基本設計着手直前に一転先延ばし 上越地域医療センター病院建て替え計画 中川幹太上越市長の政治責任問う声も
新潟県上越市は2024年12月6日、上越地域医療センター病院(南高田町)の建て替え計画を先延ばしすると上越市議会で明らかにした。上越地域の医療再編の結論が出ていないことや、医療センター病院に限らず全国の病院経営が悪化する中、国の支援策などが現時点では不明なことなどが理由。2018年の基本構想策定から6年が経過し、本年度中に基本設計に着手するとしていたことから、議員からは中川幹太市長の責任を問う声も上がった。
《画像:建て替えが先延ばしになった上越地域医療センター病院》
市は2020年3月に総事業費約88億円の建て替え基本計画を策定し、コロナ禍の影響や新潟労災病院の閉院に伴う医療再編協議を受けて見直しを行いながら、本年度中の基本設計着手、2029年度末までの新病院完成を目指していた。
しかし、医療センター病院の経営はコロナ禍などでここ数年急激に悪化し、2022年度以降は実質的な純損失が毎年4億円を超えている。市は基本計画通りに建て替えた場合、収支は毎年赤字になり2036年度を過ぎても断続的に赤字が続くとしている。一方、建て替えを先延ばしして、2025年度末に閉院する新潟労災病院の歯科口腔外科などを受け入れた場合、2027年度から継続的に黒字になるとしている。
先延ばしの理由の一つとして、2027年度以降の収支改善を見極める必要性を挙げた。また、医療再編の協議では、医療センター病院が回復期医療を担うことが合意されており病床数も決まっているが、急性期を担う中核病院の整備方法や医療センター病院以外の病院の病床数などは決まっていない。県立病院、厚生連病院も同じく厳しい経営問題を抱える中、病院の機能、病床の規模が確定するまでには時間がかかることが理由の二つ目。さらに、基本計画で予定していた合併特例債の活用期限は2029年度末だが、医療再編の結論に従って病院を建て替えたときには、有利な起債や国・県の補助金が整備され、活用できる可能性があるとしている。
八木智学副市長は「猶予はいただくが、センター病院は必要。建て替えの方向に変わりはない」と述べた。
「市長の政治責任問われる」 市議ら
議員からは市長の政治責任を問う声が上がった。
丸山章議員は「市長の政治責任が問われる大きな問題。市長の判断で何とかならなかったのか」と述べた。
《画像:市議会では中川市長の政治責任を問う声が上がった》
本城文夫議員は「中川市長の政策転換は大変な政治的責任がある。多くの市民は完成すると思っていた。ペテンにかけられた思いで残念。市政に対する不信が募る。市長が出てきて説明しないと納得できない」。
宮越馨議員も「これは市長マター(案件)で、政治的責任を伴う。全員協議会を開いて市長が説明してほしい」と求めた。
橋爪法一議員は「市長の政治的決断を求められる極めて重大な案件。今までの流れに沿って計画を実行するという決断をすることが、市民の命と安全を守るベストな決断。待つような話ではない」と速やかな建て替えを求めた。