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【鎌倉 イベントレポ】鎌倉アップデートアカデミア Vol.2 - 若い世代の実践者と「声を上げる」を考える <前編>

湘南人

画像出典:湘南人

2025年3月1日(土)、鎌倉市議会議員の藤本あさこさんによる「鎌倉アップデートチャレンジ」とオルタナティヴスペース「古民家ゆりいか」の共催イベント「鎌倉アップデートアカデミアvol.2『若い世代の実践者と”声を上げる”を考える』」が古民家ゆりいかにて開催されました。

江ノ電長谷駅から徒歩約2分の場所にあり、鎌倉のソーシャルハブの役割を担っている古民家ゆりいか。オーナーの平野さんはドキュメンタリー映画監督で、社会や民主主義に鎌倉市民が関わるための活動をしたいとの思いから藤本さんと当イベントを立ち上げました。

画像出典:湘南人

Vol.0とvol.1も大好評に終わったイベントの第3回。助産師で性教育youtuberのシオリーヌさんとアクティビストの能條桃子さんをゲストスピーカーに迎え、中学生を含めた幅広い年齢層の参加者と登壇者が「若い世代が声をあげること」について話し合った様子を前編と後編に分けてお伝えします。

鎌倉アップデートアカデミアとは

会の初めに藤本さんは「生きていく中で日々感じていた違和感に加え、子どもを持ったことで社会の構造を変えたいという思いが生まれて最終的に社会のルールメイクに辿り着いた」と自身の活動の発端について説明。

「政治を政治家だけに任せるのではなく、市民全体で取り組むことで社会変革があるという思いを持って鎌倉市議をやりながら鎌倉アップデート・アカデミアを立ち上げた。ここに来てくれる人は民主主義に深くコミットメントしている人が多いはずなので、この熱量を伝播していく人になってほしい」と参加者に伝えました。

画像出典:湘南人 藤本あさこさん

政治分野におけるジェンダーギャップ

藤本さんが政治を志すきっかけにもなった「ジェンダー」「フェミニズムアクション」。

「今回は若者世代の声を上げることを通じて民主主義を考えるという趣旨だが、その根底にはジェンダーの問題が深く関わっている。この4年間鎌倉市政を見てきて、理事者席に座るほとんどが年上の男性で、政策決定のプロセスにジェンダーの偏りがあると気づいた。自分が女性として支援がない状態で意見を伝えるのが難しい構造が政策のアンバランスさを生んでいる」とジェンダーの課題について話す藤本さんを参加者たちは神妙な面持ちで見つめます。

それぞれの活動の経緯

若者に正しい性の情報を伝えるための活動をしている助産師/性教育youtuberのシオリーヌさんはオンラインでの参加。

画像出典:湘南人 シオリーヌさん

総合病院の助産師として働く中で性教育の大切さを実感し、2017年頃から性教育の講演活動を開始したシオリーヌさん。 性に関する社会のタブー感や制度的な課題を感じ、性教育のハードルを下げるために2019年からYouTubeで情報発信を始めました。
また、2022年に自身が出産を経験したことで産後の大変さを経験。 NPO法人コハグを立ち上げ産後ケアの支援活動も行っています。

画像出典:湘南人 能條桃子さん

若者の政治参加を促す団体「NO YOUTH NO JAPAN」と政治分野のジェンダー平等を目指す「FIFTYS PROJECT」を立ち上げたアクティビストの能條桃子さんは子どもの頃から政治に関心があったと振り返ります。

「自分は18歳から投票できることを楽しみにしていたが、大学で周囲の友人が選挙に関心を持っていないことを知って驚いた。教育の役割が十分に果たせていないとも感じた。」
日本の投票率の低さに疑問を抱く中で、北欧の投票率が高い理由をテーマにしたNPOのイベントに参加。北欧では若者の投票率が80%以上なことを知り、より深く学ぶために2019年にデンマークへ留学。

画像出典:湘南人

デンマークでは20代が当たり前のように投票し、政治の話も日常的にしている。日本の若者が投票に行かない理由の一つに「政治の知識がないから怖いという心理があるのでは」。

能條さんは選挙への関心を高めるため、2019年の参議院選挙前にInstagramアカウント「NO YOUTH NO JAPAN」を開設。政治の話を身近にすることを目的に情報発信を始めたところ、2週間でフォロワーが1万5000人に達し、さらに投票に行っていなかった友達が投票に行くようになるなど、自分の行動が周囲に影響を与えることを実感したと言います。

この経験をきっかけに政治参加を促す団体「NO YOUTH NO JAPAN」を開設し、活動は今年で6年目になります。

同年代の若者がリーダーになれる政治を

活動をする中で「最年少候補者が40歳前後の日本では、若者にとって自分の生活に関する問題や共感できる人物を見つけにくく、選挙に興味を持つのは難しいと感じた」と能條さんは続けます。
デンマークにいる時に21歳でEU議会議員になった候補者がいることを知り、同年代が代表になれる環境を目指して日本での被選挙権の年齢引き下げを求めるプロジェクトに取り組んでいます。

平塚出身の能條さんは2023年に神奈川県知事選への立候補届を提出し、立候補年齢制限に対して違憲訴訟を提起。投票権と立候補権は表裏一体であるべきだと主張しました。現在も憲法の参政権保障や国民主権に反する可能性を訴える国に対する裁判やロビー活動を行っています。

画像出典:湘南人

「立候補を考える若者の中には、権力志向や一発逆転を狙うような動機の人も多く、若者の政治参加を増やしたい自分が求めている人材とは違うと感じた」という能條さんは、20〜30代の女性やノンバイナリーの人々の立候補を支援する「FIFTYS PROJECT」を立ち上げます。

2023年4月の統一地方選挙では、プロジェクトに参加した29人のうち24人が当選し一期生として活動を続けています。今まで多くの候補者を後押ししてきたという能條さんと藤本さん。選挙後のアンケートでは「藤本さんの言葉で立候補を決めた」という方も多かったそう。

画像出典:湘南人

権力に対する男女間の思考の違い

藤本さんは「見返したいという動機から女性が政治家を目指すことはほとんどない。世の中を見返すために政治家になるという考え方や立場は、男性特有のもの」と、権力を持ちたがる思考自体が男性特有のものであると指摘。

能條さんは政治学者の三浦まりさんの著書『さらば、男性政治』(発行:岩波書店)の内容に触れ「この本の中にも『女性は権力を思考するように育てられていない』と書かれている。女性が権力の場に行くには高いハードルがあり、これには育てられ方の違いも影響している」と考察します。

世代とジェンダーバランスの偏り

「日本では女性リーダーを育てる仕組みがほとんどなく、ジェンダーバランスあるいは世代バランスが取れていないことで、政策決定に民主的なプロセスを踏めない。すべての属性が代表になって議論しなければいけないところを単一的な属性の人たちだけで議論されてしまう」という藤本さんの言葉を受け、能條さんが続けます。

「特権的な立場の人たちから被選挙権の年齢引き下げに対して『18歳にはまだ無理では?』という議論をされてしまうことが多い。女性や若者が増えることのメリットを求められたり、『俺が18歳の頃には無理だった』などと主観的な視点で意見される。人権や権利をベースに考えられないからメリットを求めるのではないか。」

画像出典:湘南人

女性リーダーに求められる「特別さ」

シオリーヌさんは「女性リーダーが増えても『特別な人だからできた』と捉えられがちで、パワフルでストイックな人のみが活躍できるという固定観念がある。本来は特別な人だけでなく、普通の女性が活躍できる社会であるべき」と女性リーダーへのバイアスが働いていることを指摘。

能條さんは 「政党の候補者選考は男性フィルターを通して適切と判断された女性しか選ばれない」と候補者選考に構造的な問題があると言います。

藤本さん「どの分野でも女性は最終的に男性の承認を得なければ評価されにくい。既存の制度は男性が作ったもので、そこに別の属性やマイノリティが汲み取られていってはいけない。既存の制度に対してどこまで女性やマイノリティ属性の適合者制度を作り変えられるのかが肝。」

画像出典:湘南人

話し合いの中で、女性のリーダーシップや社会での活躍における課題は、個人の問題に留まらず社会全体の構造的な問題であることが浮き彫りになっていきました。

イベントの続きはこちらからご覧いただけます。「鎌倉アップデートアカデミアvol.2『若い世代の実践者と”声を上げる”を考える』」<後編>

鎌倉アップデートアカデミア Vol.2

開催日時

2025年3月1日 10:30〜12:00

開催場所

古民家ゆりいか
住所:〒248-0016 神奈川県鎌倉市長谷2丁目15−14

駐車場:なし ※近隣にコインパーキングあり

参加費

3,000円(税込)ワンドリンク付き

主催

鎌倉アップデートチャレンジ
古民家ゆりいか

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