリーンな楽曲が続くゾーンでも、田村明浩(Ba)は息つく暇もなく縦横無尽に駆け回りエネルギッシュにアピール! 

スピッツ

「プラムチャウダー20周年ということで、いろいろツアーでも世話になっているし、関西では『ロックロックこんにちは!』もずっと一緒に作ってきたんですけど、昔メンバーをシャッフルしてカバー曲をやったんですよ。俺がボーカルでギターがThe Birthdayのフジイくん、ベースが明日出るMr.Childrenの中川(敬輔)くんで、ドラムがうちの﨑ちゃん(﨑山龍男)で……やった曲がウルフルズの「ツギハギブギウギ」だったんで、今日は何か縁を感じて。歌えと言われたら歌えそうだけど、多分フジイくんは忘れてると思うよ(笑)」と、当時を振り返った草野マサムネ(Vo.Gt)は、「スピッツは3カ月ぶりぐらいのライブなので力の入れ具合がイマイチ分かってなくて、今までの4曲で結構パワー使ったよね?(笑)。まだまだまったりやりますんで、皆さんも自由に楽しんで、最後までよろしくお願いします」と、気心知れた仲間が多くそろった久々のライブに、何だかうれしそうな表情。

スピッツ

その後も、現状の最新シングル「美しい鰭」からキャリアの初期曲「晴れの日はプカプカプー」までを奏で、スピッツの歴代のアーカイブから選ばれたレンジの広いセットリストにも触れる。「今聴いてもらったのはスピッツのインディーズ時代の曲で、音源にもなっていないんですけど、初心を思い出して演奏しました。今日、スピッツを初めてご覧になる方もいらっしゃいますよね? 「あの曲やらねーな」という気持ちになっている方もいらっしゃるかもしれないですけど(笑)、次はそんなあなたが考えるあの曲かもしれない……!」という含みのある草野のフリから、名曲「チェリー」~デビュー曲「ヒバリのこころ」へ! 先ほど草野は謙遜していたが、代表曲からレア曲までが入り乱れ、初見からファンまでを喜ばせるメニューでプラムチャウダーのアニバーサリーに花を添え、躍動感たっぷりの「バニーガール」~力強く思いを鳴らした「夢追い虫」でフィナーレを迎えた。

スピッツ

アンコールでは、「梅木おめでとー! でも、スピッツの方が長いもんね。これからもスピッツを続けていくんでよろしく!」(田村)、「おめでとう! だけども梅木を支えた周りの人に本当に感謝、みんなもそうです」(三輪)、「最高でした!」(﨑山)と次々に思いを伝え、「2024年を振り返ったときに思い出すステージに立たせてもらってありがとうございます!」(草野)と、最後の最後は爆裂ロックナンバー「跳べ」でフィニッシュ! 約4時間半にもわたった宴の初日を、プラムチャウダーと共にシーンを生き抜いたスピッツがしっかりと締めくくった。

スピッツ

再びスクリーンでは笑福亭鶴瓶が「以上をもちまして、『PLUMCHOWDER 20th ANNIVERSARY SPECIAL 20/25グランドチャウデーション』閉幕!」と締めのごあいさつ。続いてThe Birthdayの「サイダー」をバックに、鉄拳のイラストとこれまでの写真を交えた感動的なエンドロールムービーが流れていく……。行き着く先にあったのはMOROHAの「六文銭」の一節、<追いかけ続ける 問いかけの答え 答えは あなたがいた だから名曲>。
こういった記念公演だと代表自ら前に出て発言したりするものだが、梅木氏はあえてそれをしなかった。イベントを進行しつつ、吉井和哉が途中で目線を送ったその袖から時折、愛おしい一日を見守っていたことだろう。キャスティングや構成の妙、BGMの選曲、映像の使い方、そして一貫して裏方に徹したそのスタンスに、プロフェッショナルたるプラムチャウダーの美学を見た。

取材・文=奥“ボウイ”昌史 写真=オフィシャル提供(河上良、キョート・タナカ、翼、)

【関連記事】

おすすめの記事