秋の自然を体感!五葉山トレッキング 森林ガイドが紹介 釜石の魅力「再発見して」
秋の行楽期、山肌に紅葉が映える魅力的な季節-。釜石、大船渡、住田の3市町にまたがる三陸沿岸最高峰・五葉山(標高1351メートル)では6日、地元の森林インストラクターがガイドを務める初心者向けのトレッキングツアーがあった。色づく木々や草花、落葉で見えてくる樹形など秋ならではの楽しみ方を体感しながら、ゆっくり時間をかけて散策。残念ながら山頂は霧が濃く、絶景は“おあずけ”となったが、「次こそは」と楽しみを残す。
釜石ならではの体験プログラムを集めた「Meetup Kamaishi 2024」の秋季企画の一つ。釜石市が主催し、観光地域づくり法人かまいしDMCが実施主体として事務局を担う。この日は事務局スタッフを含め、8人が参加。20~70代と年代は幅広い。
案内役は、森林インストラクターの石塚勇太さん(34)。釜石・甲子町を拠点に林業やそれに関わるものづくり、研修の受け入れなどを手がけ、人と森、自然とをつなげている。趣味を仕事にというほどの「樹木好き」と自負。知識だけでなく、そうした楽しみが伝わるガイドで引き込む。
「久しぶりの…」という人が多い今回の山登りは、両市境の赤坂峠登山口がスタート地点。人の手が入って歩きやすいよう整備されており、初心者にも優しいコースだ。石塚さんは入山前に、岩手県立自然公園、日本三百名山、花の百名山に選定される五葉山の歴史を説明。藩政時代、伊達藩にとって重要な山だったことから「御用山」と言われていたことが由来とされるが、のちに、山で多く見られるゴヨウマツ(五葉松)にちなんでその名で呼ばれるようになったという。
そして、“本領”の植生解説。「賽(さい)の河原」と名がついた地がある3合目までに見られるのはコナラ、クリ、サクラ、ケヤキなど暖温帯~冷温帯の木々で、そこから9合目にある避難小屋「石楠花(しゃくなげ)荘」までにはミズナラ、ブナ、ダケカンバ、アオモリトドマツなど冷温帯、亜高山帯の植物が混生する。御用山の由来とされる、「伊達藩直轄の火縄産地」として守られたヒノキアスナロも自生。そして、山頂に向かう道では亜高山帯植物のハイマツ、コケモモ、ガンコウランなど低木が根を張る。
「五葉山はおもしろい山」と石塚さん。山頂に向かって歩を進めると、どんどん樹種が変わり、気温の変化が感じられるからだという。高木が生い茂る道を抜けると視界が開ける場所があったり、「同じ木でも小柄なのは風が強いから成長できない。自然のおもしろさ」とニヤリ。固有種「ゴヨウザンヨウラク」(ツツジ科ツツジ属)の存在も特徴とするが、今回は花期ではないことから説明だけにとどめた。
秋の気配を感じる登山道には落ち葉も多い。やわらかく歩きやすいようだが、終始曇り空のこの日は、植物には水滴が付着していたこともあり、道が湿っていて滑りそうになることも。それでも参加者は、季節を勘違いしたのか花開くツツジや秋咲きの草花フデリンドウを見つけたり、シラカバとダケカンバの特徴や違いを確認したり…さまざま寄り道を楽しみながら3時間かけて頂上に立った。
山頂は真っ白な霧に包まれ、四方の景色を望むことはできなかったが、参加者は達成感を味わった。食事休憩後、さらなる解説を耳にしながら2時間ほどかけて下山。「歩きながら植物観察したり、参加者と話しながら登れて楽しかった」「故郷の山だから、一度は登りたかった。60代にして初登頂。山の楽しみ方はさまざまあると知った」「天気のいい日に来たい」などと感想を伝え合った。
最高齢の参加者は、平田の西野徳和さん(77)。昨年11月に愛知県名古屋市から移住し、ラグビーの試合観戦や三陸鉄道での旅、囲碁などで釜石生活を楽しむ。春から毎週のようにこの山に通っていて、5合目辺りでUターンして「しゃくなげの湯っこ五葉温泉」(大船渡)に寄るのが、お決まりのコース。健康維持のためトレーニングとして続ける考えで、「緑いっぱいで、海もあり、釜石はいいよ」と笑みを広げた。
「天気のいい日に登りに来て。山頂からの景色がすごくいい」と石塚さん。一度では紹介しきれないほど多くの植物が見られることもあり、「本当の良さを体感してほしい。山の魅力を広く伝えたい」と望む。
かまいしDMCの平澤果鈴さん(24)は「釜石の隠された魅力を発見、知って楽しんでもらえたら。案内役となる、ある分野に詳しい人(鉄人)に会いに来てほしい」と呼びかける。ミートアップ関連プログラムとして「くるみ細工体験」(参加費あり)を用意。11月16日(土曜)の午前9時半~、会場は鵜住居町の根浜キャンプ場レストハウスで、講師となる鉄人は石塚さん。問い合わせは同レストハウス(電話0193-27-5455)へ。