育休復帰の不安、どう乗り越える? 夫婦で取り組むステップバイステップ
——もうすぐ育休から復帰しますが、ブランクがあるので仕事についていけるか不安です。また、子供が熱を出してしまって早退しなければいけなくなったりするかもしれないのも、周りの目が不安です。復職後、仕事と家庭を両立する、職場に迷惑をかけず、うまくやっていく方法はありますか?
育休からの復帰を控えた方が直面しがちな今回のお悩み。実際、マイナビ転職の「育休に対する男女の意識差と実態調査(2024)」では、育休復帰時不安だったこととして、4割超のワーママが「休みや早退で周りに迷惑をかけるのでは」という不安を挙げています。
急な休みが頻発するかもしれない状況というのは、お子さんがいらっしゃる方に限ったことではありません。ご自身の病気やケガ、ご家族の介護など、さまざまなケースを想定しておくことは社会や企業の責任の責任でもあります。個人で気負わずに、いつか自分がフォローできる側になったときに恩を返そうという気持ちで、周囲の助けを借りながら乗り切っていきたいものです。
とはいえ、育休復帰を前に不安な気持ちが湧くのは当然のこと。
今までとまったく違う状況で取り組む仕事に対して、「本当にできるのだろうか」「周囲に迷惑をかけてしまうのではないか」など、いろいろな不安が沸くことでしょう。その不安を、少しでも建設的な準備に活かせるといいですよね。
今日はスムーズな復帰に向けて準備するべきことを、キャリア・コンサルタントの林碧先生に解説いただきます。
キャリア・コンサルタント
林 碧(はやし みどり)
株式会社キャリアイズ 代表取締役社長、国家資格キャリアコンサルタント・キャリアコンサルティング技能士2級、両立支援コーディネーター。
企業人事経験および個別相談対応経験を活かし就職・転職の相談からライフキャリアビジョン構築、育児・傷病など個別事情との両立まで、幅広い相談に対応。通算4000件以上の個別面談実績、年100件以上の研修登壇実績を保有。特に若年層のキャリア形成支援を得意とし、大学での登壇実績が豊富である他、企業向けの育成者研修や若手定着支援、人材コンサルティングも実施。日経Xwomanアンバサダー。小学生・保育園児の2児の母。
•復職への不安について、夫婦で共有できていますか?
•夫婦にとっての「共通の壁」として「復職」を扱うことを意識して。
•事前の準備で、緊急時にスムーズに資源を使える体制を作りましょう。
•家庭の事情での迷惑。“かけない”のではなく、“最小限”を“夫婦”で目指しましょう。
復職への不安について、夫婦で共有できていますか?育休復帰に際して感じたことを尋ねたアンケートの結果を見てみると、女性の場合「子の体調不良にて周囲に迷惑をかける不安」が最上位となっています。
次いで「体力的にきつい」「求められるだけの仕事ができるのか」「仕事についていけるのか」といった不安が「子供と離れていることが不安」を上回っていることが分かります。
この調査で注目したいのは「女性」本人と「男性から見た妻」のスコアの差。
例えば、「子の体調不良にて周囲に迷惑をかける不安」については、女性が41.0ポイントになっているのに対し、「男性から見た妻」は10.1ポイントに留まっています。復職を迎える女性が不安を感じていることに、パートナーの男性が気づけていないケースが多くあるようです。
また実際に育休を取った当事者のアンケートでは、男性の復職後の不安は「特にない」と答える方が多く、「子の体調不良対応」や「預け先」に関する不安は「子と離れる不安」よりも下位になっているという結果があります。このことから、子の対応を自分ごととして捉えきれていない男性が多いことが分かります。
周囲に迷惑をかけないためにも、夫婦で育児負荷を分担できるのが理想です。とはいえ、男性側に不安な気持ちが伝わっていない状態では、なかなか協力を得るのは難しいかもしれません。まずは夫婦で、復職に向けての不安を共有する時間を持てると良いですね。
夫婦にとっての「共通の壁」として「復職」を扱うことを意識して。その際、「春から新しい体制になるけど、いろいろと不安なことがあって。今のうちにできることはないか、一緒に考えて欲しい」と伝えることで、「知恵を貸して欲しい」「一緒に乗り越えていきたい」というスタンスを意識しましょう。
夫婦間で対立する構造になるのではなく、夫婦共通の乗り越えるべき壁として「復職」を捉え、現実的な対応策について、「チーム」として「作戦会議」をすることがポイントです。
「復職」を共通の課題として認識することで、夫が持つリソース(夫の会社の制度や夫自身の時間、夫の親族などの社会的資源)も、資源として活用できる状態を目指しましょう。現段階で感じる不安を伝え、できることを一緒に検討する中で、女性のリアルなタイムスケジュールを自分事として感じてもらう機会を作ることができます。さらに、自然な形で家事分担の期待値を調整できるだけでなく、役割の再分担などにつながることも多いです。
また、いい機会ですので、職場での置かれている状況についても、互いに確認しておくと良いでしょう。非協力的だと思っていた夫が、実は「昇進のかかる重要なプロジェクトの渦中であった」というケースや、「金銭的不安から、無理して仕事を増やそうとしていた」ということもあるようです。
意外と、夫婦間でも仕事の内情や相手が仕事上で置かれる立場、仕事にかける思いまでは知らないこともあります。フラットに互いの様子や仕事に対する思いも共有することで、近々の協力を得ることにつながらなくても、現状に納得感を持てる場合もあります。パートナーが忙しい場合、この対話の機会は有効に働きます。
事前の準備で、緊急時にスムーズに資源を使える体制を作りましょう。多くの方の不安のとおり、育児と仕事の両立において、「子の体調不良」への対応は避けては通れないものです。必ず生じるトラブルという前提で、どれだけの割合でその負荷を受け持つのか、対応を検討しておくといいでしょう。
体調不良によるお休みは、1日で済むケースは少なく、複数日に渡って影響が出るケースがほとんど。インフルエンザなどの感染症だと1週間以上になるケースも想定されます。その段階になってから各方面と調整を始めると対応が遅れ、職場への影響が大きくなるのは避けられません。事前に、当日の早退対応、翌日(多くの場合、早退翌日は欠席を求められます)の対応、複数日になった場合の対応と、パターン別に取るべき対応や、基本方針を検討しておきましょう。併せて連絡系統なども事前に準備しておくと良いですね。
アンケートでは、子供の看病休暇について、女性の利用して欲しい頻度と、実際に夫が利用した頻度で14ポイントもの差が生まれています。
保育園との窓口が女性になりやすいという事情もあり、都度調整する場合は女性に負荷が集まりやすい状況です。病児対応での休暇や在宅勤務の取得について、お互いの頻度も含めて、事前に夫婦間で意向の共有を進めておけるといいでしょう。
また、長期で休むことが難しく、夫婦間だけでは対応不可能だと感じる場合は、親族の協力を仰いでおくことや、社会資源として病児保育やベビーシッターの活用も検討しておきましょう。事前登録や面接が必要なケースも多いので、復職前から情報を収集し、必要な時にスムーズに利用できるように用意しておくことが大切です。
企業によってはこれらの資源の利用に対して、金銭的な支援を用意しているケースもありますが、男親が十分に理解できていないこともあるようです。看護看病の休暇の規定などについても理解が不十分なケースがあるため、前出の不安の共有と併せて、このあたりの情報収集を依頼しておくのも良いでしょう。
病児保育などの対応を検討する場合、ウイルスの流行時期は利用難度が上がるため、複数の社会資源情報を集めておくことも大切です。いずれにせよ、病気になってからではなく事前に備えておくことが、いざというとき女性に負荷をかけないためにも重要です。
家庭の事情での迷惑。“かけない”のではなく、“最小限”を“夫婦”で目指しましょう。事前の準備で急な状況変化を乗り越えやすくなるのは、職場での業務にも当てはまります。あらかじめ、急な休みは必ず発生するという前提で、その場合の代替対応者や、連絡フロー、引継ぎ方法などを整理しておけるといいですね。
復職時は「迷惑をかけない」を目指してしまいがちですが、夫婦で分担したとしても、育休復帰当初はさまざまなイレギュラーが生じるもの。夫婦で手分けをし、社会資源を存分に活用したとしても、突発的に休むことなく乗り越えるのは現実的に難しいかと思います。
休み以外の部分でも、低年齢の育児期はどうしても周囲に迷惑をかけてしまう機会が多くなりがちです。迷惑を「かけない」ようにと思って復職すると、次々に発生するトラブルの度、苦しくなってしまうかもしれません。ある程度の迷惑は「かけてしまう」と割り切って、その迷惑を「最小限」にして乗り越える方法を備えていくことをおすすめします。
かけてしまう迷惑を最小限にするにはどうしたらいいのか。少しでも気持ちよく、対応を変わってもらえるために日頃からできることはないか。周囲の負担を下げるために日頃から備えておけることはないか。といった視点で、準備に臨めるといいですね。
あらためて周囲を見渡してみてください。実は、職場に戻られる皆さんを、陰ながら心配してくれたり応援をしてくれたりする方が居るのではないでしょうか。ぜひ、その方々に味方になっていただき、大きな転機を上手に乗り越えてくださいね。多少の迷惑はかけてしまいますが、その分、落ち着いた頃、皆さんが誰かを助ける側に回れれば良いのではないかと思います。
春からの新生活、頑張ってください。陰ながら応援しています!
文:マイナビ転職編集部