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美声、演技力、容姿、三拍子そろった究極のロマンティック・テノール、バンジャマン・ベルナイムが語る、初のソロ・コンサートへの想い

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バンジャマン・ベルナイム

2025年1月14日(火)東京文化会館、1月19日(日)サントリーホールにて、『バンジャマン・ベルナイム テノール・コンサート』が開催される。この度、バンジャマン・ベルナイムに初のソロ・コンサートへの想いを聞いたオフィシャルインタビューが届いたので紹介する。

もしまだオペラ歌手=身体の大きな人、という固定概念をもっているのならば、それは考えを改める時代がきています。昨今はオペラの舞台もライブ配信などをされる機会が増え、俳優のような容姿を誇り、かつ劇場中に響く声をもちあわせた稀有な歌手が出てきています。

そんなオペラ新時代ともいうべき現在のオペラ界を牽引する歌手の一人がバンジャマン・ベルナイム。今夏のパリ・オリンピックの閉会式にフランスを代表する歌手として出演。堂々とした歌唱を記憶されている方も多いのではないでしょうか?

美声、演技力、そして容姿と、天から三物を与えられたベルナイムですが、とうとう来年の1月、日本初となるソロ・コンサートで来日することが決定。世界中を飛び回って舞台をこなすベルナイムが、コンサートの合間をぬって共同インタビューに応じ、舞台にかける想いを熱く語りました。

バンジャマン・ベルナイム          photo:Julia Wesely

ーーいよいよ日本初のソロ・コンサートで登場です。今回の選曲の意図について教えていただけますか?

私は毎回同じプログラムにならないように注意しています。東京では2回のコンサートがあり、劇場も異なります。そのため、違うアリアを取り入れることで、どのコンサートも“特別なもの”と観客の皆様に思っていただけるように選曲しました。
私は今、ロサンゼルスからお話をしていますが、ウィーン、プラハ、パリなど、私にとってどこの国のコンサートでも、全て絵画のようなものです。どの舞台も刺激にあふれて独自性があり、同じことの繰り返しであってはいけません。
今回はヴェルディ、プッチーニ、チャイコフスキー、そしてフランス・オペラからアリアを選びましたが、これらの曲は私の声にあっていて、私の声で物語をお伝えすることができます。私は舞台で歌う時、観客の皆様をロマンティックで詩情あふれる旅へとお連れしたいのです。今回のコンサートで歌う『エフゲニー・オネーギン』のレンスキー、『トスカ』のカヴァラドッシ、そして他のアリアも、どの曲もロマンティックな詩情にあふれています。ある種英雄的と言えるかもしれません。これらのアリアは、若い男性や英雄の物語を伝えていると言えるのではないでしょうか?
では、若さとはなんでしょうか? それは、希望や愛、情熱だと言えるでしょう。それらの要素に私自身の個性を加え、若さの表象として観客の皆様にお伝えしたいと思っています。
フランス・オペラでも同じことが言えます。ロメオ(『ロメオとジュリエット』)、デ・グリュー(『マノン』)、ホフマン(『ホフマン物語』)、ウェルテル(『ウェルテル』)、キャラクターは違っても、彼らはみな若く、ロマンティックで、詩情あふれる声の特質を求められる役です。

バンジャマン・ベルナイム          photo:Eric Bouloumie

ーーフランス・オペラとイタリア・オペラを歌われるときに、言葉以外でアプローチの違いはありますか?

言語によるささやかな違いはあるのではないでしょうか。フランス語は豊かな言語であると同時に乾いた響きの言語だと思います。イタリア語はシンプルでロマンティック、そして話し言葉が豊かであると感じます。ロシア語もイタリア語と同様、非常に美しい言語です。重要なのは、私がどんな言語で歌う時も、歌詞を理解し、言葉で物語を伝えることが大切です。イタリア語で『ラ・ボエーム』や『愛の妙薬』を歌う時、私の声の色彩は少し変わるかもしれません。なぜなら、イタリア語はフランス語と比較すると言語的にはより音楽的だからです。フランス語がテレビやラジオで話されているのを聴くと、イタリア語よりもモノトーンだと感じます。イタリア語を聴くと、フランス語よりも色彩が豊かだと思います。ですから、言語によって声の音色は変わると思います。

ーー今回は日本初のソロ・コンサートですが、2009年にリヨン歌劇場日本公演の『ウェルテル』で日本デビューされていますね。

『ウェルテル』でシュミットという小さな役を歌いました。初めての日本だったので私にとってはとても重要な経験でした。実は、私には日本との個人的なつながりもあるんですよ。私の母は日本の大阪で生まれました。母はバレリーナで、1963年のイタリア歌劇団大阪公演ではバレエ場面のリーダーを務めました。母は祖母とともに3年間日本で暮らしました。私の日本のつながりという点で興味深い話だと思います。
2009年、はじめて日本を訪れたことは私にとって特別な経験でした。日本の文化や食事を知りたかったのです。東京の職人を見たくて、合羽橋に行って包丁を買いました。その時買った日本の包丁は15年たった今でも愛用しています。

ーースイスとフランスで育ったということですが、ご自身のアイデンティティをどのように感じていらっしゃいますか?

私はフランスとスイス、ずっと二つの国籍を持ってきました。フランスで生まれましたが、フランスとスイス人の両親から生まれました。ジュネーヴで育ちましたが、フランスのオート=サヴォワ県でも育ちました。ですから、ずっとフランスとスイスの市民権を持っています。自分がフランス人かどうかは難しい質問ですが、私の背景にはフランス文化があるのです​。私の考え方は時に外交的だったり、合意的だったり、スイス人だと感じることもあります。私はフランスとスイスのアイデンティティの両方を持っていることを誇りに思っていますが、文化的に、思考や政治的に、芸術的には私はフランスの文化に近いと感じています。

バンジャマン・ベルナイム             photo:Curtis Brown / Met Opera

ーーフランス・オペラをレパートリーの主軸としつつ、イタリアやドイツのオペラでも高い評価を得ています。作品ごとに求められる声質もかなり異なるため、声を保つのはものすごく難しいと思いますが、どのように調整しているのでしょうか?

声が5年後にどうなるかは私にも分かりません。今より暗くなるのか、より声量豊かになるのか、あるいは今とまったく同じままの性質を保つのか、将来の声を予想するのはとても難しいことです。テノール歌手のピョートル・ベチャワは長い間、彼の声の音色をずっと若々しく保っていきました。ニコライ・ゲッダも同様にとても若く明るい声を保っていました。一方で、プラシド・ドミンゴやヨナス・カウフマンはキャリアのなかで声が変化していきました。歌手はみな違います。すべての声は違い、誰かの真似をできるものではありません。声が同じでいるのか、成長していくのか、私の声でいえば、音色において、新たな「色彩」をキャリアを重ねるなかで加えて成長していったと思います。10年前は今のようには歌えませんでした。同じ声質でしたが、より色彩に乏しかったのです。今は色彩を増し、色々な声の表情を得たことでこれまでとは異なる役柄を歌えるようになりました。自分については声のサイズが変わったことよりも、より豊かな色彩のパレットをもって観客に届けることができるように成長したと感じています。

ーー声とあわせ、体型や健康を保つことも意識していらっしゃいますか?

長年かけて私の身体や体重も変わりました。若い時は今よりも瘦せていて、その後もそんなに太っていたことはありませんでした。ですが、私の芸術家としての理想、また俳優として、歌手として、舞台上の演技者としては、自分の身体がいいバランスであることが重要です。今は毎日ジムで40~50分のトレーニングをしてはいます。
ロメオやウェルテルやデ・グリュー、ネモリーノなど若い恋人を演じる時は、観客にも、カメラに対しても色気があって、魅力的であることが大切です。現在はすべてを兼ね備えた芸術家が求められていて、声はもちろん重要ですがそれだけではありません。身体が大きければ、物語をより伝えられるということではありません。個人的には、自分がいいバランスで、スマートで良い状態の時には、より物語を伝えることができると思います。痩せすぎるということではありませんよ。

バンジャマン・ベルナイム          photo:Julia Wesely

ーー最後に、日本公演に向けてメッセージをお願いします。

今回のコンサートが皆様との長く続く友情のはじまりとなり、これからも日本を何度も訪れることができますようにと願っています。ヨーロッパと日本は離れていますが、私は日本文化や日本の人々のことを色々と聞いています。日本の皆様がお好きなものを知っていきたいですし、より良いオペラの演目をお贈りしたいと願っております。私は日本文化をとても愛しています。日本の観客の皆様にお会いできることを楽しみにしています。

Benjamin Bernheim – Donizetti: Una furtiva lagrima, Act II, Scene 8 | Yellow Lounge

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