JUVENILE×キム・ドギュン(82MAJOR) J-POPとK-POPが見事に溶け合うハイレベルなコラボレーション
エレクトロ、ヒップホップ、シティポップなど多彩な音楽性を持ち、日本で精力的に活動するDJ/アーティスト/音楽プロデューサー・JUVENILEと、K-POPの新しい波を象徴するダンスボーカルグループ・82MAJORのメインボーカリスト・KIM DO GYUN (キム・ドギュン)が、夢のコラボレーションを実現させた。
これまでに手掛けた楽曲のYouTubeでの総再生数が1億回を超える、JUVENILEが新たにスタートさせる「JUVENILE Global Project」の第一弾に選ばれたコラボ相手は、82MAJORの最年少メンバー、18歳のキム・ドギュンだ。JUVENILE「Letter feat.KIM DO GYUN」は、1月24日に配信リリース開始。せつない思いが降り積もるメロディアスR&Bバラードで、日本語の歌詞と韓国語のラップ、J-POPとK-POPが見事に溶け合うハイレベルな楽曲に仕上がっている。
SPICEでは、来日中のキム・ドギュンをキャッチしてJUVENILEとの対談を企画。「JUVENILE Global Project」について、楽曲「Letter」について、ミュージックビデオについて、様々な話題をたっぷりと語ってもらった。
――まずJUVENILEさんから、「JUVENILE Global Project」についてお話ししてもらえますか。
JUVENILE:僕は2020年からソロ活動を始めて、アルバムを3枚(『INTERWEAVE』シリーズ)出したんですけど、その中にすでに台湾、中国、韓国のアーティストや、日本人だけど英語で歌うとか、そういう曲があったんですね。それをあらためて全面的に押し出していこうというのが「JUVENILE Global Project」のコンセプトです。『INTERWEAVE』を作っていた2020年、21年はちょうどコロナ禍だったので、全てリモートでデータだけもらって、みたいなこともあったんですけど、今回のドギュンくんとの制作は、何回も会って顔を見て話して作っていったので、すごくやりやすかったです。
――JUVENILEさん、最近のインタビューで「常にK-POPには刺激を受けている」というお話をされていました。そのあたりをあらためてうかがえますか。
JUVENILE:音楽に勝ち負けはないとは思うんですけど“先を行かれてるな”という感じはあるんですよ。すごくレベルが高いし、追いつかなきゃいけない気持ちは常々ありますね。それを如実に表すのは、僕らはどのアーティストでも、曲を作る時に必ずリファレンス、参考曲を用意するんですね。なくてももちろん作れるんですけど、あったほうがイメージを統一しやすいので、実際その通り真似するわけじゃないんですけど、ジャンルであったりテンポ感だったりとかは参考曲をベースにするんですけど、それが韓国の曲である確率が高いんです。それって、もうそういうことじゃないですか。いい曲がいっぱいあるということだから。
――そうですね。時代性を含んだいい曲。
JUVENILE:だからやっぱり常に刺激を受けてますね。誰もが知っている、たとえばBTSとかNewJeansとかのレベルはもちろん、スタジオミュージシャンというか、プレイヤーとして活動してる人がYouTubeに上げている動画とかもめちゃめちゃ上手いんですよ。うまいばかりじゃなくてちゃんと歴史を追っているというか、そのベースがあっての今ということを感じるので、一朝一夕じゃないんですね。一朝一夕だったら、楽なんですよ。
――流行りを意識して作ったものというか。
JUVENILE:そう。それだけだったらこっちもいけるんですけど、音を聴くと歴史の積み重ねがあるのがわかっちゃって、“うわー、すごい”と思うことがやっぱりあって。負けたくないなみたいな気持ちは常にあります。
82MAJORがすごく目立って聴こえる理由は、ザ・K-POPじゃない。とにかく“あの人たちっぽいね”みたいなのがないんですよ。
――そんな中でスタートした「JUVENILE Global Project」の第一弾のコラボ相手が、お隣にいるキム・ドギュンさんです。どういう経緯で声をかけたんですか。
JUVENILE:まず僕が、82MAJORの曲をずっと聴いていたんですね。色々なアーティストがいる中で聴いていたんですけど、82MAJORがすごく目立って聴こえる理由は、ザ・K-POPじゃないんですよ。なんて言ったらいいのか、90'sのヒップホップもすごく感じるし。ザ・K-POPがどういうものか?というと、またそれも難しいんですけど、とにかく“あの人たちっぽいね”みたいなのがないんですよ。それで面白いなと思って聴いていたところへ、マネージャーから“82MAJORにオファーできます”という話を聞いて、まずライブを観に行かせてもらってご挨拶させていただいた、それが最初です。そのときは本当に短い時間で、そんなに長く話す感じじゃなかったんですけど、2回目は韓国でですね。僕が行ったタイミングでライブがあったので、観させてもらって、その時は結構時間があったんです。その頃にはもうスタッフ同士でも“一緒に曲を作れそう”みたいな流れができていたので、“どういう曲をやりたいですか?”みたいな話をしました。最初はライブ会場の控え室みたいなところで話して、そこから彼らのオフィスに移動する時に一緒についていって、僕が普段作っている曲を車の中で聴いてもらって、“どういう曲がやりたい?”みたいな話をしましたね。
――では、ドギュンさんは最初にJUVENILEさんとお話しした、その時のことを覚えていますか。
ドギュン:日本でお会いした時は本当に挨拶だけだったと思うんですが、韓国のライブの控え室でお話ししたのはよく覚えています。最初はメンバー全員とJUVENILEさんがお話しして、メンバーが帰って二人だけになった時に、日本でショーケースを観て、韓国でライブを観たけど、“どっちも変わらないパフォーマンスをしてくれたのは君だけだよ”という話をしてくれました。外国に行くと、どうしても緊張感があったり、このお客さんたちは僕らを本当に応援してくれる人たちなのかな?という不安があって、パフォーマンスに迷いが出る人もいるけど、“君はいつも通りの自分の全てを見せてくれたということを、韓国でライブを観てわかりました”と言ってくれました。
JUVENILE:すごく堂々としていたんです。
――どうでした? 日本の有名なプロデューサーに“一緒に曲を作らないか”と声をかけられた時の気持ちは。
ドギュン:本当に光栄だと思いました。さっきJUVENILEさんが言われたように、車の中でお互いの音楽の話をしたんですけど、まずはJUVENILEさんが今までアーティストとして作ってきた曲の紹介と、好きな曲を教えてくれた時に、お互いのことがよくわかった気がしましたし、本当にこの人は音楽が好きなんだということが自分に伝わったのので、ワクワク感でいっぱいでした。
――そこからどんなふうに、彼が歌うことをイメージして曲を作っていきましたか。
JUVENILE:僕はいつもそうなんですけど、できた曲を歌ってくださいじゃなくて、“どういう曲を作りますか?”から始めるんですよ。そこがいわゆるアイドルとの一番の違いだと思っていて。アイドルはこちらが作ったものを100%で表現してもらうんですけど、そこから一歩踏み込んで、曲を選んでもらうとか、アイディアを出してもらうとか、そういうふうにやってきたので。今回もいつも通りやりたいなと思いました。
聴いた時に僕の中に絵のようなものが浮かんできて、すごく寂しく一人残された人というものだったので、そのイメージを書いていきました。
――そして出来上がったのが「Letter」。冬のイメージに彩られた、美しいメロディのR&Bバラードです。
JUVENILE:82MAJORはヒップホップのダンス中心の曲が多いので、せっかくソロでやるなら同じような流れではなく、むしろ逆にいったほうが面白いんじゃないか?という話を二人でして、だったらR&Bだろうということになって。韓国ではバラードが結構ポピュラーというか、好きな人が多いので、R&Bのバラードでいこうと。ドギュンくんが好きな曲の中に、クリスマスのウィンターソングみたいな曲があって、冬とR&Bとバラードっていい組み合わせじゃないですか。それをやるだけでいい感じになるから、それでいこうということになりました。
――曲作りの間に、何度かミーティングはあったんですか。
JUVENILE:最初に車の中で話してから、実際に曲を作り始めるまでに、僕らの気持ちだけじゃなくて会社間のいろんなやり取りがあったんですね。それが完了して、じゃあ作りましょうとなった時にリモートで話し合いをしました。その時に決めたのが、僕がまずトラックを作って、メロディも考えて、彼に作詞をしてもらう。彼はメロディも書けるんですけど、今回はそういう形でやろうということにして進めていきました。
――ドギュンさん、彼の作ったトラックを最初に聴いた時に、どんなことを思いましたか。
ドギュン:フルバージョンを聴く前にまずワンコーラスを送っていただいて、その時は“恋愛に関する歌なのかな”みたいな感じでした。JUVENILEさんがおっしゃった通り、冬のバラードということは決まっていたんですけど、そのあとフルで全部聴いた時に僕の中に絵のようなものが浮かんできて、それはすごく寂しく一人残された人というものだったので、そのイメージを書いていきました。
――まずドギュンさんが詞を書いて、それを日本語にする過程があったと聞いていますけど、トータルでかなり時間がかかったんじゃないですか。
JUVENILE:リモートで話をしてから、レコーディングまでが1ヵ月ちょっとなので、僕の中では普通ですね。一般的にそれが早いか遅いかはわからないですけど。
ドギュン:僕はすごく早かったと思っていて、その理由は何かというと、歌詞の部分で、自分が書き終えないと次に行かないということがあったので、その部分で自分がすごく時間をいただいてしまったので。JUVENILEさんの作業はとても早かったと思っています。
――歌入れは日本ですか。
JUVENILE:韓国です。言葉が違うだけでやることは一緒だなと思ったんですけど、すごくいいスタジオを使わせていただきました。きれいで、機材は最新のものからヴィンテージまで揃っていて。エンジニアは女性の方で、すごく作業が早くて。
ドギュン:韓国でとても有名な方です。最高のエンジニアです。
JUVENILE:やっぱりそうなんだ。今それを聞いても驚かないですね。言葉の壁があるとは思えないスムーズさで、予測してくれるんですよね。言ったことをやるんじゃなくて、“これが必要だな”というものを準備してくれるんですよ。日本でも、すごい方はそういうことができるんですけど、彼女もそうで。だから言葉を訳してもらう時間以外はほとんどストレスがなかったです。
――ドギュンさんの歌入れについては、どんな印象でしたか。JUVENILEさんがディレクションをしたんですよね。
JUVENILE:いえ、僕はどのアーティストでも“こうやって歌って”とは言わないんです。ここからここまで歌って、“どうだった?”って聞くんです。 そこで“これが僕の100点です”と言われればそれでいいし、僕がこれでもうバッチリと思っても“もう一回歌いたい”と言われたらもちろん歌ってもらって、次に出てきたものを聴けば、どこを直したかったかがわかるじゃないですか。彼もそうで、もう一回歌って、変わったところが良くなっているというのは、僕も歌をやっているので普通にわかるんですよ。それを聴いて、やっぱりプロ意識が高いなと思いました。自分が歌ったものに対して“ここをもっと良くできる”と自分で判断して、改善できるスキルがあって、それを次のテイクでばっちり直してもっと良くできるというのは、一朝一夕ではできないことだと思います。
ドギュン:こんなに本気で向き合ってくれる人と一緒にやることになって、この人を失望させちゃいけないという気持ちが自分の中にあったので、すごく練習しました。本当に何度も何度も練習をして、レコーディングの前までにたくさん準備しました。なので、レコーディングそのものはそんなに難しくなくて、しかもJUVENILEさんが僕をありのままの自分でできるように導いてくれたので、すごくスムーズにレコーディングできたと思います。
愛についての悲しい物語を書こうとしたけど経験がなさすぎて、いろんな恋愛ドラマを探して、それを見ながら書いていきました(笑)。
――日本語の歌詞はどうですか。発音とか、難しいところもあったと思いますが。
ドギュン:やはり発音は難しくて、意味も含めて日本語の歌詞を頭の中に入れるのに時間がかかりました。自分が歌うことで聴いている方に何かを感じてほしい、感動してほしいという気持ちがあるので、それをどうやったら表現できるか?というところで、難しいところはありました。
――かなり謙遜していますけど、たとえばサビの終わりの《僕は、寂しい》という歌詞を歌うところ。繊細な感情が伝わってきて、感動しました。
ドギュン:(日本語で)ありがとうございます。嬉しいです。JUVENILEさんも全く同じ、そこがすごくいいと言ってくれました。
――途中でラップのパートがありますね。あそこはどんなふうに?
ドギュン:ラップの部分は、JUVENILEさんから“どんな言語でもいい”と言われました。英語でも、韓国語でも、日本語でもいいし、どんな言語でも面白いと思うと言われたので、だったら韓国語で書いてみようかなと思いました。ちょうど、82MAJORのメンバーの中にファン・ソンビンというラッパーがいて、彼とこの曲の世界観が僕の中ではよく合っていると思ったので、彼に“一緒に書いてみない?”と言って、二人で顔をつき合わせて、悩みながら一緒にラップの部分を書いたんです。でも、愛についての悲しい物語を書こうとしたんですけど、二人とも経験がなさすぎて、いろんな恋愛ドラマを探して、それを見ながら書いていきました(笑)。
JUVENILE:そうなんだ(笑)。
――JUVENILEさんが“何語でもいい”と言ったのは、どんな意図があったんですか。
JUVENILE:ラップには韻踏みがあるので、それを訳すのは大変じゃないですか。だったらストレートに書いてもらったものをそのまま歌ったほうが絶対いいだろうと思ったので。日本人は、そこを聴いて“どういうことを言ってるんだろう?”って思うだろうし、韓国の人は、ラップはわかるけど日本語のところはわからないだろうから、お互いに“なんて言ってるんだろう?”と思って聴いてくれるといいですよね。
――お互いにとってとても素敵なコラボレーションになっていると思います。
ドギュン:そう言っていただいて、とても嬉しいです。
――ミュージックビデオは現在制作中と聞いてますが、どんな内容になりそうですか。
ドギュン:(日本語で)“寂しい愛”。ミュージックビデオは、歌詞の内容をドラマにしたもので、寂しい愛を表現しています。相手の女性がいて、二人の学生時代のラブストーリーが描かれています。素敵なラブストーリーですけど、寂しさが伝わるものになっていると思います。
JUVENILE:ミュージックビデオに関しては、監督さんに全てお任せしています。逆に、曲の中身に関しては全ての権限が僕にあって、好きなようにやらせてもらったので、そこから先はでしゃばらず、それぞれのプロがやったほうがいいと思うので。僕もアイディアは出したんですけど、あまり細かいところまでは言わずに、監督さんにお任せしました。ただ、僕のマネージャーさんがすごく映画が好きな方で、“『Love Letter』という映画がすごくいいんです。こういう感じはどうですか?”とか、すごく熱心に薦めてくれたんですよ。そういうスタッフさんの熱い感じって、僕はすごく好きなんですよね。僕が“これをやってください”と言ったことを粛々とやってくれるのも、すごくありがたいんですけれども、“こういうのをやりたいんだ”というスタッフさんの熱量を僕は買いたいというか、みんなで作りたいので。そこまで言うんだったらもう最強じゃないですか。それを形にしてくれる監督さんがいて、俳優さんがいて、いいミュージックビデオになっていると思います。僕はただ“すごいですね”と言って見ていただけです(笑)。雪のシーンがあるんですけど、たぶん泡を使っていて、それが本当に雪に見えるんですよ。
ドギュン:それが口の中に入って大変でした。髪にもいっぱいついて、シャンプーみたいになって(笑)。
JUVENILE:女優の方がすごく自然で、可愛らしい方だったんですよ。結構タジタジだったよね?
ドギュン:その通りです(笑)。
JUVENILE:可愛いけど強かったもんね、あの子。でも、このミュージックビデオはそうだと思うんですよ。もう最初から女の人のほうが強いんです。ずっと女の人が一歩二歩、先を行ってる感じと言うか。
ドギュン:ずっとリードしてくれていました。しかも最後は一人で残されて、本当に寂しかったです(笑)。
JUVENILE:もう夜10時とか11時近くだったよね。撮影が終わったのは。
ドギュン:素敵なミュージックビデオになったと思うので、ぜひ見てください。
ドギュンくんと82MAJORとは、この1曲で終わらないようになっていけたらいいなとは思っています。
――「JUVENILE Global Project」、素晴らしい第一歩を踏み出せたんじゃないでしょうか。
JUVENILE:そうですね。僕はいつもどのアーティストに対しても、日本人でも海外の方でも、一緒にやったら面白そうだからお声がけするんですけど、“やってみたらあんまりいいものができませんでした”は絶対に許されないじゃないですか。これだけの人を巻き込んでいるので。そこはやっぱりプロとして、いいものにしなきゃいけないという責任感はあるんですけど、毎回いいものができているので、今回もただ楽しいだけではなく、いい緊張感を持ちながらできたんじゃないかなと思います。
ドギュン:ミュージックビデオの撮影も含めて、今回のプロジェクトが一段落したことに対して、やりきったという気持ちもあるんですけど、それ以上に僕は、今回のプロジェクトを通して得たものがたくさんあります。JUVENILEさんからたくさん学ぶことができたので、自分がこれからより一層良いアーティストになれるきっかけになったと思います。しかもこの曲は、韓国のファンがとても好きなタイプの曲だと思うので、ぜひたくさんの人に聴いてほしいと思います。
――JUVENILEさんとしては、このプロジェクトを続けていって、いずれはアルバムにまとめたいというプランもありますか。
JUVENILE:そうですね。まだ水面下の動きではありますけど、他にも韓国のアーティストや、ベトナムのアーティストや、いろんな方とお話はしているので、楽しみつつも頑張らなきゃなと思っているんですが。まずは今回のリリースに全力を注ぎたいのと、1曲やって“ありがとうございました”で終わらずに、ドギュンくんと82MAJORとは、この1曲で終わらないようになっていけたらいいなとは思っています。
ドギュン:そう言ってもらえてすごく嬉しいです。僕も今よりも一層成長していると思うので、次もしご一緒できたらもっといい曲が作れると思います。
――楽しみにしています。今日は本当にありがとうございました。ドギュンさん、次に日本に来てくれるのはいつですか?
ドギュン:1月17日~19日に韓国でライブをするんですが、それが終わったら1月23日から82MAJORのメンバーと一緒にまた日本に行けると思います。ぜひ会いに来てください。
取材・文=宮本英夫 撮影=大橋祐希
衣装協賛=KaIKI(カイキ)