大井町はどう変わるか JR東日本が進める再開発のヴィジョン【コラム】
東京都品川区の大井町駅は、京浜東北線、東急大井町線、りんかい線が乗り入れる交通利便性の高い駅として知られています。2024年11月現在、JR東日本が駅を中心としたまちづくりを進めており、先月にまちの名称発表、今月17日には京浜東北線を部分運休して駅ホームの拡幅工事を実施するなど、2026年3月のまちびらきに向けた動きが見られます。
大井町駅周辺はどのように変わっていくのでしょうか。本記事では前半でJR東日本の開発計画を、後半でそのために必要だった工事の様子を取り上げます。
南東京エリアは「広域品川圏」
JR東日本は南東京エリアを「広域品川圏」と位置づけます。駅名でいえば浜松町~田町~高輪ゲートウェイ~品川~大井町が該当し、この周辺で事業パートナーや地域の方々と連携しながら「駅を中心としたまちづくり」を進めています。
念頭に置かれているのは羽田空港の国際化やリニア中央新幹線。JR東日本も「羽田空港アクセス線(仮称)」の整備を進めており、そう遠くない将来、南東京エリアは「東京の玄関口」として存在感を発揮していくことになるでしょう。
一翼を担うのが大井町。これまでは「大井町駅周辺広町地区開発」として、広域品川圏における「都市生活共創拠点」と位置づけられていました。JR東日本は先月8日、まちの名称を「OIMACHI TRACKS(大井町トラックス)」に決定したと発表。2026年3月の開業に向けて動いています。
「OIMACHI TRACKS」には何ができる?
「OIMACHI TRACKS」には何ができるのか。JR東日本の発表から一つ一つ拾っていきましょう。
まずJR大井町駅には新改札が設けられ、山手線車両基地を望むデッキにも接続する「STATION PLAZA」や2つのビルの間に位置する「CROSS PLAZA」などの広場を整備することで回遊性を確保します。
品川区の新庁舎計画地の隣には、発災時に広域避難場所として開放する約4,600㎡の広場「TRACKS PARK」を整備。大井町駅との間は歩行者デッキ「TRACKS STREET」で結びます。「TRACKS STREET」は約80店舗が出店するアウトモール型商業空間をつなぐ役目も果たします。
巨大な2棟のビルはそれぞれ「HOTEL & RESIDENCE TOWER」(ホテル・住宅棟)と「BUSINESS TOWER」(オフィス棟)。
ホテル・住宅棟には賃貸レジデンスのほか「メトロポリタンホテルズ」が入り、車両基地の壮観な車列を一望できるルーフトップバーを備えます。同タワーにはオークランド観光開発の新業態スパ・サウナも入り、ここからも壮観なトレインビューが楽しめるそうです。
オフィス棟では、高層部に1フロアあたり貸室面積約5,000㎡という高品質なオフィスを、低層部には地域の方々やオフィスワーカーの新しい働き方を支援するオフィスサポート機能をそれぞれ整備します。また、2階から5階にはTOHOシネマズの入居が決定しており、仕事だけでなく映画を楽しむために訪れる人も増えるでしょう。
大井町駅で拡幅工事を行った理由
前述の通り、大井町は交通利便性の高いまちです。「OIMACHI TRACKS」が2026年3月に開業すれば、駅利用者が増えることは想像に難くありません。
そこで、JR東日本は大井町駅の改良工事に着手。今月17日に京浜東北線品川~蒲田間の部分運休を行ったのはこのためでした。
当日は東京方面の線路(8~10号車付近)を最大80cm移動し、ホームを最大70cm拡幅しました。従事したのはJR社員・作業員あわせて約600名、重機はバックホウやタイタンパ、高所作業車などをあわせて10台使用。線路の左側は壁で、道路も走っているため、ものを置くスペースも十分ではありません。そのため、バラストを事前に袋詰めするなど工夫を凝らしたといいます。
今回の工事によって確保できる幅はおよそ1人分ですが、可能な限り広げることで使いやすい駅に作り変え、「OIMACHI TRACKS」の開業に備えます。今後も撤去したホームドアの再設置(2025年8月頃)などが続きますが、まずは大きな節目となる工事が終わり、再開発に向けて大きな一歩を踏み出したと言えるでしょう。
余談ですが、JR東日本 東京建設プロジェクトマネジメントオフィスが今回の工事の様子をX(SNS)で公開しています。動画は今後、JR東日本YouTu部(JR東日本建設部門公式)にて公開予定とのこと。
https://x.com/JREast_TokyoPMO/status/1858086821558989214
記事:一橋正浩