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Cava Regia Beach Clubにて開催されたマリネッラの創業110周年パーティー

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2024年6月15日にソレント半島ヴィーコ・エクエンセのCava Regia Beach Clubにて開催されたマリネッラの創業110周年パーティーには、1200名を超えるゲストが訪れた。

文/藤田雄宏

さまざまなことがイタリア語でいうところの”Non funziona bene(機能不全)”で、街の中心部は常にカオス。

決して治安がいいとは言えないナポリに長く滞在していると、

普段より気を張っているからか、ナポリ愛を公言している僕でも、ふと疲れを感じることがある。

いっぽうで、“Vedi Napoli e poi muori(ナポリを見て死ね)”という言葉のとおり、

ナポリには、神から授かった美しい大地と海、ヴェズーヴィオが織りなす美しい景観、

さらには唯一無二の芸術と食、そして世界一美味しいカッフェの文化がある。

そして、人懐っこく陽気なキャラクターのナポレターノたちがいる。

それらを天秤にかけたとき、やはり、いちばん愛する都市はナポリ、となるのである。

そんなこんなでナポリに魅了され、長年ナポリに通い続けてきた今、

ナポリ人のハートに宿るいくつかの偉大な存在を知るに至った。

それは、マラドーナであり、ピーノ・ダニエーレであり、喜劇王トトであり、

そしてネクタイの名店マリネッラである。

ナポリ人はマリネッラのことを、彼らの”Anima(魂)”であると表現する。

4世代にわたってナポリとともに歩み続けているマリネッラは、

ナポリ人の”Anima”の代弁者であり、だから彼らの誇りであるのだ。

今年、創業110周年を迎えたマリネッラは、6月15日、

ヴィーコ・エクエンセにあるCava Regia Beach Clubにて、

110周年の感謝の気持ちをもって盛大な記念パーティーを催した。

断崖を降り立った、かつて採石場だったそこには、

マリネッラの小紋をあしらったナポリを象徴する色”Bluette”のパラソルが並び、

ドレスコードである「その”Bluette”のタッチを採り入れた1200名を超えるとびっきりエレガントなゲストたち、

ミシュランの星付きシェフの素晴らしい料理が華を添えた。

まさしくマリネッラの強烈なNapoletanità(ナポリ性、ナポリらしさ)の発露である。

そこから見えてきた、新しい時代のマリネッラの新たな物語。

マリネッラのパーティーが行われたCava Regia Beach Clubの桟橋にて。当日のドレスコードの色は、ナポリを象徴するこちらの”Bluette(ややダークトーンのブルー)”のタッチ。

イスキア島を舞台にしたヴァカンスムービー『太陽の下の18歳』(1962年)は、ナポリの港「モーロ・ベヴェレッロ」からイスキアに向かう小型船の出港シーンとともに始まる。イスキア島を訪れる際に初めてモーロ・ベヴェレッロから乗船した際、映画の冒頭シーンを思い浮かべながら、期待で胸が高鳴ったのを今でもはっきり覚えている。

モーロ・ベヴェレッロの港には、あれから何十回通ったことか。プローチダ島へはナポリ湾の魚が水揚げされる漁港町ポッツオーリの港から乗船することが多いものの、カプリ島、イスキア島に行く際はいつもモーロ・ベヴェレッロからだ。クルマで行けるソレント、アマルフィ、ポジターノにも、モーロ・ベヴェレッロからの船で向かうと、そこからエンタテインメントだ。ここから大型フェリーでパレルモにも渡ったし、いつか訪れてみたいポンツァ島やエオーリエ諸島への船も出港している、ここぞナポリの海の玄関口である。

そう、ナポリの港といえば、メルジェッリーナもあるけれど、巨大なモーロ・ベヴェレッロなのである。この港にロベルト・サヴィアーノのノンフィクション小説『死都ゴモラ』的な裏社会の闇が潜んでいるかはさておき、夏の日中は、南イタリアきっての人気リゾート地へ向かう”ヴァカンスモード”の人たちでごった返し、彼らは皆笑顔と開放感に溢れ、自分もまた、そこにいる際はその中のひとりとして同様にいつも心が躍ってしまうのだ。

マリネッラの創業110周年記念パーティーに向け、

チャーター船で出発!

2024年6月15日17時のモーロ・ベヴェレッロは、マリネッラがチャーターした船を待つたくさんの人たちで溢れかえり、人々の顔はいつにも増して笑顔とワクワクに満ちていた。

そして何より美しかったのは、”Bluette(ややダークトーンのブルー)”のドレスコードのもとに招待されたゲストたちの装いだ。地中海的なパーティーに慣れ親しんでいるだろう彼らは、皆自然体の装いで臨んでいる。このこなれた感じがなんともいえず心地いい。

チャーター船が出発するモーロ・ベヴェレッロに集まったマリネッラの110周年記念パーティーのゲストたち。

ふと、ちょうど10年前に開催された、マリネッラの創業100周年記念パーティーのことを思い出した。サンカルロ劇場での式典から始まり、王宮の庭園に移動して着席の晩餐会へと続いたのだが、マリネッラが感謝の気持ちを表現しただけでなく、ナポリ市が、そしてイタリアの国が、マリネッラの“100周年”を祝福したひとときは、私が人生で最も衝撃を受けたイベントだった。自身の贅沢を好まないマウリッツィオ・マリネッラ氏が、マリネッラを支えてくれた人たちに100年ぶんの感謝をかたちにしたもので、これほど気持ちが伝わる慈愛に満ちたパーティーは、人生で初めてだった。僕はマリネッラというファミリーのホスピタリティに、ただただ感動させられたのだった。

2014年に催されたマリネッラ創業100周年のイベントは、サンカルロ劇場での式典から始まった。

続いて王宮の庭園に移動し、着席の晩餐会へ。

それにしても不思議なブランドだ。3代目オーナーのマウリッツィオ・マリネッラ氏は毎朝6時過ぎに店を開け、用事がない限りは20㎡の店内からかたときも離れず接客している。その店はナポリの皆から愛され、常に客で賑わっており、世界中の国家元首、政治家、VIPを顧客を顧客にもつ。イタリアの文化遺産といっても過言ではないくらいに皆から愛されている店でありながら、マウリッツィオ氏は驕ることなくいつも控えめなのだ。でも、メゾンブランドでも実現し得ないような歴史的なパーティーを感謝の気持ちをたっぷり込めて開催し、それをナポリ中が、さらにはイタリアが国をあげて祝福してしまうのだから、やはり、恐るべし!マリネッラなのである。

会場となるのは今をときめくビーチクラブ

そして今回向かう先は、ヴィーコ・エクエンセのCava Regia Beach Clubだ。一体どんなパーティーになるのだろう?

彼らのウェブサイトのトップページには、“Benvenuti a Cava Regia, un inno alla Mediterraneità(地中海性への頌歌、カヴァ・レージアへようこそ)”とある。

近年、ロロ・ピアーナやドルチェ&ガッバーナ、ミッソーニなどがビーチクラブを舞台にイベントやパーティーを開催したり、ブランドの世界を表現しているが、老舗のマリネッラが、今もっとも旬な流れであるビーチクラブを舞台に選んだのは、単なる偶然ではないような気がする。

3代目マウリッツィオ・マリネッラ氏自らが店頭で常にさまざまな最新情報をキャッチしてきた結果だろうか。今をときめくCava Regia Beach Clubがその舞台に選ばれるべくして選ばれたのである。

マリネッラを愛し、マリネッラと深い繋がりのあるゲストという共通項で結ばれている僕たちは、船の上から既に妙な一体感があった。乗客全員がマリネッラのゲストなのだから自然なことなのかもしれないが、畏まっていた100周年パーティーとはまた異なるカジュアルな一体感が、潮風同様に僕にはとても心地よく、これから始まるパーティーへの期待は高まるばかりだった。

Cava Regia Beach Clubはもともと採石場だったところで、ヴィーコ・エクエンセの断崖が近づいてくると、その下にあるビーチクラブが視界に入ってきた。マリネッラの小紋があしらわれた”Bluette”のパラソルとデッキチェア、同じく”Bluette”のドレスコードに沿った紳士・淑女の姿が、そびえ立つ岩壁とのコントラストで美しく映える。先着組が楽しんでいる姿が見え、海上にまで音楽が聞こえてくる。

会場となるCava Regia Beach Clubを接岸直前の船上から。

いざ到着! なんというナポリ感! 胸が高鳴ってくる。

こんな小型ボートで接岸するのもナポリならでは。

日本では言葉だけが独り歩きしてしまっている”Azzuro e Marrone(アッズーロ エ マッローネ)とは、イタリアの雄大な景観のこの色彩を表しているのだとよくわかる。

素晴らしい料理をふるまったのは、ヴィーコ・エクエンセのミシュラン一つ星 Antica Osteria Nonna Rosaのペッペ・グイーダ シェフのチーム。

地中海を感じさせるMare(海)とTerra(大地)の恵み。シンプルを極めたおいしさ!

スパークリングワイン、白、赤はマリネッラのラベルでふるまわれた。ちなみにワインは110本限定で、マリネッラとより深い繋がりのある限られた顧客たちに配られたという。

ワインついでに余談だが、チューダーとマリネッラのコラボレーションによる「Black Bay 36」が110本限定生産されたという。こちらはマリネッラが長年お世話になっている顧客や友人たちが購入できたという。シリアルナンバー入りで、「001」はマウリッツィオ・マリネッラ氏に、「110」はアレサンドロ・マリネッラ氏に渡った。

さて、せっかくなので、マリネッラのパーティーに訪れたゲストたちの素敵な装いを見てみよう。

“Bluette”のドレスコードに則ったゲストの装いが、ビーチクラブにとてもよく映える。実に地中海的だ。

マリネッラのパートナーを務めるSDIの創業者、藤枝大嗣氏。

2008年、ナポリに留学し、マリネッラの本店で販売スタッフとして働いていた経験をもつSDI社長の藤枝惠太氏。

これからマリネッラとの新たなプロジェクトを始動する、SUN/kakkeのデザイナーである尾崎雄飛氏。

レーシングドライバーのジュリアーノ・アレジ氏。

MSCクルーズジャパンの社長、オリヴィエロ・モレリ氏(右)。

今回のパーティーは、深夜1時過ぎまで盛り上がった。

マリネッラを愛する仲間という意識が強いからか、声をかけた人たちは皆とてもフランクに接してくれ、皆がこの場を楽しみ、マリネッラを祝福する、そんなグルーヴ感がこの場にはあった。

そして、マリネッラが、初代エウジェニオ・マリネッラの代から続くホスピタリティに満ちたブランドであることをまた再認識することとなった。

世代を超えて、皆が深夜までビーチクラブでの一夜を楽しむ。これはナポリだからこそ実現し得たことで、4代目のアレッサンドロ・マリネッラ氏は、伝統を受け継ぎながら、新しいマリネッラを創造する。

それを、ここにいる皆が応援し、温かく見守る。ナポリのリヴィエラ ディ キアイア287番地に構えるマリネッラの本店は、変わらずナポリ人の”Anima(魂)”であり続ける。そう強く思った一夜となった。

マリネッラの4代目オーナー、29歳のアレッサンドロ・マリネッラ氏。

マリネッラ親子の2ショットはいつ見ても心が温まる。マウリッツィオ氏の父で2代目のルイージは、80を過ぎてなお店に顔を出していたという。4代目のアレッサンドロ氏にバトンを渡したマウリッツィオ氏も、まだまだ現役を続けていくだろうし、そもそもナポリの店は彼の身体の一部と化しているのだから、離れようがないだろう。

しかし、マリネッラほど皆から愛され、小さく巨大なファミリーブランドは、果たして世界にほかにあるだろうか?

4代目アレッサンドロ・マリネッラ氏の舵取りが、楽しみで仕方がない。

アフターアワーズより転載。

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