【川崎市宮前区】平均80歳 演劇に挑戦 オレオレ詐欺に注意喚起
後を絶たないオレオレ詐欺の被害をなくそうと、平均年齢80歳、演技未経験の高齢者らが劇団を結成した。団員たちは演劇を通して注意喚起をしようと練習に励んでいる。公演は、12月から来年3月まで近隣の老人ホームや、いこいの家で開催する予定だ。
劇団の名は「ショーアイランド」。有馬や野川のいこいの家で行っている健康マージャンの仲間たち約20人で結成した。もともと演劇とは無縁だった団員たちだが、「少しでも元気でいられる方法を」という何気ない会話がきっかけとなり、唯一、演劇経験のある島崎幸雄さん(76)が提案。「腹筋を使う発声は健康維持につながり、セリフを覚えることは脳トレにもなる」と仲間に声をかけた。自らは脚本、演出、出演の3役をこなしている。
今では生きがい
4月から本読みを始め、練習は月7回ほど。発声練習から始まり、長いときは朝から晩まで弁当持参で練習するという。団員らは「セリフは覚えられないし最初は大変だった」と声をそろえるが、「楽しみに変わっている」「心が前向きになって、気持ちが明るくなった」「今では生きがい」と喜びの声を上げる。
作品名は「夢フェス・コント〜今日もいい風が吹きますように〜」。詐欺の注意喚起がテーマだが、コントと銘打ち、笑いを誘う作品に仕立てた。マージャンサークルでの日常会話がそのままセリフに投影されているのが特徴だ。
例えば、米や物価高騰の話題では、「最近はね、(スーパーで)夕方5時半の(値引きの)シールの貼り換えを狙って店に突っ込む」や、ファミリーレストランの出来事として「(注文したら)ロボットが堂々と、そこのけ、そこのけで、品物を運んでくるの。ふざけてる」といった、高齢者ならではのウィットに富んだユーモラスなセリフが随所に盛り込まれている。
物語は、メンバーの一人に不審な電話がかかってくるという展開に。息子を装う人物から「女性を妊娠させてしまい、150万円が必要だ」という詐欺電話に思わず引っかかってしまうという被害の場面も描いている。
被害者役を演じる大島登世さん(83)は、「演劇を始めてから、元気に見えるのか、子どもたちに心配されなくなった」と笑う。「詐欺の被害防止はもちろんだが、皆さんに元気を届けたい」と本番へ意欲を見せた。
初演は12月19日
公演は、12月19日に麻生区にある老人ホーム・ツクイ川崎千代ヶ丘で初演予定。以降、プラザ橘、有馬いこいの家、鷲ヶ峰いこいの家などで予定。公演に関する問合せは【電話】044・853・1862(大島さん)。