【静岡の高校サッカー戦後史Vol.66】清水商業(現清水桜が丘)1989年度、全国総体で優勝!名門が初めて夏の王者になった日
【清水商⑪】総体初V後に落とし穴
※2011年3月〜11月に「静岡の高校サッカー 戦後の球跡」のタイトルで静岡新聞に掲載した連載を再掲しています。年齢等も掲載当時のままです。静岡サッカー応援アプリ「シズサカ」でまとめてご覧いただけます。
元号が平成に代わると、清水商の強さはさらに加速する。
1989年(平成元年)度のチームは、冬の新人大会を制して順調に滑り出した。直前の全国選手権で2度目の優勝を飾ったが、その分、新チームのスタートは遅れた。しかし、出遅れを感じさせずに勝ち抜き、実力の確かさを証明した。
清水東との総体予選決勝
全国総体県予選も確実に勝ち進み、決勝で清水東と顔を合わせた。試合は互いに譲らず、1−1で迎えた再延長前半1分、藤田俊哉(J千葉)がクリアボールをカットして切り込み、決勝点をたたき出した。
高知県で行われた8月の全国総体。前年度の全国選手権で初優勝したことから、対戦相手のマークは厳しかった。それでも、初戦で秋田経法大付(秋田、現・明桜)を2−0で下したのを皮切りに、安定した戦いぶりをみせ、習志野(千葉)宮崎工(宮崎)高槻南(大阪)にいずれも完封勝ちして4強入りした。
準決勝は南宇和(愛媛)と対戦し、2−0で退けた。南宇和は5カ月後の全国選手権で優勝する好チームだったとあって、「この一戦を乗り越えたのが大きかった」と監督の大滝雅良。
決勝・大宮東戦でゴールラッシュ
決勝の大宮東(埼玉)戦はエンジン全開。開始2分の山田隆裕(J横浜Mなどに所属)の先制ゴールを手始めに、田光仁重(静岡スバル)名波浩(J磐田アドバイザー)らが次々と決めて、6−2で圧勝。2年ぶり5度目の挑戦で、初めて夏の王座に就いた。冬の選手権に続いて夏を制し、指揮を執る大滝は「チームとして成長してきた」ことを感じていた。
ところが3カ月後、厳しい現実に直面する。選手権の県予選準決勝で、清水東に延長で0−0の末、PK負けしたのだ。「まさか、と思った。想定外だった」と主将を務めた藤田。
「高校生離れしたチーム」
全国総体と選手権県予選の間に、全日本ユースプレ大会があり、清水商は桐蔭学園(神奈川)国見(長崎)といった強豪に競り勝ち、優勝した。クラブと高校のチームが、同じ舞台で競い合う大会として注目を集める中で、清水商の強さは際立っていて、準決勝で対戦した桐蔭学園の李監督が「高校生離れしたチーム」と評したほどだった。
ところが、新たな戦いの場はスケジュールの過密度を増す結果にもなった。「息をつく暇がなかった。休みを与えてやっていれば」。全国選手権への道を断たれ、大滝はそんな思いを強くしたという。(敬称略)
1989年度全国総体決勝先発メンバー
GK
若林孝治
DF
大岩剛
岩崎泰之
薩川了洋
深沢潤史
MF
望月重良
村松弘章
名波浩
藤田俊哉
FW
山田隆裕
田光仁重