Yahoo! JAPAN

小越勇輝、岡 幸二郎ら出演 劇場で体験するのがなにより楽しい作品『甦夢 THEATRE「黄金仮面―masque doré―」』オフィシャル稽古レポートが公開

SPICE

『甦夢 THEATRE「黄金仮面―masque doré―」』

2024年10月11日(金) 天王洲 銀河劇場にて開幕を迎える『甦夢 THEATRE「黄金仮面―masque doré―」』。この度、稽古開始直後から熱が高まっている黄金仮面カンパニーよりオフィシャル稽古レポートが届いたので紹介する。

『黄金仮面』は、江戸川乱歩の代表作の一つである長編推理小説。長年にわたって愛されるこの作品は、2011年に演劇ユニット「*pnish*」のプロデュース公演として舞台化されるなど様々なメディアミックスが行われてきた。江戸川乱歩生誕130年を迎える今年、名作ミステリーに歌を織り交ぜ、令和に甦る新たな『黄金仮面』を上演する。

※稽古レポートにはネタバレ要素が含まれます。

オフィシャル稽古レポート

稽古初日から約3週間経ち開幕も迫ってきた頃、この日の稽古は、途中途中で止めながらも冒頭から通していくというもの。これまでシーンごとの稽古は重ねてきたが、通すのは初めての箇所もあり、ここで動線や衣裳替えのタイミングも確認するという。開始前はがやがやと和やかな雰囲気。そこに山崎が「ほな、よろしいですか」と声をかけるとスーッと空気が整った。

『甦夢 THEATRE「黄金仮面―masque doré―」』稽古場より         (C)Nelke Planning co.ltd.

(C)Nelke Planning co.ltd.

冒頭からもう印象的だった。小林少年(佐藤永典)と7人の少年たち(石田 隼、川﨑優作、吉澤 翼、納谷 健、福島海太、増本 尚、平松來馬)がつくりあげる作品世界は濃厚で、一気に引き込まれる。これから起きることがなんなのかを、台詞を使わずに突き付けるような表現にゾワリと期待が高められた。そのままオープニング。迫力があるのにテンポもいいというちょっと不思議な音楽と共に、物語が動き始める。

(C)Nelke Planning co.ltd.

一章の通しが終わる度にすぐ衣裳やセットの動かし方の確認が始まる。例えば石田ら7人はあらゆる役を担っており、各場面に合わせて少年や女中、大衆、警備員、時には美術品にもなる。それゆえに動きや段取りも多く、ちゃんと間に合うか、間に合わない場合はどうすれば間に合うようにできるかなどのアイデアを、俳優たちも積極的に出していた。山崎はそれを踏まえ、例えばエプロンとカチューシャならエプロンを先に付けるとか、その中でも最初に台詞を言うメンバーはこうやるとか、細かい部分まで整理していく。この日はたくさんの確認事項があったが、山崎はキャストの提案に「ありがとう」と言いながら、丁寧に整えていた。本当に地道な積み重ねだが、ミステリーの膨大な情報量がすんなりと届くのはこの部分も大きいのだと実感した。

(C)Nelke Planning co.ltd.

(C)Nelke Planning co.ltd.

『黄金仮面』は江戸川乱歩による明智小五郎シリーズのひとつで、1930年代に書かれた長編推理小説。鮮やかな手口で宝物を盗み出す黄金仮面(岡 幸二郎)を私立探偵・明智小五郎(小越勇輝)が追い、そこに黄金仮面を捕えたい波越警部(井阪郁巳)や、黄金仮面と愛し合う不二子(小林由佳)、黄金仮面に宝を奪われた鷲尾侯爵(高橋良輔)らの想いが交錯していくというものだ。

(C)Nelke Planning co.ltd.

(C)Nelke Planning co.ltd.

岡の黄金仮面はこれぞといような色気や憂いがあり、歌声も別格、そりゃ不二子も夢中になるわと一目で納得させる魅力が漂う。ヒールではあるが劇中で子供たちが「黄金仮面ごっこ」をするシーンもあり、そういう存在になり得る説得力があった。小越の明智は、最初から超堂々としている割に黄金仮面を取り逃したりするため思わずツッコミたくなるのだが、物語が進むごとにその聡明さ、そして追い込まれるほど輝く変態性がくっきりと浮かび上がってくるのがおもしろい。とはいえ親子ほど年齢が離れたふたり。この若き名探偵がこの大盗賊に勝てる? と頭に浮かぶが、明智は時々ひょいっとそれをやる。それも魔法のようにそうなるのではなく、力学を使いこなすような飛び越え方を見せてくれる。そこになにかとても人間臭さを感じるとともに、展開への期待も高められた。

(C)Nelke Planning co.ltd.

明智と黄金仮面を囲む面々も一人一人が魅力的だ。波越警部は、この作品で唯一と言える真っ直ぐな人物像を井阪がつくっていた。波越警部の熱さと明智への信頼や友情は親しみを作り出し、波越警部が喜べばこちらも嬉しいし、波越警部が悔しがればこちらも悔しいというようなかわいさがあった。不二子は小林の高い身体能力がてき面。不二子の凛とした姿からは想像もつかない身体表現が、黄金仮面と愛し合うほど一筋縄ではいかない女性であることの説得力に直結していた。高橋の鷲尾侯爵は、他の人たちと比べると“普通の人”に近い人物。だからこそ鷲尾公爵がどう振る舞うかでこの事件の印象が変わり、この人次第でどうにでも転がりそうな予感があった。ちなみに高橋は鷲尾侯爵以外の役も演じ、途中“高橋良輔劇場”のような場面があり必見。

(C)Nelke Planning co.ltd.

(C)Nelke Planning co.ltd.

(C)Nelke Planning co.ltd.

石田、川﨑、吉澤、納谷、福島、増本、平松の7人の役者は、この作品において重要な存在。黄金仮面は神出鬼没なので舞台もあちこち変わっていくのだが、彼らがその風景を一つ一つ立ち上げている。その場所その場所に合わせてあらゆる役を演じるのだが、その一つ一つを楽しそうに、挑戦もしながら演じる姿が、観ているこちらの心を湧きたたせてくれた。佐藤演じる小林少年は原作の『黄金仮面』には登場しないが、明智小五郎シリーズの別作品で明智の弟子として、子供向けの「少年探偵団」シリーズでは明智の補佐として登場する人物である。本作では主に語り部の位置にいるのだが、状況がカオスになっていくほど存在感を増していき、不思議と彼が明智に何をもたらす人物なのかを察することができる。そしていつの間にか「この人が明智の助手をしている姿を観たい」と活躍を期待していた。

(C)Nelke Planning co.ltd.

(C)Nelke Planning co.ltd.

『黄金仮面』のような名作ミステリーは、既に観客に結末やトリックを知られていることが多い。それはミステリーとして重要な要素を奪われていることになるのだが、それでも十分に楽しめる舞台作品だった。少年たちのように一人の役者が何役も演じたり、黄金仮面のように同じ人物がいくつもの顔を見せたり、明智が空気を掌握していく過程を体感したり、黄金仮面がそこにいるだけで怖かったり……演劇の醍醐味が目白押し。さらに油井誠志による音楽は作品世界をより深め、そのまま作品の魅力になっていた。劇場で体験するのがなにより楽しい作品になりそうなので、ぜひ期待して開幕を待っていてほしい。

(C)Nelke Planning co.ltd.

(C)Nelke Planning co.ltd.

撮影=大塚浩史・星野絵美、文=中川實穂

【関連記事】

おすすめの記事

新着記事

  1. 「ブルーアーカイブ」の700機ドローンショー&花火映像のライブ配信を公開

    DRONE
  2. 上島珈琲店で、福袋『HAPPY BAG 2025』が数量限定で販売されるみたい。「神戸タータン」を使ったオリジナルバッグ付き

    神戸ジャーナル
  3. 【京都】15,000点以上の北欧アイテムが集うクリスマスマーケット開催

    PrettyOnline
  4. 【銀座】のランチでこのコスパ&満足感!?野菜ブッフェ付き1700円パスタセットを徹底レポ

    ウレぴあ総研
  5. コーデが垢抜ける!11月のうちに買っておきたい「トップス」5選

    4yuuu
  6. RAY 内山結愛、新宿MARZにてバンドブッキングイベント6ヵ月連続開催決定!

    Pop’n’Roll
  7. 【離婚まで100日のプリン】カオスな部屋と夫のため息【離婚100日前】

    ウレぴあ総研
  8. パラドゥ"桜お守りリップ"に秋を感じる限定色&定番色の限定パッケージが登場♡おみくじ気分も味わえる桜の印も。

    東京バーゲンマニア
  9. 年に一度は掃除したい「換気口」のカンタン掃除方法。「ずっと掃除してない…」「埃まみれだった!」

    saita
  10. 「なんと東京→大阪間を3日」驚異的なスピードで走った飛脚たち 〜価格は140万円

    草の実堂