東北新幹線の新型車両は「E10系」 JR東が設計着手、2030年度の営業開始目指す
JR東日本がいよいよ東北新幹線の新型車両「E10系」の設計に着手します。最高営業運転速度は320km/h、編成両数は10両。最初の編成は2027年秋以降に落成、走行試験を行ったのち、2030年度の営業開始を目指します。
まずは車両のエクステリアについて。JR東日本が発表したイメージは上図の通りです。
E10系では「東北地方の山々を想起させる緑色を基調に、次期東北新幹線車両がつなぐ沿線各地の山々等の自然から得たインスピレーションをイメージしたカラーリング」を採用。
上部の明るい緑色は「津軽グリーン」、下部の濃い緑色は「イブニングエルム」。これまでの新幹線のイメージは車体横のラインにより継承しながら、日本らしさを表現するモチーフとして「桜の花弁」の形状を模したカーブを車両間でつなげています。
デザイナーは英国ロンドンを拠点とする戦略デザインファーム「tangerine社」です。海外デザインファームの起用は、JR東日本の車両としては初めて。
E2系・E5系の後継に
E10系の位置付けはE2系・E5系新幹線の後継車両です。同社が「変革2027」に掲げる輸送サービスの質的な変革を推進する存在としての役割を担います。
その一例として挙げられているのが、現行の「TRAIN DESK」を発展させたサービス。移動時間を有効活用して仕事や勉強・読書などをしたい方向けに、ゆったりとしたプライベート感もある快適な車内空間を提供するというものです。このほか、利用者向けに「大型荷物置き場の拡幅」「電源コンセントの全席設置」などで快適なサービスをデザインします。
5号車には荷物輸送用ドアが設置されます。同社は本日付で鉄道ネットワークを活用した荷物輸送サービス「はこビュン」の事業拡大について発表しており、E10系ではよりスムーズに積み下ろしを可能にすることで荷物の積み下ろしなどに対応、新幹線による荷物輸送サービスの柔軟性を高めます。
安全性については「究極の安全の追求」を掲げ、試験車両「ALFA-X」で検証してきた技術を盛り込みます。地震対策として逸脱防止用のL型車両ガイドに加え、ブレーキ距離の短縮および地震時の揺れを吸収し車両の損傷や脱線防止のための左右動ダンパの採用などでより高い安全性を目指すといいます。
このほか、サステナブルな社会の実現に向け、「スマートメンテナンス」に対応できる車両システムの導入、新幹線営業車では初めての採用となる冷却モータが不要なブロアレス誘導電動機（自己通風型誘導電動機）の採用、車両駆動インバータに高効率な SiC(シリコンカーバイド)素子の採用による車両駆動システムの効率向上、将来的な東北新幹線の自動運転導入を目指した機能搭載の準備などが掲げられています。
【参考】JR東日本「新幹線モニタリング車」報道公開 「スマートメンテナンス」実現へ向け12月から本格稼働
https://tetsudo-ch.com/12988190.html
札幌開業した際は北海道新幹線へ乗り入れるか？
東北新幹線は北海道新幹線と繋がっており、現在使用されているE5系新幹線は、北海道の新函館北斗駅まで乗り入れています。
北海道新幹線は札幌延伸に向けて工事中。ですが、当初の予定からは遅れており、昨年5月時点でJRTTは「2030年度末の開業は困難」との見通しを国交省へ報告しています。現状、札幌開業の具体的な時期は明らかになっていません。
JR東日本は4日の発表の中で、「今後予定されている札幌開業に伴い運用する車両については、今回設計する車両ベースに別途検討いたします」としています。
（画像：JR東日本）