【鎌倉 イベントレポ】鎌倉アップデートアカデミア Vol.2 - 若い世代の実践者と「声を上げる」を考える <後編>
2025年3月1日(土)に鎌倉市議会議員の藤本あさこさんによる「鎌倉アップデートチャレンジ」と長谷のオルタナティヴスペース「古民家ゆりいか」の共催イベント「鎌倉アップデートアカデミアvol.2」が開催されました。
3回目となる今回のテーマは「若い世代の実践者と”声を上げる”を考える」。
助産師で性教育youtuberのシオリーヌさんとアクティビストの能條桃子さんをゲストスピーカーに迎え、中学生を含めた幅広い年齢層の参加者と登壇者が「若い世代が声をあげること」について話し合った様子を前編と後編に分けてお伝えします。
前編の記事はこちらから。
ケアラーを立候補者に想定していない選挙制度
後半は、現在の選挙制度の課題から議論がスタート。
「女性の人生を歩みながら政治家を目指すことはあまりにもハードルが高い。例えば子育てしながら毎日駅前に立つことは現実的ではない。女性が政治に参加しにくい今の選挙制度が変わる可能性はあるのか」とシオリーヌさんは女性が選挙に参加することの難しさを挙げ、選挙制度について問います。
画像出典:湘南人
「現在の日本の選挙制度は、候補者にケア責任を負っている人を想定していない。全ての生活面を他人に任せられる人が政治のトップに立ちやすく、時間のコミットができない人は『やる気がない』と見られてしまう。デンマークに留学して感じたのは、日本と比べて若者が政治参加できる環境が整っていること。20歳前の市議会議員がいるのは、制度の違いが大きい」と、能條さんは日本の選挙制度の仕組みに問題があると指摘。
日本における選挙制度の問題点
続けて能條さんは「ヨーロッパでは、市長選挙がなく、市議会選挙で多数会派のトップが市長になる仕組みが一般的で、日本のように候補者個人が名前を売る必要がないため選挙戦の負担が軽減される。日本で無所属の議員が多いことは良い文化とも言えるが、政党が組織として政治を進めることで女性や若い人が立候補しやすくなる面もある」と組織での政治によるメリットに言及します。
画像出典:湘南人
「本来は同じ思いを持つ人々がチームになって社会変革に取り組むのが理想的な姿。現在の政党は何十年も前の課題を基に作られており、現代に合わせた多様な視点で政党が作り変えられるべき。特にケアの問題などは既存の政党に取り上げられることがほとんどない」と藤本さん。また、女性にとって負担の大きい選挙制度の中でも社会を変えたいという思いで挑戦する人は多いのに、日本では政治家が「売り込んでいる」と誤解されやすいとも指摘。
また、「日本では市民と政治の距離が遠く、政治に関わるとコミュニティから排除されることもある。本来は市民一人ひとりが政治に主体的に関わり、アメリカのように支持する政治家や政策を公に示せる文化が必要。それぞれが生きやすさについて考えることで社会は変わるはず」と述べました。
画像出典:湘南人
政治をもっと身近に
「藤本さんが言うように市民が政治家を遠ざけている問題も大きい。政治についてもっと日常的に話せるようになってほしいし、政治家も実は普通の人間だと実感できる機会があると良い。子育て経験のある人や課題意識を持った人たちが立候補しているが、選挙制度自体がもっとそうした人たちに優しくなるべき」とシオリーヌさんは選挙制度をもっと公平で支援的なものにするべきと主張。
能條さんは「デンマークでは政治家は身近な存在であり、学校にも来るのが当たり前だった。選挙時には全候補者の話を聞くことが宿題として出されることもある。日本でも小さいうちから政治の話をすることが習慣化されてほしい」と続けます。
「政治の話がタブー化されてきた日本では、政治について人と話す経験が圧倒的に少ない」とシオリーヌさんが指摘すると、それぞれのコミュニティに政治担当、発言担当の人がいたら状況が変わるのでないか、という意見が。
「各コミュニティに『ものを言える担当』がいると良い。発言する人は色々と言われることもあるが、発言する役割を担う人は重要。女性もそうしたポジションを取るべきだし、もっと挑戦してほしい」と藤本さん。
チーム制にすることで政治家の負担が減る
画像出典:湘南人
能條さんは「政治活動は個人で全てこなすのは本当に大変。チームで分担し、長期的に取り組めるのがベスト」と言います。
藤本さんは候補者が1人で名前を売り、資金・心身・時間まで削って活動している現状を問題視。
「特に女性議員が1期で辞めるケースが多く、政治家を続けるのはハードルが高い。政治をチーム制にして負担を分担できる仕組みがあれば継続しやすくなる。既存政党が強い理由に、同じ属性や境遇の人々で絆を強化している点があるが、女性はそういう社会的なチームや組織を作るのが難しく、少しでも違うと対立が生まれることがある。」
画像出典:湘南人
誹謗中傷から発信者を守るために
顔や名前を出して活動することで、本人にさまざまな声が届く現代。中には誹謗中傷なども多いそう。
シオリーヌさんは「自分のような若い女性が性教育を発信していく上で、特に最初は誹謗中傷やセクハラコメントがひどかった。今はDMを受け取らないようにして、コメントをチェックするスタッフを配置するなど対策を取っている。メンタルを守るために自分の目に触れさせないということも大事。議員さんは窓口を閉じることができないため、事前チェックをするスタッフを置く必要性を感じる」と発信者を守るためにもチームで活動することの必要性を強調しました。
参加者の感想
今回もさまざまな意見が飛び交いあっという間に終盤を迎えた鎌倉アップデートアカデミア。最後に参加者一人ひとりがそれぞれの考えを述べました。
画像出典:湘南人
「藤本さんに会うまでは政治に対して距離感があったが、傍聴を通じて政治が自分事だと実感するようになった。専業主婦として社会との距離を感じていた中で、自分の困りごとを代弁してくれる政治家の姿を見て考えが変わり、中学生の娘にも社会問題を自分ごととして捉えてほしいと思っている。まずはママ友会などの小さなコミュニティで社会について発言しやすい場を作っていきたい。」
「マンションの自治会の役員をやろうか迷っていたが、今日皆さんの話を聞いて挑戦してみようと思った。」
「私は今中学2年生だけど、同年代の子は社会や政治にほとんど関心がない。今日デンマークの話を聞いて政治が身近にある教育はとても良いと思った。」
画像出典:湘南人
「話を聞きながら、自分も日々男尊女卑を感じているという事を再確認した。男女では賃金や役割について偏りがあり、子どもの人権も蔑ろにされているのを感じる。そういう話もまたじっくりこの場でしたい。」
さまざまな意見を聞いた藤本さんは「最初に社会の問題を指摘すると、意識が高いと冷笑されることが多いが、実際には多くの人が生きづらさを抱えている。旗を立て続けることで、共感し声を上げる人が増えていく。冷笑に負けず立ち上がる人を増やしていくことが重要。」と話し、イベントは幕を閉じました。
画像出典:湘南人
声をあげること、意思決定の場に多様性が増えていくことの大切さを再認識できた今回のイベント。
社会に対して多くの気づきを与えてくれる鎌倉アップデートアカデミアの挑戦はこれからも続きます。
鎌倉アップデートアカデミア Vol.2
開催日時
2025年3月1日 10:30〜12:00
開催場所
古民家ゆりいか
住所:〒248-0016 神奈川県鎌倉市長谷2丁目15−14
駐車場:なし ※近隣にコインパーキングあり
参加費
3,000円(税込)ワンドリンク付き
主催
鎌倉アップデートチャレンジ
古民家ゆりいか