GRAPEVINE・田中和将さんが語る新アルバムへの思いと“関西弁”へのこだわり【独占取材】
2025年5月28日(水)、GRAPEVINEが通算19枚目となるアルバム『あのみちから遠くはなれて』をリリース。
キャンペーンで大阪を訪れたボーカル・ギターの田中和将さんに、アルバム制作への思いや、地元・関西へのこだわり、気になるグルメの話までたっぷりうかがいました。
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アルバムのタイトルに込めた“矜持”歌詞に“関西弁”を使うようになった理由デビュー前に過ごした思い出のライブハウス関西に来たら食べたいもの、ハマっているもの
アルバムのタイトルに込めた“矜持”
アルバム『あのみちから遠くはなれて』のテーマや、タイトルに込めた意味を教えてください。
いつも、アルバム収録曲がすべて決まってから最後にタイトルを付けるんです。今回は「道」という言葉を使っている曲がいくつかあって、俯瞰してみるとどの曲もどこかしら“道”について歌っている気がした。それで自然とこのタイトルになりました。
僕らも気づけばキャリアが長くなって、「ずいぶん遠いところまで来たな」という思いもあります。「誰も来れんところまで来たんちゃうかな」みたいな自負というか、矜持みたいなものを込めたタイトルですね。
全10曲とも田中さんの作詞ですが、とくに気に入っている曲は?
どれも思い入れがあるので選びにくいんですけど……例えば『天使ちゃん』はトーキングブルース形式といいますか、語り口調みたいなタイプの曲で、これまでやったことがなかったタイプ。チャレンジでしたけど、手応えがあってすごく気に入っています。
田中さんが生み出す歌詞は、時代性や誰かの生き様を感じさせる内容が印象に残ります。歌詞を紡ぐにあたり大切にされていることは?
「俯瞰すること」ですね。もちろん自分で書くので限界はあるんですけど、なるべく俯瞰したい。詩に感情を込めるのもわかりますけど、夜中に書いた恥ずかしい手紙みたいなのではあかんのですよ。あくまで創作物としておもしろく、完成度のあるものにしたいと常々思っています。
歌詞に“関西弁”を使うようになった理由
アルバムに収録されている『どあほう』など、最近は歌詞に関西弁も出てきますね。
そうなんですよ。僕はネイティブ関西弁スピーカーですし、せっかくなんでね。
ただ僕らがデビューした頃って、大阪から出てきたバンドが大阪出身を売りにする人が多かったんですよ。「わてら、大阪でっせ! オモロイでっせ!」みたいな(笑)。
“大阪のノリ”のようなものでしょうか(笑)
それがいややな、と思ってたんです。僕らはデビュー当時、よく「大阪っぽくないね」と言われたんですけど、しゃべったら関西弁ですし、別に隠していたわけじゃないんです。でも、まわりからの「大阪=オモロイ」という見られ方みたいなのがあったので、音楽に大阪のノリを出すのはちょっと……と思って、出したくなかったんです。
でも30年も経って、お笑いが全国に浸透して関西弁も一般的になり、大阪を売りにするバンドもいませんし。今なら「大阪=オモロイでっせ」というふうには見られないだろう、と。だったら関西弁や上方文化を音楽に自然に取り入れてええんちゃうか、と最近になって思えるようになりました。時代の変化ですよね。
デビュー前に過ごした思い出のライブハウス
新アルバムを携えて全国ツアーが始まりますが、関西のお客さんにはどんな印象がありますか?
今はどの会場も似た感じですけど、昔の大阪のファンの方々はけっこうクールやなと思ってました。
意外です! クールとは?
「いっちょ、どんなもんか見たろか」みたいな(笑)。実は東京もそうなんですよ。その点、北陸や広島あたりのお客さんはけっこうアツかったりするんですよ。東京・大阪のお客さんは、いろんなもんを見てきてはる、ということやと思うんですけども。
では、関西でとくに思い出に残っている場所ってありますか?
「umeda TRAD(旧梅田バナナホール)」はものすごく思い入れがあります。
新アルバムの初回限定盤だけに付属するDVD「LIVE AT UMEDA TRAD 2024」に、「umeda TRAD」でのライブ映像6曲が収録されているんですよね
そうですね。デビュー直前までお世話になっていたライブハウスで、ホームグラウンドとさせていただいていました。その頃、バナナホールはすでに大老舗で、ちょっと敷居の高いライブハウスだったので、出られるようになったときはすごくうれしかったです。
デビュー前、一所懸命にクオリティの高い曲を作り、曲がある程度たまってきた頃にライブをやるようになって、ようやくバナナホールでライブをやれるようになった頃には、僕らが送ったデモテープを聴いたレコード会社やプロダクションの方がバナナホールまで観に来てくださったんです。だから、僕らにとって「飛躍させてくれたライブハウス」でもあります。
関西に来たら食べたいもの、ハマっているもの
では、関西に来たら「これは食べておきたい!」というグルメはありますか?
うどんはやっぱり関西がいいですね。だしが違います。駅にある立ち食いうどんですらおいしいです。むしろ、高級でないぐらいのほうがいいです。
うどんにも、素うどん、きつねうどん、かすうどんとあるわけですが……
そうそう、かすうどんがはやり始めたのって、僕らが東京に出て行った後やと思うんですよ。発祥の地では昔から出しているでしょうけども、僕らが若い頃、大阪にいたときは、普通の町のうどん屋にはかすうどんってメニューになかった記憶なんですよね。で、僕らが東京に出て行った後に「なんや、かすうどんっていうのがあるらしいぞ」という話になって、「えっ!? 大阪におったのに、食ったことないやん」って。で、食べたら「うまいな、これは!」と思いました(笑)。
最後に、最近「あんなぁ」と話したくなったお話を教えてください!
6、7年前から江戸文化に興味を持って、当時の庶民の暮らしぶりや食文化が知りたくていろんな本や時代劇を見たり読んだりしてるんですけど、改めて上方文化もおもしろいなと思っています。
江戸時代の人らが飲んでいたお酒は「下り酒(くだりざけ)」と言いまして、上方から取り寄せた日本酒が多かったんです。江戸界隈ではあまり造られてなかったし、作ってもおいしい酒ができなかったそうで。樽廻船(たるかいせん)という専用の船で上方から運ぶんですが、そうすると江戸に着くまでに樽の中で熟成が進んで、さらにまろやかになって「上方の酒はいい酒だ」と飲まれていた、と。そういう歴史があるそうです。
すごく勉強になります
だから言えるのは、「あんなぁ、最近また酒が好きで……」ということです(笑)。
インタビュー中、「anna」が関西弁の「あんなぁ」にもちなんでいると伝えると、田中さんは「あんなぁ」を繰り返しながら、ネイティブの関西弁で気さくに話してくださいました。さらにサインにも「あんなぁ」と添えてくれるほど、終始フランクで温かな人柄が印象的でした。
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写真/ふかみちえ 文/中野純子