相手との距離を縮める。会議でビジネスマンが手書きにする理由。
ほぼ日手帳本体の製作にも関わってくれているTOPPAN株式会社の堂前達也さん。昨年からほぼ日手帳を使いはじめた堂前さんにとって、いまや手帳は仕事になくてはならないアイテムだそうです。ビジネスで活用されるほぼ日手帳のこと、聞きました。
──
手帳を使う前は、どのようにスケジュール管理を?
堂前
スケジュール管理もタスク管理も、デジタル化していて、ほとんど紙は持っていなかったんです。いまも、スケジュール管理は基本デジタルです。
──
では、手帳にはどんなことを書いていますか?
堂前
得意先や経営層とのミーティングに持っていって、重要だなと思ったことをメモするようにしています。
──
ミーティングが複数入っている日もあると思いますが、1日ページで足りますか?
堂前
日によって1日では足りない日もあれば、半分で終わる日もあるので、そういうときは半分で終わっている日の空いたスペースを使うこともあります。ただ、分量としてはだいたい1日分のメモがその日に収まって、ちょうどいいサイズだなと思っています。僕がメモしているのはあくまでも重要ポイントだけなので、複数のミーティングがあってもけっこう収まる。かなり理想的なスペースです。
──
手帳を見せていただくと
色分けがしてありますが、どのように?
堂前
シンプルですが、おまけのボールペンの3色を使い分けています。基本は黒でメモをとっておいて、そのミーティングのタイトルやイベントごとは青に。そして内容をデジタルに記録するときのために最重要事項を赤で書き留めておきます。
──
いちど手帳にメモしたことを、デジタル化するんですね?
堂前
そうです。立場上、部下に指示をすることが多いので、メモしたことの中から重要な事項やワードをピックアップしてメールなどで部下に伝える、という流れです。そのファーストステップが手帳で、パソコンに入力するのがセカンドステップ。手帳を使うようになってから、この流れが定着しました。
ミーティングで様々な情報が行き交う中からポイントを取捨選択してメモする。それを整理して、噛み砕いて、メンバーに共有する。手で書くことによって、自分の中で一度言語化して落とし込むことで理解が深まる。だから手書きのステップが入ることは大事だなと思います。
──
手帳は常に持ち歩いていますか?
堂前
いつも持ち歩いています。手帳と名刺入れの2つを手で持ち歩くのがいまのスタイルですね。毎日家に持って帰っていて、ふと思いついたこと、「これ忘れそうだな」ということを書き留めたりもします。以前はそれもデジタルでメモしていましたが、最近手帳に残すようにしました。
手帳から入り、パソコンに入力しながら整理してまとめる、という一連のプロセスができあがっているので、そのファーストステップをすべて手帳に集約することでヌケモレがなくなります。
──
どの時間に書くかは決まっていますか?
堂前
朝、出勤したときです。その日一日のスケジュール、タスクを確認するとき、前日に書き記したことがこの手帳の中にたまっていますので、それを一度整理する。この時間が、アナログからデジタルに移行するタイミングですね。
──
使い始めて1年足らずでもう、手帳が仕事の中にしっかりと組み込まれているんですね。
堂前
ルーティン化するのが大好きなんです。朝起きてから寝るまで、どの順番で何をするかを固めておきたいタイプで。仕事ではこの手帳がルーティンの軸になりやすいんですよ。
──
手帳を使うようになって、いちばんよかったことはなんでしょう?
堂前
明確にあります。得意先とのミーティングのスタイルが変わったことです。部全体で十数社を担当していますが、得意先にプレゼンやミーティングに出向くと、いまってほとんどの人が、パソコンを開いているんですよ。
──
はい。そんなイメージがあります。
堂前
そのことに、僕はずっと少し違和感を覚えていたんです。
──
違和感?
堂前
たとえばプレゼンテーションのとき。こちらがお得意先の大事な商品のプロモーションについて話す。そのときに、パソコンを開いている状態が、
なんだかいやだなと思って。
わたしたちは受託産業で、お客さまからお仕事をもらう立場です。だったら、お客さまの顔をしっかり見ながら話をしたいなと思うんです。もちろん、パソコンを開いていたって見えるんですよ。でも、このモニターがひとつ、相手との間の壁のようになっているな、と。
──
壁のように。
堂前
そうです。そういう壁を取り払って、お客さんとちゃんと面と向かって、お話がしたいなとずっと思っていたんです。
もちろん、担当者は議事録などのドキュメントを作る必要があるので、その場でパソコンを開く必要もあるし、そのほうが効率的だと思います。僕は部長という立場なので、本当に大事な3、4のポイントをチェックしていくことのほうが重要で。そうなると、手帳で充分ことたりるんですよね。
──
パソコンによってつくられた壁が手帳によって取り払われたわけですね?
堂前
そうです。手帳を持ち歩くようになって、得意先でもパソコンではなく手帳を開くようにしたら、相手との距離が縮まって、真っ向から向かい合える、真っ向から語り合えるな、と思ったんです。
もちろん、内容に応じてメモをとることはします。それはパソコンでも手帳でも同じで。でも、同じメモをするにしても、手帳に書くほうがスタイリッシュな気がするんですよね(笑)。だから、いまはこのほぼ日手帳が手放せなくなっています。経営層との面談の際も必ずこの手帳を持っていきます。
──
経営層の方々とも、向き合いたいから。
堂前
まさにそうです。古いと言われるかもしれないけれど、きっと共感してくれる人もいるんじゃないかと思います。僕にとってはこの手帳は
もはやなくてはならないアイテムです。
(出典:ほぼ日刊イトイ新聞 相手との距離を近づける手帳)