「近場の河川敷は食材の宝庫!」美味な野草採集のススメ 釣りとセットでも楽しもう
渓流シーズンが始まっておよそ一カ月半程度が経過した。水温も徐々に上昇し、そろそろ良型が顔を出し始める頃だ。著者は美味な渓流魚を家族で食す分だけ持ち帰るのだが、その際に併せて採集しているご馳走がある。今回は、渓流釣りと共に楽しめる「野草採集」にフォーカスしていきたい。
野草を食べる「野食」
まずは、野草を食べる「野食とは?」というテーマと、渓流釣りを楽しむ著者が野草を食べる事になったきっかけを紹介したい。
その雑草、食べられる?
著者は子供の頃から、道端に生えている野草を片っ端からしから口に運び、「これは食べられそう」「これは口がしびれるから危険?」といった遊びを繰り返し、稀にお腹を壊しては母に怒られていた。
自然を愛するアングラーの皆様の中には、同じような経験をお持ちの方は多いのではないだろうか。当時は真剣に食す機会が無かったため、いつしか「食べられる雑草に詳しくなりたいな」という希望を持つようになっていた。
山菜への憧れ
社会人となり念願の渓流釣りデビューを果たした著者は、唯一知識の中にあった有名な山菜・フキノトウを発見して持ち帰り、食したことがあった。この頃の著者は「いつか山菜採りも楽しみながら釣りをしたい」という欲求があったが、正しい知識も無く、クマや遭難の危険から踏み出せないでいた。
Youtuber茸本朗氏を知る
ある時著者は、「そういえば子供の頃に河原で食べたネギ臭いあの野草、何だったのかな?」と疑問を持ち、「食べれられる野草」についてYoutubeで調べていたら、「野食ハンター」こと茸本朗氏の動画にたどり着いた。野草・キノコ・ジビエから、釣り・ガサガサで採集した魚介に至るまでを網羅した茸本氏の動画は非常に興味深く、その中に登場する幾つかの野草に見覚えがあった。著者が最初に拝見したのはこちら、「ノビル」についての動画だ。
そう、著者が子供の頃に齧った「ネギ臭い葉っぱ」は、立派な食用野草であるノビルだったのだ。
実は身近な野食材
茸本氏の様々な動画を拝見した後、渓流釣りを楽しむついでに「食べられる野草があるかも?」という目で周囲を注意深く観察してみると、実に様々な野草がある事に気付いた。山奥まで行かなくても案外沢山の「食べられる野草」があるので、今現在は茸本氏の図鑑を片手に楽しんでいる。
河川敷の物は採集可
動画内で茸本氏も言及しておられるが、基本的に河川敷の物は「河川法」等によって規定されており、国定公園などに指定でもされていない限り、基本的には採集が可能だ。だが、「木や竹を切る」といった行為の他、「地形改変」や「漁業権のあるものを採集」は当然ながら禁止となっている。
今回の「野草を摘む」という行為は問題ないと言える。ただし、希少種の有無や採りすぎには十分に注意しよう。
オススメ野草その1 アブラナの仲間
ではここから、著者が実際に採集・実食してみた上で「これなら毒草と勘違いすること無く安心だ」と自信を持ってオススメする、初心者向けの野草を紹介したい。まずはアブラナの仲間だ。
見分けが簡単
春になるとお浸しやカラシ和えで食べたくなる「菜花」は、アブラナ科の総称。二月頃からスーパーや道の駅などで購入できるが、実はどこにでも生えているポピュラーな野草だ。三月~五月には特徴的な黄色い花が咲くので、見間違えることも無い。
心配な方は、事前に茸本氏の動画で予習しておくと安心だ。
仲間が沢山いる
アブラナ科は外来・在来共に比較的多くの種がみられ、さらに交雑しやすい。そのため、「これはアブラナ科の○○だ」と特定するのは比較的難しいが(同定という)、基本的にはどのアブラナ科も食すことが出来るので安心だ。
このように、一か所で採集しても葉の形が違う種が混在しているが、多少味に違いはあるものの全て美味しくいただけた。むしろこの味の違いを楽しむのも一興と言えるだろう。
採集の仕方
これは野草採りの基本になるのだが、必ず食べる分だけ採集しよう。その際も一株から沢山の部位を採集するのではなく、脇芽や茎・葉を1~2本分ずつ採集し、根の周囲は傷つけないようにしたい。
好みの味を見つけたい
河川敷に生えている複数の種類を食べてみたが、著者は茎の色が紫色で、1本の茎がぐっと伸長しているタイプが好みだった。えぐみ・渋み・苦味が非常に少なく、繊維が柔らかくて爽やかな香りがあるので、大変食べやすい。道の駅で販売されていた「のらぼう菜」と瓜二つなので、おそらく野生の「のらぼう菜」だと思われるのだが、正直確証はない……。
オススメ野草その2 ネギの仲間
次に紹介するのは、見た目の他に香りで見分けられるネギ・ニラの仲間だ。誰もが嗅いだことがある特徴的な香りのおかげで、間違えることも少ないだろう。だが、ニラと見た目が似ているスイセン(猛毒)だけは注意してほしい。
ノビル
著者が野食材にハマるキッカケとなった、ネギとニラの中間のような植物がノビルだ。
河川敷なら正直どこでも生えているほどポピュラーな野草で、特徴的な見た目に、葉をつぶすとモロにネギ臭がするので間違えようがない。葉の断面は三日月型かつ中空になっており、さらに根は「鱗茎」と呼ばれる小さなタマネギのような形をしている。
葉の部分はネギとして、付け根部分~鱗茎部分は天ぷらにしたり、茹でで酢味噌で和えると最高のツマミになる。さらに、ギョウザに入れると旨味がバクハツするので、是非一度試してみてほしい。
アサツキ
こちらは見た目からしてネギだが、実際その通りにネギだ。「野生のネギ」らしく市販品よりも爽やかな香りが強めで、大変美味しい。葉は中空で、この事からもネギの仲間であることが判る。
根は僅かに膨らんでおり、一見するとノビルに似ているが、この部分と根の付け根に当たる部分はかなり硬い。葉の部分は普通にネギだ。
ニラ
意外かもしれないが、実はニラもその辺に生えている。
茸本氏の動画を見て驚きつつ探してみたら、馴染みの河川敷で普通に見つかった。
こちらは香りで間違える事は無いと思うが、この時もすぐ傍にスイセンが生えていたので、くれぐれも間違えて採集しないようにしたい。見分ける自信が無い場合は、避けた方が無難だ。
採集の仕方
ノビルやアサツキは意外と根(鱗茎部)が深いところまで至っているので、スコップを用いて丁寧に掘り出し、掘り出した穴もきちっと埋めておこう。ニラは根っこから採集するのではなく、可食部である葉の部分をハサミ等でカットして採集したい。
素晴らしき野食の世界を堪能!
今回紹介したのは、あくまで「渓流釣りのついで」程度で楽しめる、野食の超入門種ばかりだ。実際に今回紹介した野草たちは、茸本氏の動画でも「初心者向け」として扱われている。わざわざ深い山の中に足を運ばずとも、いつも釣りを楽しんでいる川の河川敷や支流の河川敷をほんの少し覗いてみるだけで、春~初夏の贅沢な食材が手に入る。
野菜の値段が高騰している今、これほどありがたいことは無いだろう。勿論採りすぎだけはくれぐれも注意し、マナーよく個人で楽しむ範疇に留めておけば、定期的に美味しい晩酌を楽しむことが出来るはずだ。
<荻野祐樹/TSURINEWSライター>