運命を変えるタイムトリップが繋ぐ愛の物語。もう一度、夫に恋をする『ファーストキス 1ST KISS』
『Mother』(10)、『Woman』(13)、「カルテット」(17)など数々の名作ドラマを生み出してきた脚本家・坂元裕二と、『ラストマイル』『グランメゾン・パリ』(24)の塚原あゆ子監督がタッグを組んだオリジナル劇場映画『ファーストキス 1ST KISS』。カンヌ国際映画祭脚本賞受賞後初めて坂元裕二が手がけた本作は、夫を事故で亡くした妻がタイムスリップし、若き日の夫と再び恋をする物語です。2月7日(金)の公開に先駆けて試写会に参加したSASARU movie編集部が映画の見どころをレビューします。
『ファーストキス 1ST KISS』の気になるストーリー
結婚して15年になるカンナ(松たか子)は、ある日、夫の駈(松村北斗)を事故で失ってしまいます。夫婦生活のなかでいつしか2人はすれ違ってしまい、長い倦怠期の末に離婚直前という状況でした。思ってもいなかった別れに、仕事をしつつもぼんやりと日々を過ごすカンナ。しかし、ある日高速道路を走っている最中に事件が起き、駈と思ってもいなかった再会を果たします。そこにいたのは、なんと出会った頃の駈。ひょんなことから駈と出会った15年前の夏にタイムトラベルしてしまったのです。カンナは若き日の駈を見て「やっぱりわたしはこの人が好きだ」と気が付きます。まだ夫にはなっていない駈と出会い、カンナは再び恋に落ちてしまいました。20代の駈と気持ちを重ね合わせていく40代のカンナ。いつしか事故死してしまう駈の未来を変えたいと願うようになります。過去が変われば未来も書き換えられることを知ったカンナは、何度も時間を行き来し奮闘する中である事を思い至ります。
「わたしたちは結婚して、15年後にあなたは死んだ…だったら答えは簡単」。駈への想いとともに、行き着いた答え。
わたしたちは出会わない。結婚しない。たとえ、もう二度と会えなくても… 。
坂元裕二ワールドをたっぷり味わえる、言葉遊びと会話劇
小気味の良い会話劇が繰り広げられる本作。コミカルなセリフはもちろん、クスリと笑ってしまうやり取りもあれば、思わず我が身を振り返ってしまうようなグサリと心に刺さる言葉も。
坂元裕二の脚本は、身近にあるものを作品に取り上げて、そこから人間性と物語を浮かび上がらせるスタイルが特徴。宅配便に起こされる朝、3年待ちのお取り寄せ、焦げた餃子、伴侶はいなくなったけれど物であふれている部屋。セリフでは言及されていなくても、目に映るディテールやシチュエーションから、言葉にできない、声にしない思いが滲み、心に沁みていきます。過去と未来、カンナと駈のやり取りを眺めていくと「こんな性格の人たちなのかな?」「今こんなことを考えいるのかも」と感じることができるはず。
また、作中には「柿ピー」や「トウモロコシ」「古代生物」など、物語のキーとなるアイテムがあらゆる場面で映し出されます。「恋愛感情と靴下の片方はいつかなくなります」という言葉通り、カンナにとっても本作にとっても、ひとつのポイントになっているのが靴下。たびたび画面に映る靴下がカンナにとって、また駈にとってどのような意味を持っているか、扱われているかをぜひ注目してみてください。2人の心の動きや変化がきっとわかるはず。
ラブストーリーの名手が紡ぐ最高傑作
何度も時間を行き来するタイムトラベルは、あくまでもカンナが人生に向き合うための手段のひとつ。「結婚とは?」「夫婦とは?」「愛する人と歩む人生とは?」人生で誰もが直面する、答えのない深くてシンプルな疑問。この物語は、それらの意味を問いかける心揺さぶる物語です。
1度、倦怠期を迎えながらも再び夫に恋をして夫の事故死を回避するために「神様どうか、私たちが結ばれませんように」と願う妻。彼らはどのような結末を選ぶのでしょうか? 映画のラストは観る人の立場によってきっと受け取り方が違うはず。
ぜひ大切な人と観て、思いを伝え合ってくださいね。
『ファーストキス 1ST KISS』の基本情報
■脚本:坂元裕二
■監督:塚原あゆ子
■出演:松たか子 松村北斗
吉岡里帆 森 七菜 YOU 竹原ピストル
松田大輔 和田雅成 鈴木慶一 神野三鈴
リリー・フランキー
■企画・プロデュース:山田兼司
■公開:2025年2月7日(金)
■公式サイト:https://1stkiss-movie.toho.co.jp/
■公式X(@1STKISSmovie):https://x.com/1STKISSmovie
■公式Instagram(1STKISSmovie):https://www.instagram.com/1stkissmovie/