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【あがきたの魅力見つけ隊コラム・粟島浦村地域おこし協力隊OB、移住定住支援コーディネーター川原 燎さん】山の猟師から海の漁師へ。粟島を元気にするために活動する|粟島浦村

日刊にいがたWEBタウン情報

 

あがきた地域には、海、山、川の豊かな自然と、ほっとくつろげる温泉、お花見の名所や思いっきり遊べる公園など、魅力的で立ち寄ってみたくなるスポットがたくさんあります。

でも、それだけではありません。これらの素材を引き出す「ヒト」。
地域で活躍する「ヒト」のお話から、この地域のよさ・素晴らしさをお伝えします。

お話を聞いた人

粟島浦村地域おこし協力隊OB
移住定住支援コーディネーター
川原 燎さん

【プロフィール】
1991年、愛知県清須市生まれ。
高校卒業後、地元の工場に7年ほど勤務した後、愛知県犬山市へ転居。
居酒屋、介護施設、宅配業などでアルバイトをしながら生き方を模索するなか、狩猟に興味を抱き、狩猟免許を取得。
犬山市で有害鳥獣捕獲のボランティアを始める。
粟島浦村で有害鳥獣捕獲員を募集していることを知り、応募。2021年4月から3年間、地域おこし協力隊として粟島で活動を行なう。
現在も粟島で漁師や飲食店経営などをする傍ら、祭りや行事にも積極的に参加し、地元を盛り上げる活動を続けている。

狩猟の魅力と出合い、有害鳥獣捕獲専門員として粟島へ

―粟島へ移住されたきっかけを教えてください。

僕は、愛知県の清須市で生まれました。高校卒業後は地元の鉄工所で7年間働いた後、愛知県犬山市へ引っ越し、居酒屋や介護スタッフ、宅配業などのアルバイトを転々としていました。
やりたいことがなかなか見つからなくて、生き方を模索していた感じですね。

介護施設で働いた時は、現場の仕事のやり方が自分の理想とする介護のあり方とかけ離れていて失望したことを覚えています。
その後、高齢者のお宅にお弁当を届ける仕事に就いたのですが、こちらはおもしろかったですね。
お弁当を届ける際、安否確認を兼ねて利用者の方とお話をするんですが、そのちょっとした会話の時間が楽しかったです。

僕はもともと釣りが好きで、YouTubeで釣りの動画を観ることが多かったんですが、そのときに狩猟の動画も流れてくるようになり、すっかり狩猟の魅力にハマってしまいました。
そこで、狩猟免許を取得し、犬山市で有害鳥獣捕獲専門員として活動するようになったんです。
犬山市は山が多くて、イノシシやタヌキなんかが結構いるんですよ。

犬山市の山に入って罠を仕掛ける川原さん

ただ、有害鳥獣捕獲の仕事だけで生活できるわけではないので悩んでいたところ、IoTを使った鳥獣捕獲システムを開発しているベンチャー企業があることを知り、そこで働き始めました。

IoT というのは、「Internet of Things」の略で、従来インターネットに接続されていなかったさまざまなモノが、ネットワークを通じてサーバーやクラウドサービスに接続され、情報交換できるようになる仕組みです。
猟師の減少や高齢化によってシカやイノシシなどの野生鳥獣の被害が深刻化している問題を解決するため、猟に使う罠の作動状況を24時間監視し、有害鳥獣を捕獲すると即時にメールで通知してくれるシステムなどが開発されています。

こうしたシステムを利用することで、猟師がこれまで見回りにかけていた時間と労力を削減できるようになるわけですが、僕自身は、それまでずっと山で活動していたのに、急にデスクワークになったので、もともと電車や人混みが嫌いだったこともあって、だんだんストレスが溜まってきてしまって。

そんな頃、狩猟好きの集まるSNSのグループで、新潟県の粟島というところで有害鳥獣捕獲専門員を募集しているという情報を得て、それまで新潟を訪れたこともなく、粟島に関する知識もまったくなかったんですが、「これは行くしかない!」とすぐに応募しました。運よく採用していただけて、2021年4月、地域おこし協力隊として粟島へ移住しました。

―初めて粟島へ来たときの印象は?

犬山市からは夜行バスで新潟市まで来ました。
早朝に新潟駅に着いて、電車で村上市へ。村上駅から岩船港までは乗り合いタクシーを予約してあったんですが、時間が決まっているので駅でかなり待つことになってしまって、困りましたね。

愛知の感覚では、駅前なのだから喫茶店があって、朝から営業しているはずだと思い込んでいたのですが、どこにもないんですよね。
初めて降り立った土地で何もわからず、この時ばかりは途方にくれました。これが最初のカルチャーショックでしたね。

夜行バスと列車とフェリーを乗り継ぎ、犬山市から粟島へ移住

粟島の印象といえば、まあ、何もないなぁというのが正直なところです。
夜が本当に静かで驚きました。救急車の音や、バイクがブンブン走る騒音がまったく聞こえない、シーンとした夜の静けさに衝撃を受けたことを鮮明に覚えていますね。

粟島で釣りを楽しむ

さまざまな活動をしながら粟島で暮らし続ける

―地域おこし協力隊としての3年間はどのように過ごされたのですか?

地域おこし協力隊として粟島へ来て、最初の2年間は有害鳥獣捕獲専門員として活動していました。
実は、粟島の場合、鳥獣による農作物の被害や人的被害といった直接的な被害はあまりないんです。
ただ、人為的に持ち込まれたものなので駆除するという島の意向を受けて捕獲しています。
シカが多いですが、「畑に出たよ」という情報があると、駆けつけて罠をしかけたりしていました。

山に行きたくなったら山へ行き、シカの痕跡を探して、どこに罠を仕掛けようかと考える。
そんな日々がすごく楽しかったですね。
そういう暮らしがしたくて粟島へ来たわけですから、毎日が楽しくて充実していました。

狩猟については、単純に、自分が捕った動物を自分で食べる、というところに魅力を感じます。
命を奪うという行為には、毎回やるたびに心苦しさを感じますが、自分が命を奪ったのだからしっかり食べよう、という責任も感じます。
命の重さを感じて、感謝して、責任を持つということでしょうか。

美しい空と海は粟島の宝物

協力隊としての活動が3年目に入る頃、山の猟師から海の漁師へと転向し、海の漁に出るようになりました。
地域おこし協力隊は副業が認められていたので、地元の漁師の方に「手伝いに来たら」と声をかけていただいたのをきっかけに、アルバイトのようなかたちで通うようになりました。

海の漁師へとシフトしていったのは、漁師の担い手不足が粟島の最大の課題だということを目の当たりにして、お世話になった方々のために少しでも力になれればいいな、と思ったからです。

熟練された技術と抜群のチームワークで魚を水揚げする粟島定置網漁

―協力隊の任期を終えた後も、粟島で暮らされていますね。

粟島での暮らしも、もうすぐ5年目に入ります。
永住するとか、遠い先の未来のことまでは考えていませんが、今はここでの生活が気に入っているし、楽しいし、やりがいもあります。
いろいろな機会を与えていただいて、活動の幅も広がってきていますし、可能であれば、粟島でずっと暮らしていきたいですね。

―今はどんな活動をされているのですか?

おかげ様でいろいろなことをやらせていただくようになりました。
まず、個人漁師として、自分の船を出して釣りをしたり、素潜りでカキを捕ったり、モリで突いて魚を捕ったりしています。

また、粟島浦漁業協同組合の役員もやらせていただいています。
会議に出席して、島民の方々の意見を聞き、ひとつひとつ実行していくようにしています。

また、粟島定置網漁のお手伝いもさせていただいています。
船に乗って漁に参加したり、網を修理したり。漁は朝早くて大変な仕事ですが、楽しいですよ。大量の魚が捕れた時は圧巻で、興奮しますね。

魚が網の中で躍る光景は圧巻
水揚げされた新鮮な魚は、船上ですばやく締めて鮮度保持を行う

役場から業務委託を受けて、移住定住促進のサポートやコーディネートをする仕事もしています。
その一環として、相談窓口も兼ねた飲食店の経営も始めました。
千という店名で、朝は喫茶店、土・日曜の夜は居酒屋を営業していて、粟島では全然浸透しないんですけど、一応モーニングもやっています。

出身地の愛知県では定番のモーニングであるトーストとゆで卵のメニューを考えたんですが、仕入れが難しい面もあって、妻が焼いた手ごねパンを出しています。
毎週火曜の夕方にパンを販売していますが、口コミで広まり、おかげ様で今では行列ができるほどです。
粟島で行列ができている光景は初めて見ましたね。

地域に溶け込み、子どもたちとの交流も深める 

―お仕事以外で取り組まれていることは?

最近では、子どもたちと交流することを心がけています。
粟島には「しおかぜ留学」という制度があって、小学5年生から中学3年生までの子どもたちを粟島浦小中学校で受け入れています。
子どもたちは寮生活を送りながら、馬の世話をしたり、農作業や海の仕事のお手伝いをしたりして島の人たちとの交流を図っていますが、僕も学校行事に参加したり、食事会を開いたりして、子どもたちと積極的に話をするようになりました。

しおかぜ留学で島暮らしをする子どもたち

先日、公民館で一緒に食事をしたんですが、いろいろな話を聞くことができて楽しかったですよ。
「どうして粟島に来たの?」と聞いてみると、両親にすすめられて来たという子より、自分で選んで来たという子のほうが圧倒的に多かったですね。
テレビで粟島の牧場を紹介する番組を観て、「行きたいなぁ」と思って来たという子もいました。
島の子どもたちともっと話をしたいので、食事会をこれからも続けていきたいですね。

放課後には牧場で馬の世話をする

お祭りも好きです。
10月末に行なわれる八所神社の祭礼は、大漁祈願・海上安全・家内安全を祈願して行なわれるお祭りで、毎年楽しみにしています。
祭り前日の夜はほとんど徹夜で酒を飲んでいて、夜中の12時と3時に太鼓を叩きながら、「やれ、かか、起きれ」「おこわまんま、ふかせ」と言って集落内を歩き回るんですよ。
次の日は朝から片づけをして、午後は樽みこしを担いで、「わっしょい」と言いながら号令に従って走ったり、引っ張ったり、揺らしたりするんですが、徹夜明けなので、走ると気持ちが悪くなりますね。
それでも、地域の人たちにとっては一年に一度のストレス解消の場でもあると思いますし、大好きな祭りです。

―粟島の暮らしにすっかりなじんでいらっしゃるようですね。

どこの土地でもそうだと思いますが、粟島にも観光で訪れただけでは分からない魅力があって、そこに住んで、住民の方たちとしっかり関係性を築いていくと、こんなに温かい土地柄のところはないんだろうなと感じます。
島へ来たばかりの頃は、玄関のピンポンも押さずにガラッと戸を開けて入って来る方がいて、びっくりしました。
玄関を開けたら、野菜が置かれていたこともありますし。
都会では考えられないじゃないですか。
今はもう慣れましたけど、人によっては距離が近すぎるとか、監視されていると感じてしまうこともあると思いますが、僕は温かいなあと感じますね。

―今後の夢や目標は?

個人で漁師として活動しているとお話ししましたが、自分で捕った魚介類を売ったり、卸したりして、粟島の魚を島外に広める仕事をもっとしていきたいですね。

少し前に、粟島出身で今は新潟市で活動されている方と僕のふたりで、粟島で捕れた魚を契約する飲食店などに直送する「粟島鮮魚直送便」というサービスを行なうスタートアップ企業を立ち上げました。
お客様の希望をお聞きして、粟島で捕れた新鮮な魚を自分の目で選び、究極の血抜き法と呼ばれる「津本式」という方法できれいに下処理したものをお届けするという仕組みです。

漁業の担い手不足は粟島の最大の課題

お客様からも喜んでいただき、もっと続けて、範囲も広げていきたいと思うのですが、肝心の魚を捕って来る漁師が不足しています。
漁師がいなければ成り立たない事業ですが、その核になる部分が安定しません。
粟島には若い方もいるんですが、漁師をやりたがらないし、現役の漁師の方は高齢化が進み、自分の息子たちには継がせたくないと言います。
漁師は儲からない、汚い、きつい、というのが理由なんですかね?

僕自身も今は仕事をいくつも掛け持ちしている状況で、なかなか手が回らず、少しお休みをいただいていますが、この活動をなんとか再開して軌道に乗せ、新鮮な粟島の魚介類を全国にお届けできるようにするのが目標ですね。
粟島の漁業が活気づき、浜が元気になるように頑張りたいと思います。

「新鮮な粟島の魚のおいしさを島外の人にも知ってほしい」と話す

―粟島のおすすめスポットを教えてください。

僕自身がいちばん好きな場所は、船の上。もしくは水の中に潜っているときですが、おすすめスポットということでしたら、早朝の内浦の港でしょうか。
山から太陽が昇って来る様子がとても神秘的で、一日の始まりを感じさせてくれます。

漁船が並ぶ港も好きだという川原さん

逆に、西側の釜谷地区の方では、水平線に夕陽が沈んでいく様子を見ることができます。とても美しいですよ。

島の西側の釜谷地区では美しい夕陽を見られる

粟島観光協会

住所
粟島浦村字日ノ見山1491-8
電話番号
0254-55-2146
リンク
https://awa-isle.jp/

しおかぜ留学

リンク
https://www.vill.awashimaura.lg.jp/study-iland/study-iland-outline/

八所神社祭礼(内浦祭礼)

リンク
https://awashimaura-vill.note.jp/n/n9ab2c4b56e24

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