「失敗」を恐れてチャレンジできない子。社会をたくましく生き抜く「失敗力」の大切さ
臨床心理士・公認心理師のyukoです。失敗が恥ずかしい、チャレンジするくらいなら今のままでいいと考えて、一歩引いてしまう子は多いよう。しかし、これからの社会をたくましく生きるためには失敗を乗り越える経験も必要になってきます。失敗を恐れる子に伝えたい「失敗力」の大切さを考えていきます。
チャレンジをせずに失敗を恐れるわが子。この先大丈夫かな?
昔から引っ込み思案で、新しい環境やチャレンジが苦手な中2の娘。慎重なのは悪くないけど、係や委員は余ったもの、リーダー的な役割は避ける、発表やスピーチなどの表舞台は苦手で失敗を怖がっている。今後進学するにしても自己PRできるものがあるか心配。どうしたら失敗を恐れずにチャレンジできる子になる?
授業中手をあげて間違えても気に留めない、積極的にリーダーを努めようとするなど、前に出ることや失敗をためらわない子もいる一方、失敗が怖くてなかなか一歩が踏み出せない子もいますよね。成長する中では「チャレンジする機会」とともに、「失敗の経験」もしてほしいものですよね。
失敗を受け入れ、そこから学び取る「失敗力」を身に着けるコツを考えていきます。
令和の子に身に着けてほしい「失敗力」とは?
インターネットで事前に情報を調べたり、AIの力を利用して的外れな行動を避けたりできる今の時代。直感的に選択し、試しに行動するしかなかった時代と比較して、失敗しにくい時代になっているかもしれません。
しかしどれほど事前準備をしていても、慎重に行動していても、失敗のない人生はありえません。他者との関係、環境や境遇、運、思うようにコントロールできない場面には必ず遭遇するはずです。
そんなときは失敗から得た学びが役立ちます。
困難に直面しても乗り越えられる力、失敗を失敗で終わらせず「チャンス」や「学び」ととらえる力を育てていきましょう。
失敗を恐れる子への関わり方のコツ3つ
日常の小さな挑戦から、失敗を学ぶ。
失敗は、学校などの外の世界でしかできないものではありません。
まずは家庭の中で、「小さなチャレンジ」を促してみるのがおすすめです。
・普段は足を運ばない場所での買い物。大切な誰かへのプレゼントを一人で選んでみる。
・休日のご飯を一人で作ってみる。献立から材料の買い出し、作業まで全てチャレンジしてみる。
・スマホを使わず、本を見ながら旅行の計画を立ててみる。当日、道案内やお店選びなどを主体的にしてみる。
学校では「どう見られているか恥ずかしい」と思う子も、家族であれば気負いせず新しいチャレンジができる子もいます。まずは、日常的な場面から「小さなチャレンジ」を促してみてください。
失敗をしたときの声かけに注意。
想定通りにいかなかったとき、チャレンジしたもののうまくいかなかったときの声かけは、子どもの「失敗力」を育てる上でとても大切。
「大丈夫、次があるよ」「今回はだめだったけど、元気だして」なども悪くはないのですが、もう一歩踏み込んで”失敗の意味”を変えていくのが重要です。
・結果よりもチャレンジしたことそのものの意味が大きいんだよ。やらなかったら、頑張った時間も悔しい気持ちも嬉しい気持ちもなかったよね。
・今はできるようになる途中なんだよ。大人になるまでに色んな経験をしてみてほしいな。
・次どんな風にしたらよいか、一緒に考えてみようか。
「失敗してしまった」という気持ちで終わらせるのではなく、「チャレンジの大切さ」「経験からどんな学びが得られるか」をしっかり伝えられるとよいでしょう。
親の失敗談を伝えたり、失敗を見せる。
失敗を怖がる子の中には、周囲の人はうまくできている、完璧にこなせているように見えている子も多いんです。なので、子どもの頃に親が経験した失敗や、仕事でうまくいかないときの話をするのもよいでしょう。
・今日仕事でプレゼンをしないといけなかったんだけど、十分準備ができていなくて質問にうまく答えられなかった。次からはこんな風に作戦を立てようと思ってるんだ。
・子どもの頃、やりたい委員に立候補したけどなれなかったんだよね。でも次の機会にもう1回挑戦したら周りの子も応援してくれて嬉しかったよ。
一見しっかりしているように見えている大人に対して「人間らしさ」が感じられると、失敗も大したことじゃないと思いやすくなります。
うまくいったことだけでなく、苦労したこと、うまくいかなかったことも伝えていけるといいですよね。
yuko/臨床心理士・公認心理師