西地区優勝が目前に迫る琉球ゴールデンキングス、接戦で驚異の”ベンチポイント60”を記録…「自信と信頼」積み重ね層の厚さが増す
プロバスケットボールBリーグ西地区首位の琉球ゴールデンキングスが快進撃を続けている。 16日には同地区3位の大阪エヴェッサとアウェー戦を行い、98ー81で勝利して連勝を12に伸ばした。通算成績は40勝13敗。同地区2位の島根スサノオマジックとのゲーム差は「6」で、西地区優勝に向けたマジックナンバーは「2」となった。 最短で、19日にあるホームの長崎ヴェルカ戦で2シーズンぶりの地区優勝が決まる。 大阪戦で最大の勝因となったのは、先発メンバー以外の得点数を示す「ベンチポイント」が、総得点の半分をゆうに超える60点に上ったことである。筆者の確認では、この数字は今シーズン最多の数字だ。 今シーズンのこれまでの最多記録は3月1日のアウェー長崎戦における56点。他にも40点台の試合は何度かあったが、大勝した試合も多く、ベンチメンバーのプレータイムが伸びたことも要因に挙げられる。 大阪戦のように中盤まで接戦が続いていた展開でベンチメンバーが強烈な存在感を示したことは、レギュラーシーズン最終盤にきて層の厚さが増してきた証左の一つと言えるだろう。
伊藤達哉と荒川颯がDF強度上げる
岸本隆一、小野寺祥太、脇真大、ヴィック・ロー、ジャック・クーリーの5人でスタートした大阪戦。出だしこそ点の取り合いで一進一退となったが、激しいディフェンスと素早いトランジションを武器とする大阪に少しずつ流れが傾いていく。第2Qには一時二桁まで差が開いた。 流れを押し返す立役者となったのは、伊藤達哉と荒川颯のガードコンビだ。 共にコートに立った時間帯にチーム全体のディフェンス強度を上げ、素早いトランジションからのイージースコアも増加。アレックス・カーク、ケヴェ・アルマ、ローの「3BIG」もリバウンドやゴール下の得点で存在感を発揮した。じわじわと追い上げて2点リードで前半を折り返すと、後半はスタートのメンバーも攻守で躍動感が増し、一気に突き離した。 ベンチメンバーのスタッツはアルマが22得点13リバウンドのダブルダブルを記録。要所で得点を重ねた荒川はキャリアハイの16得点、カークは12得点7リバウンド、伊藤は3得点4アシスト1スティールだった。
CSに向けても意義ある一戦に
試合後、桶谷大ヘッドコーチ(HC)も試合の総括でセカンドユニットの活躍を勝因に挙げた。 「最初のメンバーの波長が合っていなくてズルズルと行ってしまいましたが、セカンドユニットが勢いをもたらしてくれました。3BIGも機能し、後半に入ると隆一やヴィックといったシューターに当たりが出て、セカンドユニットもいい流れのままゲームを進めてくれました。しんどい出だしの試合をカムバックして、耐えてよく勝ち取った1勝だと思います」 レギュラーシーズンは残り7試合。最終盤の戦いに差し掛かる中、チームの変化を強く実感している。 半年近く前の開幕当初は「選手個人の自信だけでなく、まわりの選手に対する信頼も薄い状態でスタートしました」と振り返る。昨シーズンから多くの主力が退団したため、それも当然だろう。ただ、現在は「仲間に対する信頼が出てきているし、みんながやるべき役割をきっちりとこなしていることが連勝につながっていると思います」と手応えを語る。 中盤戦までは、悪いを出だしを引きずってそのまま流れを変えられずに敗れたり、大量リードを奪った時にプレーが荒くなり、終盤に一気に詰め寄られたりする試合も散見されていた。しかし、今は展開に限らず遂行力が低下する場面が少ない。指揮官も「雰囲気が切れなくなった。カムバックできるメンタリティが付いてきたと思います」と評価する。 CSに向け、ディフェンス強度の高い大阪に勝ち切れたことも意義が大きいと見る。 「今日みたいなヒリヒリした試合展開から得るものは多いですし、勝ちながらこういうゲームができたことはすごく大きいです。CSは点差が開くゲームがあまりないので、我慢強くやっていくのは大切だと思っています」
アルマ「大きなことを成し遂げられると…」
選手の試合後コメントにも、今のチーム状態に対する自信と手応えの大きさが見て取れる。 12連勝の中で、5回目の二桁得点となった荒川は「出だしが悪い中でもうまく立て直すことができました。成功するためには多くの失敗が必要だと思っていますが、今このチームに負ける必要はないと思っています。しっかり勝てたことはとても大きかったです」と歯切れ良く言った。 19、20の両日に沖縄サントリーアリーナである長崎戦で連勝すれば、西地区2位の島根の結果に関わらず、地区優勝が決まる。それを念頭に「(ファンが)一緒に戦ってもらえれば、必ずあの目標を全員でつかみ取れると思うので、引き続き応援をよろしくお願いいたします」と声援を呼び掛けた。 さらに、「これからも連勝をさらに伸ばしていきたい」と語ったアルマの締めくくりの言葉には、地区優勝の先にある、さらに大きな栄冠も見据えていることがうかがえた。 「今シーズンは、このチームで何か大きなことを成し遂げられると信じています」 初優勝を遂げた2022-23シーズンも終盤でベンチメンバーの存在感が増し、千葉ジェッツを相手に2連勝を飾ったファイナルでは2戦ともベンチポイントが45点に達したキングス。圧巻の層の厚さがもたらしたあの強さを覚えているファンであれば、今のチーム状況に対しては、いやがうえにも期待感が高まっているはずだ。