囲碁で脳を活性化!――飯塚あいの囲碁療法のススメ【NHK囲碁講座】
2025年度のNHK『囲碁講座』では、新連載「飯塚あいの囲碁療法のススメ」がスタート。東京都健康長寿医療センター研究所の医師・飯塚あいさんが、認知症を予防して進行を抑えるためのさまざまな方法をお伝えしています。
今回は初回の4月号より、認知症についての説明と、囲碁の基本ルール、そして簡単にチャレンジできる“脳トレ囲碁クイズ”をお届けします。
まずは認知症を知ろう!
こんにちは、飯塚あいです。私は医師として、囲碁による認知症予防や進行抑制に関する研究を行っています。
これから12回にわたって囲碁が健康にもたらす効果についてお伝えします。まず認知症について簡単に説明させてください。
認知症とは、脳の細胞が何らかの原因でダメージを受け、認知機能が低下することで日常生活に支障が出る状態を指します。多くの方は物忘れをイメージするかもしれませんが、それ以外にも、不注意や物事の段取りが難しくなったり、空間の把握がうまくいかなくなったりする症状も見られます。
認知症のように思えても、年齢による自然な物忘れであるケースも多く見られます。認知症との違いは、症状が日常生活に支障をきたしているかどうかです。日常生活を問題なく送れていれば、認知症とは診断されません。
人間の記憶力や判断速度は、20歳頃をピークに少しずつ低下していきます。しかし、認知機能の低下速度や認知症の発症時期は、生活習慣を整えたり、リスクを減らしたりすることで遅らせることができます。その方法の一つとして、囲碁が有効であると考えています。この連載では、認知症を予防し、進行を抑えるためのさまざまな方法についてお伝えしていきます。
陣地が広いほうが勝ち
囲碁には四つの基本ルールがあります。今月はこのうちの簡単なルールを二つと、勝利条件を表す最重要ルールの合計三つのルールを覚えましょう。
【1図】黒1と線と線が交わった点に置きます(一つ目のルール)。
続いて白2、黒3、白4……と、交互に置いていきます(二つ目のルール)。ここまでは視覚的にも分かりやすいと思います。
【2図】囲碁は相手よりも陣地が多いほうが勝ちです(三つ目のルール)。2図のように黒石と白石が碁盤を縦断しているような形は、囲碁で試合が終わった状態の一例です。それぞれの石を陣地を区切る壁と見なし、その壁の内側の交点の数を数えます。
2図の場合、黒は右側の18個の交点が、白は左側の45個の交点がそれぞれの陣地。陣地の単位は「目(もく)」と呼びます。黒地が18目、白地が45目で、差し引き白の27目勝ちです。
【3図】実際にはこのように入り組んだ形になります。この図では黒地が19目、白地が21目で白の2目勝ち。離れた陣地は合算します。
脳トレ囲碁クイズ
黒地と白地がそれぞれ何目あるか数えてください。
また、結果はどちらが何目勝ちになるでしょうか。
(問題の下に答えがあります。)
問1 黒地が右に、白地が左にあり、シンプルな配置です。
問2 黒地が右上と左に分かれて難易度UP。しっかり数えて。
答え
<問1 解答>
陣地として数えるべき場所は、黒地は▲の部分、白地は△の部分になります。それぞれを数えると、黒地が26目、白地が25目となり、黒の1目勝ちとなります。
黒白双方とも2列分が陣地になっているので、18目から端数を足していってもよいですね。
<問2 解答>
黒地が2か所に分かれたうえ、黒石が斜めに配置されているため、やや数えにくくなりました。
黒地は右上に3目、左に15目で合計18目。白地は上から右下にかけて20目あり、白の2目勝ちです。テンポよく地を数えるため、2目ずつ数える人もいます。
「飯塚あいの囲碁療法のススメ」では5月号以降も、囲碁による認知症予防の方法と、毎月”脳トレ囲碁クイズ”を掲載中。7月号では、さまざまなゲームがあるなかで「ルールが簡単なのに奥深い」囲碁の優位性についてお話しています。
飯塚あい
東京都健康長寿医療センター研究所 社会参加とヘルシーエイジング研究チーム研究員(医師、医学博士)
NHK『囲碁講座』テキストでは、「目指せ好形! 悪魔のささやき 天使のつぶやき」が開講中。7月号は「厚みは生かさにゃ損々!」がテーマ。
また、ご紹介した「飯塚あいの囲碁療法のススメ」、「一力遼の勝利は細部に宿る」、「孫喆・星合志保の囲碁端会議」なども好評連載中。
7月号の別冊付録は「余 正麒のNHK杯初優勝への軌跡 ➀好スタートを切る」です。
◆『囲碁講座』2025年4月号「飯塚あいの囲碁療法のススメ」より抜粋
◆文:飯塚あい
◆イラスト:ともよ
◆トップ写真(背景):GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート