第38回釜石市民劇場23日公演 甲子大畑「不動の滝」を舞台に創作ファンタジー
第38回釜石市民劇場(同実行委主催)は23日、釜石市大町の市民ホールTETTOで上演される。大畑・不動の滝「女神と木伐(きこ)る男」伝奇―と題した物語は、同市甲子町大畑にある市民なじみの滝で繰り広げる創作ファンタジー(3幕10場)。キャスト、スタッフら総勢約50人で舞台を創り上げる。
物語の時代設定は明治初期。鈴子(釜石駅周辺)で製鉄所が稼働し、燃料の木炭生産が盛んになった時期を背景とする。主人公は甲子村(当時)大畑で炭焼きに従事する正直者の男性・良吉。良吉親子とそれを取り巻く村民が地域のシンボル「不動の滝」で不思議な体験をする空想世界を描く。滝の近くに実在する祠(ほこら)にヒントを得て、物語を創作した。
キャストは小学4年生から79歳までの男女15人。初出演は3人。昨年11月末から稽古を重ねてきた。公演まで約1週間となった15日夜は、実際の舞台上で各場面を稽古。舞台装置、道具類、衣装を手掛けるスタッフらも集まり、キャストと一緒に各種確認作業を行った。
主人公良吉を演じるのは釜石高2年の菊池圭悟さん(17)。昨夏、宮古市で行われた高校生による演劇づくりに参加したのを機に「地元釜石でも」と応募。演出希望だったが、同実行委の久保秀俊会長(76)からキャストのオファーを受け、挑戦を決めた。演技の基礎を学び、せりふ覚え、立ち稽古と段階を踏んできた。「せりふは頭に入った。後は感情表現と動きの部分」と菊池さん。さまざまな年代の人が集う場で「アドバイスをもらい、自分の中の疑問も解決できている」と周囲の支えに感謝する。残り少ない稽古で「もっと人物像をつかみ、完全に役になりきって全力で演じられたら」と意気込む。
市内の会社員池端愛音さん(19)は2回目の出演。前回は2年前、釜石商工高なぎなた部の一員として、戦時下の高等女学生役を演じている。今回の役は山仕事をこなす男勝りな女性・マサ。「自分の性格とは正反対。役作りも難しかった」と明かす。それでも仲間の演技を見ながら学びを深め、新たな挑戦を楽しむ。「不安や緊張もあるが、最後までやり遂げて、いい舞台をお見せしたい。今までの成果を本番にぶつける」と菊池さん。
大畑不動の滝は遊歩道も整備され、自然散策や写真撮影など手軽に訪れることができる場所。子どもたちの遠足地としても活用され、地元住民だけでなく多くの市民に親しまれてきた。劇の脚本を書いた久保会長は「滝に関する詳しい資料や言い伝えは見つからなかったが、祠があることからも、滝を中心とした人々の暮らしがあったのではないかと考える。現実離れした物語ではあるが、人間社会における正直者と嘘をついた人間の差、家族の絆や未来への希望が表現できれば」と語る。
第38回釜石市民劇場は23日午前10時半、午後2時半からの2回公演(各回開場は30分前)。入場料は前売り券1000円(当日1300円)、中学生以下は無料。プレイガイドはTETTO、イオンスーパーセンター釜石店、市内各地区生活応援センター、桑畑書店、シーサイドタウンマスト(大槌町)。