リーディングでさまざまな文章に対応できる力をつけよう
大学入学共通テスト(以下、共通テスト)は2025 年1 月から新しい学習指導要領に対応した内容に改められます。
「外国語(英語)」は、どんなふうに変わるのか、気になっている中高生の皆さんも多いはず! そこで、大手進学予備校で英語を教える大岩秀樹先生に共通テストで出題される英語リーディングの特徴と、今日から取り入れたい学習法を解説してもらいます。いま求められている英語の力とは何か、どうすればその力が磨かれるのか。受験を考えている人はもちろん、英語を読む力を上げたいと思っている皆さんにも役立つノウハウをお届けします!
連載の第2回と第3回では、それぞれ語彙と文法の基礎を身につけることの大切さと、その習得法をお伝えしました。
今回から2回にわたって、共通テストの英語リーディングの英文をより速く正確に読みこなすための学び方についてお話しします。まずは、どんな問題が出題されるのか、その全体像から探ってみましょう。
多種多様な文章を、受験者が当事者になって読解する
共通テストの英語リーディングの特徴は、レビューやブログ、チラシなど身近なものから、科学的な記事や社会問題に関する論説文まで、多種多様な文章が登場することです。例えば2024年度は、学校で催されるイベントに関するチラシ、イベント参加者によるブログ、時間の知覚に関する英語の記事などが出題されました。図表や図解も多く用いられ、それら複数の情報を読み解いたり、本文には載っていない内容を推測したりするなど、問題もバラエティーに富んでいます。
さらに特徴的なのが、すべての大問の最初に読み手(受験者)の立場、場面、状況、目的が設定されていることです。例えば「あなたは交換留学生で、来週の日帰り旅行のために先生が用意した資料を読む」「あなたは授業で、記事とアンケート結果を読んで配布物を作る」「あなたは授業で論説文を読んで、その要約を発表するためのメモを作る」など、具体的に示されます。
2025年度の共通テスト試作問題(第A問・第B問)を例に見てみましょう。
第A問の場合、冒頭に次のような説明が書かれています。
あなた(You)が「スマートフォンを高校の授業で使うことの是非」についてのエッセーに取り組むという設定で、情報集めから、賛成・反対どちらを取るかの立場の決定、考えをまとめるところまで、そのプロセスが示されています。
第B問の場合はこのように書かれています。
あなた(You)が興味を持っている社会問題について書いたエッセーの下書きに、先生がアドバイスをし、あなたはそれをもとに修正作業をしているという設定です。
エッセー部分では修正した方がいい箇所に先生の指摘があり、具体的にそれをどう改善すべきなのかが問題になっています。例えば、問1は2つの文「買い物客の64%がクローゼットにすでにあるものについて考えない」と「買い物するときは、慎重に選択するべき」をつなげる文が必要だという先生のアドバイスをもとに、選択肢の中から適切な文を選ぶ問題です。正解として入るのは「結果として、人々は必要ではない、多くの似たような物を買ってしまう」という文です。前後を読んで、論理的な考え方ができるかどうかが問われています。
令和7年度共通テストの試作問題はこちらから
大学入試センターホームページ(https://www.dnc.ac.jp/)内に掲載
英語リーディングの問題を解くために必要な力とは
こうした特徴から、共通テストの英語リーディングは、自分が当事者となって出題される文章の状況や目的に応じた読み方ができる力を求められるといえます。
では、そんな力を磨くためには、どのような学習が必要でしょうか。まず心がけたいのが、普段から「英語をどのように使うのか」を意識することです。
先ほど例に挙げた試作問題の第A・B問の設定はいずれも、エッセーに取り組むことが目的です。実際、学校の授業でも同じような手順を踏んで情報を整理したり、自分の考えをまとめたりするのではないでしょうか。普段からこのような学習方法に取り組んでいれば本番のテストでも同じことをすればいいだけなので、そんなに苦にはならないはずです。
そのため、まずは学校の英語の授業に、主体的に取り組むことからはじめましょう。私も授業で、生徒にディスカッションなどのグループワークをしてもらうことがあります。英語を読んで音声を聞き、その内容の趣旨や、賛成・反対どちらの立場を取るか、その理由などをグループで話し合います。英文に触れることが出発点で、そこからそれをどう活用し、人に伝えるのか、「出口」を意識してもらいたいからです。
英語文章の基本を知って、さまざまな文章に対応できる力を
このような力と同様、共通テストの英文読解に求められるのが、早く正確に文章の趣旨をつかむスキルです。そこで、知っておきたいのが英語の文章のルールです。
英語の文章は基本的に段落に分けて構成されます。はじめの段落でその文章のテーマを述べ、段落ごとに具体例や根拠、主張が続き、終わりの段落で結論をまとめることが一般的です。ポイントは、1つの段落には、その段落のメッセージの核となる「トピックセンテンス」があるということです。各段落で、トピックセンテンスが示され、その前後に理由や具体例が述べられることが多いです。これを分かっていれば、その文章が何を主張しているのか、それに対する重要な情報がどこにあるのかを見つけやすくなります。
【英語文章の基本的な構成】
実は、試作問題第B 問のエッセーは、こうした英語の文章の典型であり、段落ごとの構成を学ぶのに最適なので、学習に活用してみてください。
こうした特徴を理解していれば、手紙、新聞、メール、ウェブサイトなど、多様な文章に対応できます。その上で、さまざまな文章にたくさん触れることで、読解力が磨かれていくはずです。
次回は、読む力を鍛えるために有効な多読(たくさん読むこと)の方法や、テスト本番で役立つ実践的な読み方についてお話しします。
大岩秀樹
東進ハイスクール・東進衛星予備校の英語科講師。基礎講座から難関大向け講座まで多数担当し、応用問題にもしっかり対応できる「本物の基礎力」にこだわる授業を行う。中学生・大学生向けの講座も多数担当しており、大学入試にとどまらない未来へつながる英語指導を心がけている。著書は50 冊以上。
■「NHKテキスト 中高生の基礎英語 in English 2025年1月号」より
■構成:稲田砂知子
■イラスト:柿崎こうこ
前回までの連載はこちら
第1回 中高生必見!「どんな問題? 共通テスト英語リーディングの特徴」
第2回 「使いこなせる単語」を増やそう! 語彙力の高め方
第3回 英語を使うための「ツール」を揃える 文法学習で読解力を上げよう