建築家・山本理顕氏の設計思想に迫る「山本理顕展 コミュニティーと建築」が7月19日~11月3日、『横須賀美術館』で開催
建築家・山本理顕氏の50年にわたる設計活動を紹介する大規模展覧会「山本理顕展 コミュニティーと建築」が2025年7月19日(土)~11月3日(月・祝)、神奈川県横須賀市の『横須賀美術館』で開催される。TOP画像=横須賀美術館(2007)
60点もの模型や図面が展覧
建築におけるパブリックとプライベートの境界を「閾(しきい)」と呼び、地域社会とのつながりを生む空間として重要視する山本理顕氏。こうした思想を体現した建築は、そこに住む人々だけでなく、周辺のコミュニティー全体を豊かにできるものとして世界的な評価をあつめている。本展は、山本理顕氏の設計思想を総合的に紹介する、過去最大規模の展覧会だ。
担当学芸員は、「建築界最高の名誉といわれるプリツカー賞を、2024年に受賞された建築家・山本理顕氏。山本理顕氏の50年にわたる設計活動を、約60点の模型や図面、スケッチやドローイングで紹介します。代表作の一つである『横須賀美術館』の空間をあわせてお楽しみください」と見どころを語る。
模型や図面から浮かび上がる設計思想の過程
2020年に完成した名古屋造形大学では、都市中心部への移転のため、狭い敷地に1000人もの学生をどのように治めればよいか、またどのような都市型の美術大学をつくるのかといった課題があった。そこで104m×104mの巨大なワンルーム「スタジオ」をシェアリングすることで、研究室、学生たちの創作の場とすることを山本氏は提案。スタジオ空間全体でさまざまな活動がグラデーショナルに広がることを目指した建築が実現した。
また、『横須賀美術館』では北側が海に面し、三方を山に囲まれた横須賀に特徴的な谷戸状の地形をしていた。このランドスケープと一体になった美術館とするため、大部分の建物ボリュームが地下に埋込まれているという。さらに臨海部の厳しい自然環境に対する解答として、外周部にレストランやワークショップ室といった開放的な施設、中心部に展示・収蔵施設と、二重に入れ子状になったプランニングが示された。来館者はこの巨大なシェルターで覆われた内部空間を巡りながら、アートを媒介としたさまざまな出来事を体感することができるという。
一つ一つの建築に対し、山本氏がどのような設計思想をめぐらせたのか、“コミュニティを豊かにする”という氏の思想が、模型や図面から伝わってくる構成が興味深い。
開催概要
「山本理顕展 コミュニティーと建築」
開催期間:2025年7月19日(土)~11月3日(月・祝)
開催時間:10:00~18:00
休館日:8月4日(月)・9月1日(月)・10月6日(月)
会場:横須賀美術館地階展示ギャラリー(神奈川県横須賀市鴨居4-1)
アクセス:JR横須賀線横須賀駅からバス35分
入場料:一般2000円、大学生・65歳以上1000円、高校生500円、中学生以下無料
※市内在住または在学の高校生は無料。
※障がい者手帳をお持ちの人と付添人1名は無料。
【問い合わせ先】
横須賀市コールセンター☏046-822-4000
公式HP https://www.yokosuka-moa.jp/archive/exhibition/2025/20250719-939.html
取材・文=前田真紀 画像提供=横須賀美術館
前田真紀
ライター
『散歩の達人』『JR時刻表』ほか雑誌・Webで旅・グルメ・イベントなどさまざまなテーマで取材・執筆。10年以上住んだ栃木県那須塩原界隈のおいしいものや作家さんなどを紹介するブログ「那須・塩原いいとこ、みっけ」を運営。美術に興味があり、美術評論家で東京藝術大学教授・布施英利氏の「布施アカデミア」受講4年目に突入。