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文化財をひもとく 見えた!5つのストーリー 釜石の歴史文化を伝える展示、講演

かまいし情報ポータルサイト〜縁とらんす


 地域の先人たちが残し、暮らしの息づかいを想像させてくれる文化財。釜石市では保存はもちろん、活用することで、まちの魅力を再認識し、未来につなげる取り組みが進められている。昨夏、「釜石市文化財保存活用地域計画」が文化庁長官認定を受けたことによるもの。同計画には、釜石の歴史文化の特徴から見いだした「5つのストーリー」が存在し、それを伝える関連文化財の展示や専門家による記念講演が1、2日にあった。

 市、市教育委員会、市文化財保護審議会が主催。計画の周知や地域遺産を市全体で保存・活用し、地域づくりや観光に生かしていく機運を高ようと、20回目の有形文化財公開事業として行われた。また、2025年は、釜石市が甲子、唐丹、鵜住居、栗橋の4つの村と合併して70周年の節目の年。さらに、太平洋戦争終戦から80年、橋野鉄鉱山を含む「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録10周年も重なる。地域の歴史文化を振り返ることで、新しい未来の創造へつなげてもらう狙いもある。

 昨年7月に認定された同計画で、釜石は「豊かな自然に恵まれ、古くから人々の交流や文化が根づき、鉄を起点として近代化を遂げたまち」とする。郷土芸能やまつり、岩手県内陸部など域外との交流でにぎわう一方、戦争や津波による災禍といった苦難を乗り越えてきた歴史も存在。多種多様なものが関わり合い、融合し、脈々と歴史がつながっていることを示す数多くの文化財から5つの群を抽出し、それぞれストーリー性を持たせた。

TETTOで開かれた「かまいしの歴史文化 5つのストーリー展」


 それらの物語を紹介する展示は大町の市民ホールTETTOで2日間実施。▽三陸沿岸の豊かな自然とめぐみ▽海をわたり、浜をたどり、峠をこえる▽まつりと信仰で育まれる▽近代都市の形成▽逆境に耐え前進する―との5つの章立てに沿って、市指定文化財や地域に伝わる資料(個人所蔵)などをずらりと並べた。

 「南部藩平田村仙台領唐丹村境絵図」(南部、仙台両藩が境を改めて絵図面を取り替え、唐丹村側を書いたもの)、「大橋磁石岩絵図」(今では見ることができない大橋地区にあった磁石岩の形状などを記したもの)、「細布(せばぬの)」(南部藩領・鹿角地方の名産。この麻布には『錦木由来』と題した悲恋物語がつづられている)など、さまざまな視点から歴史、文化に触れることができるつくり。嘉永6(1853)年の三閉一揆の指導者の一人、三浦命助関連資料(獄中記など)、釜石艦砲射撃で実際に使用された砲弾などもあった。

他地域との盛んな交流を感じさせる展示コーナー


昔の街道や海路の様子を記した絵図に見入る来場者


「まつりや信仰」「逆境に耐え前進」などテーマごとに見せた


 来場者の目を引いたのは、「南部領惣絵図(複製)」(縦732センチ、横381センチ)と「仙臺藩領内圖(複製)」(縦516センチ、横841センチ)。正保年間(1644~48年)、元禄14(1701)年にそれぞれ作製されたものという。1市4村合併で現在の釜石市域が形づくられたのは昭和30(1955)年4月のこと。70年となるのを記念し、それぞれの絵図を所蔵する、もりおか歴史文化館、宮城県図書館の協力で複製をつくった。

 歴史をひもとくためには、2つの絵図が必要―。市域の大部分は南部藩領だが、南に位置する唐丹は仙台藩だったから。それぞれのぞいてみると、南部の図は宿駅や港間の距離、川幅、港口の状況などが記され、仙台のものには街道や海岸の様子に加え、地形の特色、樹木などの絵も描かれている。「異なる要素が関わり合い、融合」。計画に示された通りで、「物語がないわけない」と主催者たちは楽しそうに話していた。

南部藩、仙台藩の情報が記された2枚の絵図(複製)は迫力あり


仙台藩の絵図(左の写真)には「小白濱」、南部藩の絵図には「平田村」とある


 記念講演は2日に開催。同計画の策定に加わった盛岡大の熊谷常正名誉教授が明治時代以降の文化財保護の歩み、新しい動きを解説した。近年は美術品、建造物といった“点”ではなく、群や景観など地域環境や社会性を踏まえ“面”として捉えられているとし、「住民主体の地域づくり、観光資源として活用することが重要だ」と強調。一方、保存の視点では「守らなければなくなるものと考えるのであれば、まず守るべきは私たちの暮らし。生活を守ることで、文化財も守られる」と指摘した。

文化財の保存や活用について講演した盛岡大の熊谷常正名誉教授


 計画のキャッチコピー「歴史文化をいかし未来をつくるまち釜石」の実現に向け、助言。「製鉄を中心にしたストーリーは釜石ならでは。同じ歴史はなく、個性、独特な面を持ってつくられている。その代表が文化財。地域のプラスになるよう、新たな価値の発見や魅力の発信にいかしてほしい」と期待した。会場の釜石PITで、市民ら約70人が耳を傾けた。

文化財を生かした地域づくりに関心を持つ市民らが聴講した


 計画の認定は、国の補助事業で優先して採択されるなどの利点がある。釜石では、5つのストーリーに沿って「文化財保存活用区域」を設け、住民らと協力しながら歴史文化遺産を生かした取り組みを考えていく。「計画をつくって終わりではなく、まだ続きがある」と市文化振興課の手塚新太課長補佐。同審議会の藤原信孝会長も「地域の文化財を知って関心を持ってもらうことが保護につながる」とし、市民の目に触れる機会を増やしていく考えだ。

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