「大切なのは、脳と体をうまくコントロールすること」プロ生活26年の山本英臣選手(甲府)が語る、アジリティトレーニングの重要性
ヴァンフォーレ甲府の中心選手として、プロ26年のキャリアを築いている山本英臣選手。長きに渡ってトップレベルでプレーし続ける要因の一つが、アジリティ(敏捷性)の重要性を理解し、継続的に高め続けてきたことにあります。
山本選手は2010年に、ヴァンフォーレ甲府のコンディショニングコーチを務めた、谷真一郎氏に出会い、アジリティの向上がパフォーマンスアップに繋がることを認識。ラダーを中心としたアジリティトレーニングに、地道に取り組んできました。
そんな山本選手に「アジリティの重要性」と「ラダートレーニング」の必要性について、話をうかがいました。ジュニア世代からトッププロまで、大いに参考になる「アジリティ」についての考え方を紹介します!(文・鈴木智之)
サッカーに必要なアジリティとは?
アジリティとは、簡単に言うと「素早く動いたり、方向を変える能力」のことを言います。サッカーの試合中、瞬時の判断と素早い動きが求められる場面は、たくさんあります。
山本選手は、アジリティが大切な場面を、次のように説明します。
「相手に対応するときに、細かいステップが必要な場面や、相手に逆を取られて力が抜けた瞬間に、もう一回力を入れる必要がある場面です。このような場面において、体の自然な動きとして、できるようになることが大切です」
相手の動きに合わせて素早く対応したり、ボールを奪われそうになった時に、すぐに態勢を立て直す能力は、プレーの成否を分ける重要なポイントになります。
また、アジリティは体を素早く動かすだけの能力ではありません。山本選手が強調したのは、頭と体の回路をつなぐことの大切さです。
「もっとも大切なのは、脳と体をうまくコントロールすることです。自分が動きたいように、脳が指令を出してから、体に伝わるまでの速さを意識しています。自然に動かせることができることに加えて、伝達の部分もコントロールできるようになることが理想的だと考えています」
年を重ねても衰えない、アジリティの秘密
山本選手は26年ものキャリアを重ねる中で、年齢とともに、アジリティトレーニングの重要性が増してきたそうです。
「年齢が上がるとスピードや瞬発力が衰えてくるので、それらを維持できるようなトレーニングを欠かさずに行っています。長距離のスピード競争では、若い選手に勝てなくなってきましたが、短距離ではまだそこまで差が出ていないので、アジリティトレーニングは大切だと感じています」
年齢を重ねると、体力は落ちてくるもの。しかし、アジリティをしっかりと鍛えていれば、若い選手に負けずにプレーできることを、山本選手は証明しています。
「この年齢までプレーを続けられていること自体が、トレーニングの効果だと感じています」
この言葉は、継続することの大切さを物語っています。
アジリティを鍛える、ラダートレーニング
山本選手が実践しているのが「ラダートレーニング」です。地面に梯子(はしご)のような形のラダーを置いて、その上を様々なステップで動く練習方法です。
このトレーニングの成果を、山本選手は次のように説明してくれました。
「地面からのパワーをうまく受け取り、自分の動きに活かすことができるようになりました。このことを意識できるようになったのが、大きなポイントだと感じています」
継続的に練習することで、こんな効果も期待できるそうです。
「自分の思い通りに体を動かすことで筋力がつき、継続的な練習によって自然と体が望む動きができるようになる。その点が最大のメリットだと思います」
子どもたちにも役立つ!アジリティトレーニング
山本選手は、子どもたちにもアジリティトレーニングをおすすめしています。
「若いうちは、自分の体をうまくコントロールすることが難しいですが、このトレーニングを続けることで、徐々にできるようになります。姿勢が良くなるなど、サッカーだけでなく、様々な面でプラスに働くと考えています」
さらに、こう続けます。
「ボールを触りたい気持ちやサッカーそのものを楽しみたい気持ちはよく分かります。でも、このトレーニングを地道に続けることで、自分の体の変化に気づいたり、周りとの差が開いていくのを実感できるようになります。今は体が小さくても、大きくなるにつれて大きい相手にも勝てるようになる可能性があります」
サッカーの技術や戦術は日々進化していますが、その土台となるアジリティの重要性は変わりません。特に子どもの頃から、正しい動きを身につけることで、将来のスピードアップやパワーアップ、プレーの向上につながります。
サッカーが上手くなりたい、試合で活躍したい。そんな想いを持つ子どもたちにとって、「アジリティ」は大切な鍵になるかもしれません。山本選手の経験が、そのことを教えてくれています。
あなたも、今日からアジリティトレーニングを始めてみませんか? きっと、新しい自分との出会いがあるはずです!