春の川で見つけた一掴みの宝石 <シロウオ>が登ってくる季節が到来
三寒四温という言葉がぴったりの春の訪れを感じる時期になってきました。3月には水温も上昇し始め、魚たちにとっては“産卵モード”の季節となります。
さて、「春告魚」と聞くと、どのような魚を想像するでしょうか。筆者は「シロウオ」が採れる時期が巡ってくると、春だなぁと感じます。
<シロウオ>に会える春
シロウオとはハゼの仲間で、日本沿岸や朝鮮半島南部の海域から河口域に生息しています。
体は半透明で全長は5センチほどになります。まるで稚魚のように見えますが、これが成魚です。
河川で孵化したシロウオの仔魚は海に下り、沿岸域で成長します。成魚は2月中旬から5月にかけて産卵のために河川に遡上してきます。
伝統漁法である四ツ手網などで漁獲 寿命は1年
この時期のシロウオは伝統漁法である四ツ手網などで漁獲されており、その様子は日本各地で春の風物詩として親しまれています。
漁獲されたシロウオは「踊り食い」をはじめ、「かき揚げ」や「卵とじ」でも食されます。
シロウオは年魚で、つまりは寿命が1年です。産卵後にメスは死亡しますが、オスは卵が孵化するのを見届けるそうです。
名前も見た目も似ている「シラウオ」という魚もいますが、こちらはキュウリウオの仲間でシロウオとは全く別の種類の魚です。
宝石のような魚との出逢いを求めて日本海へ!
今回、この宝石のような魚「シロウオ」との出逢いを求めて、日本海へ向かいました。筆者が過去にシロウオを採ったことのあるエリアです。
予め漁業権の有無を問い合わせて、手網での採集が可能であることを確認しています。
ウェーダー履いていざ入水!
以前と比べると川の地形が変わっていたのですが、果たしてシロウオはいるのでしょうか。
急流の中に網を通すと……「入った!」
せっかく採れた貴重なシロウオなので、じっくり観察してみましょう。
体は飴色で、眼球や浮袋、背骨まで透けて見えました。
ハゼらしい顔と印象的な飴色 踊り食いを体験
網を入れる度に10匹ほど入る状況で、同行した採集友達もこれには驚いていました。
過去にもシロウオを採ったことはありましたが、ここまでの数は初めてです(数匹以外は全てリリースしました)。
確かに顔はハゼらしい雰囲気がありますね。飴色が際立っているように感じます。
カジカもシロウオを食べている?
一緒に採れたカジカはシロウオを食べているのか太っている個体が多く、手掴みでも取れる浅場まで寄ってきていました。
小さくても一生懸命に河川を遡上するシロウオの姿には、心を打たれます。身近にある自然と生命の神秘に五感で触れる1日となりました。
皆さんも春の河川に宝石探しに行ってみてはいかがでしょうか。
(サカナトライター:爲國甲登)
参考文献
松井誠一「シロウオの生態と増殖に関する研究
九州大学農学部1985年 NAID 500000023705
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑「シロウオ」