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昨年入社した新人さんが、あまりにも助けを求めるのがうまくて、「こいつ人生二度目か?」と思った話。

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昨年入社した新人さんが、あまりにも助けを求めるのがうまくて、「こいつ人生二度目か?」と思った話。

今日書きたいことは、大体以下のような話です。


・昨年入社した新人さんが、人生二度目かというレベルで「助けを求めるのが上手い人」でかなり驚いています

・助けを求めるのが上手い人は、大体下記のようなことができています
-手遅れになる前に「困っています」を出力できている
-何がしたくて、何が出来ていないかを言語化できている
-何をやろうとしたか、どこまで試みたかを言語化できている
-普段の進捗をちゃんと周囲に報告・共有している
-助けを求める際、必要な人を巻き込めている
-自然と感謝の言葉を口に出来ている

]・これが自然に出来る人は色んなところで得をしますよね

・ただ、ここまでできなくても、ただ「困っています」「進んでいません」をちゃんと出力できるだけでも上司としては十分ありがたいです

・新人さんは、遠慮なく弱音を吐きつつ、少しずつでも「助けを求めるノウハウ」を蓄積していけるといいんじゃないかと思います

以上です。よろしくお願いします。


さて、書きたいことは最初に全部書いてしまったので、後はざっくばらんにいきましょう。

以前から何度か書いていますが、しんざきはシステム系の会社で管理職をしています。元々の専門はDB屋なんですが、最近テクニカルな仕事は正直あまりできておらず、もっぱらスケジュール調整とリソース調整、および他部署に頭を下げまくる仕事に追われる日々を送っています。


管理職は管理職で楽しいんですが、わけの分からんヒント句つきでわけの分からんテーブルにJoinしまくってる複雑怪奇なストアドファンクションの整理とか、意味不明なテーブル構成・インデックス構成でパフォーマンスが死んでるDBのフルチューニングとか、たまにはやりたいですよね。数年に一度くらいでいいですが。

で、立場上新人さんを見る機会もそれなりに多く、分からないながらも新人指導もやっています。配属運がいいのか平均値が上がっているのか、「最近の若い者は」的なことは殆どなくって、むしろ最近の新人さん、態度もしっかりしてるし勉強もするし、正直私よりずっと優秀なんじゃねえか?と思うことの方が多いです。わしは育てとらん。


で、昨年入社した新人さんで、一人「助けを適切に求める」ことがすごく上手い人がいて、割とびっくりしています。

これは一般的に言っちゃっていいと思うんですが、どんなに能力的に優秀であっても、最初はなかなかできないのが、「仕事で困った時、適切に助けを求める」ことなんですよ。これ、別に新人さんに限らず、結構なベテランでもできない人はいます。「助けを求める」って、本来難しいことなんです。


まず第一に、「助けを求める」ためには、「困っている」を言語化して出力しないといけない。

どんな人でもそうですが、「できてません」「進んでません」ということを伝えるのって、凄く勇気がいるんですよ。叱られるんじゃないか、あきれられるんじゃないか、「これだけ時間かけてこれしかできていないのか」と思われないか。そういう、「どう思われるか、という恐怖心」が邪魔をして、例えば全然分からないことがあっても、なかなか質問できないまま、ずるずる先延ばしにしてしまう。進み具合を聞かれても、ついつい「大丈夫です」と答えてしまい、どうしようもなくなってからようやく進捗の大幅遅れが判明する。そういう人、新人に限らず、どんなレイヤーでもすごくたくさんいます。


それに加えて、「何にどう困っているのか」を言葉にして説明するのだって、なかなか簡単なことじゃないんですよね。「分からない」場合、最初は「何が分からないのか分からない」のが普通です。よく分からないけれど、とにかくできない。「できない」としか言えないので、「分からないことがあったら質問してね」と言われても、その質問を言葉にすることができない。


さらに新人さんの場合、「どういうタイミングで、誰に質問すればいいのか」だって結構判断が難しい問題になります。周囲にいる人たちは全員自分より職位が上で、いつも忙しそうにしている。そんな忙しそうな時に「なにがなんだか分かりません」とか話しかけて怒られないか。自分に教えるだけで何時間も使わせてしまったらどうしよう、なんて不安もあるでしょう。「それ、この前も言ったろ」なんて言われたら、それだけで二度と質問できなくなっても不思議ではありません。

「この人に、こういうタイミングで助けを求めたらちゃんと助けてくれる」というのも、ある意味重要な職場のノウハウなんですよね。


そういった、数々の「助けを求めるためのハードル」が、多くの新人さんの成長を阻害している、ということは、どんな職場でも観測できるでしょう。まあそのために、上司は「困ったら、「なんか分からん」だけでもいいから俺に言ってね」「同じこと何度聞いてもいいからね」「俺が忙しそうな時は忙しそうな振りしてるだけだから気にせんでね」と言わないといけませんし、私もそう言うようにしてはいます。


ところがですね。去年入った件の新人さん、この辺のことが殆ど最初からできているんですよ。なんでしょう、大学や大学院時代の指導がよほど良かったんでしょうか。

まず、手遅れになる前にちゃんと「ここが分かりません、できてません」と言える。それだけでも偉いんですが、その背景として「今○○が目的の作業をしてるんですが、ここが分からなくてできてません」と、ちゃんと「作業の目的」と「できてない箇所」を最初の時点で説明できている。

どんなことでも、教えるためには「何のために何をしようとしているのか」をまず明確にしないといけなくって、大抵はそれを逆質問でサルベージしないといけないんですが、そこを省略できる。これ、答える側としては滅茶苦茶助かります。「なんのために、何をしようとしているの?」を確認する手間が省けるし、言われる側もそれで萎縮したりしなくて済みます。


更にでかいのが、「○○と××は試してみたんですが」と、「自分がどこまで試みたか」をセットで伝えられること。

これ、前この記事でも書いたんですが、

大学の恩師に教わった、「なにがわからないか、わからない」ときの質問のしかた。

「分からない」を解決する、というのは、一種の宝探しのようなものでして、「どこに理解を妨げている要因があるのか」というものをどうにかして探り当てなくてはいけません。

それは単純に知識不足なのかも知れないですし、アプローチの方向性が間違っているのか、何か理解を妨げる勘違いをしているのか、あるいは内容について読めていない部分があるのかも知れません。

「一台目の掃除機」がないということは、それを全部一からマインスイーパーしろということであって、相手に負荷をかけることにもなりますし、有限の時間を無暗に浪費することでもあります。


「何かが分からない」時、「質問者はどこまで分かっているのか」を探り出すのって、本来めちゃくちゃ面倒くさい作業なんですよ。理解度はこの辺かな?それともこの辺かな?っていうのを、大抵はかなり基本に戻ってヒアリングして、その上でその理解度に沿った説明をしないといけない。地図なしの宝探しみたいなもんです。

けれど、「○○まではやってみた」という情報が分かると、「ここの理解が間違っている」とか「やりたいことは合ってるけど順番が違う」とか「そもそもアプローチが違う」とか、答える側としても的確に、しかも少ない手間で回答を考えることができます。これホント、めっちゃくちゃ助かるんです。


また、重要なこととして「普段から進捗報告をこまめにやっている」という点も挙げられます。

これはもちろん私からも求めているんですが、「今何をやっています」「これから何をします」という状況の共有が明確だと、周囲の人も大体「あ、あいつこれから○○の作業することになるな」というのが事前に分かるので、質問が来た時に状況に応じたピントを合わせやすい。同じ質問をするにしても、「あ、そういえばこいつこの前この作業やってたな、ってことはここまでは分かってるだろうな」というのが簡単に判断できるんです。


「こいつ、「ここが分からない」って言ってるけど、そもそも着手自体してないんじゃないか?」みたいな疑念を抱かれる余地がない、ということで、質問者自身のためになることでもあります。細かな進捗共有、面倒だけどホント大事です。


もう一つ、これもすごく感心したことなんですが、「誰かに質問する時、他に必要そうな人も一緒に巻き込めている」ことです。実は、私が「こいつ人生二度目か?」と思ったのはここでした。

どういうことかというと。例えば、○○という技術について知っている人が、自分とは違うチームにいたとして。本人にいきなり直接聞くのではなく、自分のチームリーダー(私)と、相手のチームのリーダーも含めてチャットソフトでグループを作って、その中で質問するんですね。


もちろん本当にちょっとした質問であれば、するっと相手の席に行って聞くだけでも何の問題ないんですが。ある程度大きな問題だと、場合によっては質問に答えるだけでそれなりのリソースを使うことにもなるので、相手の時間を奪ってしまうという意味では、管理サイドでも把握しておかないといけない話なんですよね。マネージャーの側として、「おいおい、○時間も時間とる作業するなら、こっちにも話通しといてくれよ」ってなるじゃないですか。そういう場面で、後から頭下げるのも私の仕事のうちなんですが。


そこで、自分と相手の管理サイドも含めて、状況を把握しておいてもらう。これができていると、私から相手リーダーさんに「すいませんがちょっと時間いただきます」って話を通すのもスムーズですし、質問を受けた人にとっても「あ、自分の上司も把握していることなんだな」と分かってちゃんと身を入れて回答ができます。


私からも一回二回例示はしたかも知れませんが、それでもこんなにするっと「関係者を巻き込む」ができるって凄いことだと思うんですよ。大体は、「偉い人を巻き込む」なんて萎縮しちゃうものですもんね。

あとは、当然のことのようで案外忘れがちなのが、「ちゃんとお礼を言う」ということで、毎回丁寧にお礼の言葉を書き込んでいるのを見て、これもつくづく偉いなーと思った次第なわけです。


この辺、「助けを求める」時にやった方が良さそうなことが大体できているという話で、この新人さんはもちろんとても優秀だと思うんですが、他の新人さんも大なり小なり「ある程度できている」人ばかりです。ホント優秀です、最近の新人さん。

私が新人の頃なんてこの100倍ちゃらんぽらんだったよな、と思わざるを得ず、皆さんの邪魔にならないように管理っぽいことを頑張らないといけないなーと思うばかりなのです。


***


色々書いてきましたが、一つ強調したいこととして、「助けを求める」時に上記のようなことが全てできている必要など全くなく、むしろ「助けて」がちゃんと言えるだけでも十分偉い、という話です。


最初に書いた通り、「「できてません」「進んでません」ということを伝えるのって、それだけで凄く勇気がいる」ことなので、手元でできないタスクを抱えてずるずる時間が経つことはとてもありがちで、マネージャーとしてはそこが一番困るポイントでもあります。


そのハードルを飛び越えて、「何がなんだか分かりませんがとにかく困ってます」と早めに言えるだけでも十分にマネージャーとしては助かりますし、それを言えるようになることこそ一番重要です、と。

4月から新社会人になる方も多々いらっしゃるとは思いますが、まずはそこ、「困っている」を手元で抱え込まないようにすることを目指してみてください、と。

更にその上で、「助けを求める」ためのテクニックを、少しずつ少しずつ身につけていければいい感じに社会人をやっていけるのではないでしょうか、と。


そんな風に考える次第なのです。

今日書きたいことはそれくらいです。

***


【著者プロフィール】

著者名:しんざき

SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。

レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。

ブログ:不倒城

Photo:Artem Maltsev

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