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「素晴らしき遺産」新旧レクサス NX比較テスト Part2

PARCFERME

レクサスのラインナップの中でも、サイズや価格帯からか人気の高いNX。初代モデルを3年前に入手したJ.ハイドが、マイナーチェンジ後の最新モデルと比較した。Part1では、エクステリアとインテリアの印象、使い勝手を述べた。Part2では走りをリポートしたい。

今回は2日間借りることになり、撮影はもちろん日常使い的に自宅の周辺を走る状況も試みることができた。また自分以外にParcfermeスタッフも運転し、新旧モデルの助手席や運転席をも体験することが叶い、かなり充実した内容だった。
 
新型の「NX 350 Fスポーツ AWD」の車両重量はカタログ上は1790kg。これは今回比較した2015年「NX 200t Fスポーツ(FWD)」から50kgの増加である。しかし意外にも4WDモデル同士で比較すると、10kg減となる。

全長と全幅、全高がそれぞれ数cm大きくなっていながら、AWD同士では重量を減らすことに成功している。このことは、新型の設計や素材選びの巧さを反映している。

エンジン排気量は400ccアップし、その最高出力は279ps(205kW)/6000rpm、最大トルク43.8mkg(430Nm)/1700~3600rpmに達する。初代の8AR-FTSの最高出力、238ps(175kW)/4800~5600rpm、最大トルク35.7mkg(350Nm)/1650~4000rpmに比しておよそ17%増しで、スペックは少し前のスポーツカーにも匹敵する。

ところが、スペックでは明らかに上回る新型のエンジンだが、2400ccという排気量のせいなのか、重厚さやパワフル感ではカタログ値通りと感じる一方で、吹け上がり感では初代の方が軽快に感じる。初代は最大トルクの発生の回転数の幅も新型よりやや広く、熟成された6速ATの出来も良いことから、現在でも充分にパワフルなSUVと言える。

そんな初代を筆者は終始ECOモードで運転しているが、痛痒感はほとんどなく、逆にスポーツモードはやや過激に思えるほどだ。新型はその部分をさらに賢く補う8速ATなので、せっかく設けられた5種類のドライブモードもメーターのデザインが変わる以外に劇的な変化があるか? と言えば、ノーマルモードで充分なのではないかと思ってしまう。

以上のようにドライブトレーンには実際にあまり進化を感じなかったが、クルマの挙動自体はさらに洗練されている。車幅と共に僅かに広がったトレッドに加え、初代から変更されたタイヤサイズ(扁平率は55から50へ、ホイールサイズは18インチから20インチへ)によって、横剛性が強化され、総じてシャキッとした運転感覚となっている。

新型は高級SUVとしての静粛性の高さも相まって非常に大人びた印象であり、エクステリアの塊感とともに「良いクルマ」に乗っている感を日々味わえる。さらなる熟成が楽しみだ。

photo: J.ハイド 愛車の走行シーンを撮影する機会は滅多にないが、今回はParcfermeのスタッフがその機会を与えてくれた。初代のエクステリアは現在でも陳腐化していないと言ったら贔屓がすぎるだろうか。

洗練とパワフルのさらなる調和

そんな大人びた印象も、エンジンは279psという高出力ゆえ、一たび鞭を入れればAWDであることも相まって豪快に加速する。そしてそのパワフルさに見合った充分な操安性を備えており、コーナーが連続する場面でも重心の高さをあまり感じさせずに、気持ち良いドライビングを楽しめる。

またエンジンと共に8速ATも非常によく躾けられており、高速道路はもちろん、郊外のワインディングや流れの速い首都高などでも非常に扱いやすい。運転する側の意図を汲み取って、常に適切なギアを選んでくれる印象だ。

実際、カタログにも「刻々と変化する道路状況やドライバーの意思を、その操作から先読みし走行環境に応じたエンジン出力とギヤ段を適切に選べるような制御を採用しました」と明記されており、これはちょっと驚くような出来ばえである。

そのあたりの折り合いのつけ方は、流石にLEXUSブランドを牽引するポジションのクルマなのであろう。それに比べると、最近試乗した欧州製SUVのいくつかは、やや元気すぎるか、もしくは荒いとも感じる。

また、長距離になればなるほどその有り難みを実感するACCや、自動運転に一歩近づいた各ドライブアシスト類もそつなく作動する。これらによって運転時の疲労は最小限に抑えられるから、初代同様に長距離ツアラーとしてはボデイサイズも含め極めて良い選択肢と言える。

photo: J.ハイド 新型はそのカラーと相まって、さらに鋭さが増した印象だ。ヘッドライトの眼光のようなデザインもそれを加速させる。

意外なウィークポイント

新型NXは、スマホと連携したユーザーインターフェースや8速ATに7年の進化を感じさせる。とはいうものの、初代が時代遅れと感じるか? というとそんなことはない。ましてや、一連のドライブアシスト機能が世代交代した2018年以降の初代NX後期モデルとであれば、その差はさらに縮まるはずだ。

新型NXもデリバリーが進む前にマイナーチェンジした訳だから、本来は、初代もマイナーチェンジ後と比較するのがフェアだろう。中古車市場を見ても、価格は安くはないもののタマ数は豊富だ。

そして、ガソリン車に限って言えば、新型NX 350 Fスポーツにはやや心配とも言えるポイントがある。それは実用燃費の悪さだ。実際、受け取った当初、おそらくは満タン時の示された走行可能距離は400kmを切っていた。タンク容量は55Lであるから、つまりリッターあたり8kmを切る計算になる。

我々の前に広報車を借りたドライバーは、きっとサーキット走行でもしたのか、とスタッフ間で冗談を交わしていた。が、市街地モードのカタログ値は8.7km/Lであり、経験では実燃費はカタログの9割程度であるから、あながち8km/L前後であることは偶然ではない。

借用規定で満タン法は試せなかったものの10km/Lにはほど遠い数字であったことはレポートしておこう。ちなみに初代NX 200t Fスポーツはこれまで10km/Lを割ることはなかった。 8速ATまで採用しながら市街地では7年前の初代と比較して燃費が劣るとしたら、いかにパワフルとは言え、時代に逆行しているとも言えよう。クルマの出来が良いだけに、意外な点である。

photo: J.ハイド 光が複雑に変化する走行中も、初代のボディは新型以上にメタリックな部分が反射する。

新型、初代、それぞれの魅力

さて、いよいよ本長期テストもまとめに入ることとなる。

NXは、初代も新型も日本の高級車ブランドとして世界的に定着しつつあるレクサスの主力車種だ。初代は販売数もさることながら、輸入車嗜好の強い自動車専門媒体でも高く評価される存在であった。

そのため7年という期間を経ながら、同じ主査、加藤武明氏によって開発が進められた。

そういったことを踏まえても、初代の特に前期型から乗り換えるには、安全面での進化から極めて適切なクルマだと言えよう。燃費の観点からは、ハイブリッドを選ぶことを勧めたい一方で、諸般の事情からガソリン車を選ばざるを得ないとしたら、変速マナーの出来が良い250も含めて検討するのがおすすめだ。

また初代後期型のオーナーの場合、走行距離が行きすぎていないのであれば、しばし年次改良を待ってみるのも良いだろう。エクステリア、安全性を含めてクルマの本質では古臭さは感じないはずだ。

筆者のNX200t Fスポーツは初代前期型だが、入手した際の走行距離が少なく、サブトランクを含めた広大なラゲッジスペースが得難いことなど、多くの美点を備えているため、しばし初代との逢瀬を重ねる予定である。

以上を持ってレクサスNX200t Fスポーツの、ロングタームテストの幕引きとしよう。ご協力、ご指導いただいた田中編集長はじめParcfermeのスタッフ、読者の皆様には、ただただ感謝するばかりである。

photo: J.ハイド NXは初代と新型、今の時点でどちらを手に入れても後悔が少ない選択だと言えるだろう。それだけに新型Fスポーツのガソリン車の燃費は意外であった。

J.ハイド
写真家、ライター、ドローンパイロット。広告会社で大手企業の担当をする傍ら、ドローンなど最新の撮影技術を学ぶ。
現在は、フリーランスとしてFORMULA EでFIA公認フォトグラファーとして撮影を重ねる一方、
イタリアPHOTO VOGUE、スウェーデン1x.com に認定され、ポートレート作品が掲載されている。
新車の発表があるとディーラーで試乗も楽しむ一般目線の車好き。ランチア、アウディ、BMW、ボルボなど9台を乗り継ぎ、
2022年初代レクサスNX 200tに乗り換える。ニコンとライカのミラーレス機を駆使してココロが動く写真を追求している。

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