勉強や教訓にもなるし、虫の生態も分かる作品――短尺フラッシュアニメ『虫日和 ~人生で大事なことは全てムシが教えてくれた~』桐谷健太さん(ヒトオ役)×榎木淳弥さん(アリムラ役)が考える“人生で大事だと思うもの”【独占インタビュー】
TBSとKDDIが共同で制作する短尺フラッシュアニメとして、現在6話まで配信中の『虫日和 ~人生で大事なことは全てムシが教えてくれた~』。本作では、いろんな種類のムシたちが働くお菓子メーカー「インセクトスイーツ」に転職してきた主役「ヒトオ」を俳優・桐谷健太さん、主人公の指導役「アリムラ」を声優・榎木淳弥さんが担当します。
アニメイトタイムズでは、第0話配信と同時に桐谷健太さん&榎木淳弥さんのインタビューをお届け。「勉強になるし、教訓にもなるし、虫の生態も分かる」という作品の魅力やアフレコの様子について、さらにタイトルにちなんだ「人生で大事だと思うもの」についてなど様々な話題を伺いました。
【写真】俳優 桐谷健太× 声優 榎木淳弥が『虫日和』を通して考える“人生で大事だと思うもの”【インタビュー】
人間社会と虫社会が融合した本作の掛け合いで生まれた“グルーヴ感”に注目
──「基本的にみんな生きたいように生きている、それが虫だから」という深い台詞もありましたが、第0話の台本をお読みになられた際のご感想を教えてください。
ヒトオ役・桐谷健太さん(以下、桐谷):まず、人間のヒトオくんが、虫の会社で働くという設定がすごく斬新だなと思いました。第0話では入社して早々、クモダ課長の蜘蛛の巣に引っかかりながらも、アリムラさんを紹介していただき、最後はすごく辛辣な言葉で終わっていましたけれども。
アリムラ役・榎木淳弥さん(以下、榎木):「面倒くせえ」と(笑)。
桐谷:はい(笑)。
やっぱり、ここからどうなっていくのか。人間のヒトオがこの虫の会社でどう一生懸命やって、どういろんなことに巻き込まれていくのかがすごく面白そうだなと感じましたね。
榎木:時間帯によって、夜にしか出社しない虫もいたりして、「単純に羨ましいな」と思いました(笑)。自分の生活スタイルに合わせて働けるというのは、すごく現代的な感じもするなと。それに虫がお菓子メーカーで働くという、虫とお菓子って一見離れたイメージなのですが、それが一緒になっているところも面白い部分だなと思いましたね。
──本作のアフレコに際して準備されたことやディレクションを経て意識されたことがございましたら教えてください。
桐谷:僕は最初は「声を変えた方がいいのかな?」とか、何種類かの声のパターンを自分の中で考えて、人前で試したりもしました。どっちがいいか聞いたら、全員が「普通がいい」って(笑)。ナチュラルに出す声の方がいいと言ってもらえて。
最初にディレクターさんにも相談させていただいたら、「普通の桐谷さんの声でやっていただいた方がいい」とおっしゃってくださったので、堂々とそのままいきました。
榎木:どんな声のパターンがあったのか気になりますね。
桐谷:何種類かのパターンがあっても良いかなと思ったんですけど、結果的にポンと出てくるナチュラルな声の方が出しやすいということもあって。だけど、これからもしかしたら声色が変わったりする可能性もありますから。
ベースの声は変わらないけれど、虫たちとのコミュニケーションの中で声が変わったりする部分もあると思います。そこは自分の想像を超えた何かが出る可能性もあるので楽しみですね。
──榎木さんはいかがでしょうか?
榎木:アリ役ということで、最初は働きアリなのかなと思っていたのですが、実際はかなりの怠け者。僕自身も割と怠け者な部分があるので、そこは桐谷さんと同じく、あまり作らずにいけるのかなと思い自然体で演じています。
あとはやっぱり、主役の桐谷さんの雰囲気に乗っかっていきたいなと思う部分があります。アフレコ中は、なるべく桐谷さんの表情を凝視して、どんなお顔で演じられているのかなとか、現場の空気感を活かしたいです。
──先ほどアリムラのキャラクター性についてのお話もありましたが、ご自身が演じるキャラクターの印象を教えてください。
桐谷:ヒトオは人間社会でいろいろあり傷ついたりした部分もあって、虫の会社に転職してきたキャラクターです。やっぱり、いろんな辛いことや悲しいこともあっただろうし、あっけらかんとしているわけではないんですけど、また前向きに「やっていくぞ!」という思いで虫の会社に入社して1からスタートを切っているキャラクターだという気分で僕自身も演じました。
榎木:アリムラは第0話では「面倒くせえ」と言っていますが、怠け者と言いつつもなんだかんだお世話をしてあげているというか。なおかつ、たまに深いことを言っているような雰囲気も醸し出しているんですよね。ヒトオよりも年上で人生の先輩感があるので、その年上感も意識しながらやっていきたいなと思います。
桐谷:アリムラは蟻の中でも働かない20%の蟻で、これにも理由があるんですよね。
榎木:そうです。結構、虫としての深い理由があるので、見ていただくと徐々に分かってくると思います。
──今回、お二人が演じられる役は新入社員(ヒトオ)と指導役(アリムラ)といういわゆるバディのような関係かと思いますが、掛け合いをされていく中で感じたお互いの声の印象やお芝居の印象をお聞かせください。
桐谷:やっぱり台本だけで読んでいたときとは違って、実際に掛け合いをすると“グルーヴ”みたいなものが生まれる瞬間があるんです。それがめちゃくちゃ楽しくて!
榎木:たしかに(笑)。
桐谷:最初の方はテストをしましたけれど、ほとんどが一発本番なんです。そんな中でお互いの台詞を感じ合いながらアドリブが自然とポンポンポンと言えたりとか、そういう部分で普段とはまた違った新鮮な気持ちになりましたね。めっちゃテンションが上がりました。
榎木:結構、二人で爆笑している回とかもありますものね。
桐谷:とある虫が登場するのですが、アリムラさんが彼に対してすごく厳しいんです。
榎木:ふふ。そうですね(笑)。
桐谷:アドリブでポロッと毒を吐くところがあって、家に帰ってから思い出してクスッと笑ってました(笑)。思い出し笑いしちゃったんですよ(笑)。
榎木:あそこも面白かったですね。アドリブのどこまでが採用されているのかが気になります(笑)。
桐谷:そうですね(笑)。でも、その場で生まれたものを大切にするのはいいなと思います。
榎木:僕は普段は声優の仕事がメインで、桐谷さんは俳優として映像のお仕事をされていると思うんですけど、声にすごく深みがあるんですよ。
声優の声の深みとはまた違う独特の深みというか、なんとも言い難い感じがあります。でも、ヒトオのちょっと抜けている感じもあって、バランス感がすごく絶妙で面白いなと思ったり。
台詞のニュアンスも変幻自在なんですよね。こっちが何かアクションをしたら、全部パーンと返してくださるので、僕も毎回新鮮です。家で一人で台本を読んでいるだけじゃ分からないことがすごく具体的に見えてくる感じがありました。
なんなら、普段の声優の仕事でも桐谷さんの真似をしてみたり。
桐谷:マジすか!?(笑)。
榎木:実際にしたんですよ!
実際にやって、「あ、こういう感じなんだ」っていう新しい発見があったりもして、すごく勉強にもなるアフレコでした。
──お互いに刺激があった現場だったのですね。
榎木:僕はもうめちゃめちゃいただいていますね。
桐谷:僕は家に帰って笑うぐらい(笑)。
榎木・桐谷:(笑)。
──桐谷さんと榎木さんが演じられるキャラクター以外にも本作には個性豊かなキャラが登場していますが、お二人が気になるキャラクターを教えてください。
桐谷:本当にたくさんの“登場虫物”が出てきて、特に女性陣というかメスの方たちの勢いがすごくて、パンチも効いています(笑)。
でも、やっぱり浪川大輔さんが演じられるキャラクターとのやり取りもすごく楽しかったですね。その収録もグルーヴ感があって、すっごい楽しかったんですよね。
榎木:アドリブ合戦みたいになってすごかったですね。
僕はクモダさんが初回からすごく面白いと思いました。日野陽仁さんの力の抜け具合がめちゃくちゃ良くて、「普段そんなにアフレコはしないんだよね」とおっしゃっていたのですが、ちょっとぼーっとしたクモダ課長の感じが大好きで、ずっと聴いていられます。
桐谷:キャラクターたちも話数を重ねるうちにどんどん面白くなっていきますよね。
榎木:そうですね。最初から個性が強いのですが、より濃くなっていきます。物語も深みが出てきて、蜘蛛の糸の話という、これから収録するエピソードがあるんですけど、少し理不尽さみたいなものが感じられたりもします。
桐谷:人間社会の理不尽であったり、良さがあるのですが、そういうものが虫社会の話にうまく融合されていてすごく面白いんです。勉強になるし、教訓にもなるし、虫の生態も分かる。台本を読んでいて、ためになる部分や「あ、もっと気楽でもいいかもな」って思えたりする部分もあって、とても深くて、良い作品だなと思います。
──たくさんお話しいただきありがとうございました!「人生で大事なことは全てムシが教えてくれた」というタイトルにちなんで、最後にお二人が“人生で大事だと思うもの”を教えてください!
桐谷:大事なもの、いっぱいありますよね。
榎木:いっぱいありますよ。
桐谷:愛情、人もそうですし、ご飯も家も(笑)。
榎木:大切なものってなんだろう。でも、最近僕は年を重ねて「健康」が本当に大事だなって思い始めましたね。毎朝、眠くて目が開かない(笑)。「目が開かない身体重ッ」みたいな感じで(笑)。
昔は徹夜しても朝からバリバリ仕事ができていたのですが、もうだんだん朝に声が出づらくて。声は仕事でもすごく使うし、デリケートなので、なるべく健康でいることですね。喉の調子が良いと本当に職業的にも幸せなんですよ。だからなるべく早く寝て、温かいものを飲んで、身体を労わっています。
桐谷:それは本当に大事ですね。
僕は最初に言ったように、「想い」や「気持ち」ですね。それを愛と呼ぶ人もいると思います。そういう言葉で伝えられないことがすごく大事な気がしていて。
結局は言葉にならない部分をどれだけ言葉で表現できるか、どれだけ身体で体現できるかというところを僕たちはお芝居を通してやっているんですよね。だからこそ言葉にもならない部分がすごく大切で、それが伝われば良いなと思っていますし、その想いで生きてますね。
[取材・文/笹本千尋]