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「週休3日制」は手放しで喜べない。うまく休むために不可欠な“セルフマネジメント能力”の中身

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官公庁や大手企業を中心にじわじわと進んでいる「週休3日制」の導入。一見すると、休みが多い働き方を選択しやすくなり、うれしいことのように思えますが、そう単純な話でもなさそうです。

マイナビ転職のアンケート調査(※1)によると、少なくないビジネスパーソンが週休3日制に「収入が減るのでは?」「普段の仕事の進め方が大きく変わってしまうのでは?」と不安を抱いていることが明らかになりました。

実際のところ、週休3日制は働く人々にとってプラスになるのでしょうか。そして週休3日制をどう乗りこなせばよいのでしょうか。

今回は休養の専門家のコメントをもとに、週休3日制が私たちの仕事とキャリアに与える影響について解説します。

監修者

片野 秀樹
博士(医学)、一般社団法人日本リカバリー協会代表理事。株式会社ベネクス執行役員。東海大学大学院医学研究科、東海大学健康科学部研究員、東海大学医学部研究員、日本体育大学体育学部研究員、特定国立研究開発法人理化学研究所客員研究員を経て、現在は一般財団法人博慈会老人病研究所客員研究員。日本リカバリー協会では、休養に関する社会の不理解解消やリテラシー向上を目指して啓発活動に取り組んでいる。著書に『休養学:あなたを疲れから救う』(東洋経済新報社)など。

※取材はリモートで実施しました

週休3日制時代に求められる「セルフマネジメント能力」

近年、働き方改革の一環として、さまざまな業種・職種で週休3日制の導入が議論されるようになりました。

現在、どれほどの企業が週休3日制を導入しているのでしょうか。マイナビ転職が2023年に行ったアンケート調査(※1)によると、全体の13.7%とまだまだ定着しているとは言い難い様子。

また、「現在の職場で週休3日制を導入してほしいか」を聴取したところ、意見がほぼ真っ二つに分かれる結果となりました。

週休3日制のイメージについて「収入が減りそう(総労働時間の減少など)」とネガティブなイメージを抱いている人も全体の62.3%に上っています。

「休日増」があまり歓迎されていないようにも思えるこの結果を、休養のプロフェッショナルはどう見るのか。片野さんは「示された懸念はある程度的を射ている」と語ります。

「週休3日になって休養の時間が増えるのは喜ばしいことですが、そうなるとセルフマネジメント能力がますます求められるようになるでしょうね。

なぜなら、週40時間(8時間×5日)の労働時間が変わらないのであれば、1日あたりの労働時間はむしろ増えるからです(10時間×4日)。

休養とは、体や心の活力を蓄える準備時間。日々の休養を充実させるには、その日の仕事が終わってから次の日の仕事が始まるまでの『勤務間インターバル』の内容をうまく設計しなければなりませんが、労働時間を据え置いて週休3日制が導入された場合、単純に勤務間インターバルは減ってしまいます。

セルフマネジメントをより強く意識しなければ、増えた休日を有効に使えないばかりか、仕事の進め方に悪影響が出る可能性もあり、この『手放しで喜べない感じ』が回答に反映されたのではないでしょうか」

休み方を考えるとは、「出すべきパフォーマンスを言語化する」こと

では、週休3日制を乗りこなすために、どんなセルフマネジメント能力が必要なのか。その一つが、「会社から求められているパフォーマンス」を言語化する力だと片野さんは言います。

「会社が従業員に期待しているのは、あくまで期待通りのパフォーマンスを出すこと。逆に、それさえできていれば、いくら休んでも問題ないはずです。

ただ、週休3日制が導入されると、より少ない時間でパフォーマンスを出す必要がありますし、週休2日の時代と同様の活力を維持するため、より効果的に休まなければなりません

前提として、ここで自分にどんなパフォーマンスが求められているのか、メンバーとマネージャー間で目線合わせができていないと、どう休めばいいかが分からなくなりますよね。

そう考えると、メンバーはアスリートのように自分のパフォーマンスとシビアに向き合う必要が出てきますし、マネージャーも『なんとなくやってなんとなく結果を出して』という曖昧な指示はできなくなる。休日が1日増えるって、案外大変なことかもしれません」

休み方は「DRICS」で設計する

また、より効果的に休むうえでは、「仕事と休みを切り離す力」が必要になると言います。そのための心構えとして片野さんが提唱するのは「DRICS」という考え方

「Dはディスタンス、つまり仕事と距離を取ること。Rはリセット、仕事から頭を切り替えること。Iはインタレスティング、自分にとって興味のあることを追求すること。Cはコントロール、時間をマイペースに(コントローラブルに)使うこと。最後にSはスペース、「オフの時間」の時間帯をしっかりと確保することです。

これは何も本業だけに言えることではありません。休日が増えると、副業や資格の勉強を始める人も増えると思いますが、頑張り過ぎてそれらをストレスに感じてしまっては、元も子もありません。そうならないよう、ここでも『DRICS』の考え方が生きてくるのです」

「24時間戦えますか?」の時代より長時間“戦っている”現代人

仕事と休みを切り離すためには、会社が従業員の「つながらない権利」を尊重することも重要だと片野さんは語ります。

「たくさん休んでいいですよと言っても、休みの時間にチャットやメールを送り合う環境があるようでは、効果的に休めず、休み中にそわそわしてしまう人すら出てくるかもしれません。

そもそも、日本人の休養に対するリテラシーはそこまで高くないんです。

少し前のデータですが、2018年の総務省調査で、日本人の過半数が24時間につき13〜15.9時間の勤務間インターバルを取っていることが分かっています。EU各国の勤務間インターバルは11時間(編注:24時間につき最低連続11時間の勤務間インターバルを付与することが『労働時間指令』で義務付けられている)なので、単純比較するとEUのビジネスパーソンより日本のビジネスパーソンのほうが1日の休養時間は長いはず。なのに、各種アンケート調査では得てして『長時間労働が問題だ』という回答が寄せられますよね。これはオンとオフをうまく切り替えられていない証左ではないでしょうか。

それに、現代はオンとオフを切り替えづらい環境です。かつて『24時間戦えますか?』というフレーズが流行りましたが、当時の人々が本当に『24時間』働いていたかというと、もちろんそうではありません。

当時は携帯電話もパソコンもなく、営業に行ってきますと会社を出たら、会社から連絡は入らないことが一般的でした。そうなると、営業先を訪問する合間の時間をどう使うかは自分に委ねられるので、みんなコーヒーを飲んだり、新聞や本を読んだりと、自分なりの方法でうまく休養を取っていたんですね。

しかし、デジタルデバイスが普及して常時『つながる』ようになった現代ではそうはいきません。どこにいてもチャットやメールで連絡は来るので、いつでも仕事のことを考えざるを得ない。各種ツールの発達で業務効率化の圧力もかかっており、オンの時間をどう充実させるべきかという『オン至上主義』的な考え方が浸透しています。

ある意味、現代人のほうがよっぽど“24時間戦っている”と言えるのかもしれません」

上手に休む力は「キャリアアップ」に直結する

一方、そうした環境下で週休3日制を導入し、セルフマネジメント能力を養うことは「キャリアアップにもつながる」と片野さんは語ります。

《画像:週休3日で「収入が上がった」と回答した人は全体の50.4%に上っている》

「先にお伝えした通り、休む力はセルフマネジメント能力に直結しますし、ハイキャリア層は得てしてセルフマネジメント能力に長けています。

日本のビジネスシーンにおいて週休3日制を活用するうえではさまざまなハードルがあると言えそうですが、導入をめぐる議論が『休み方』や『キャリア』ついて考える良い機会になると良いですね」


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( https://tenshoku.mynavi.jp/content/declaration/?src=mtc )

取材・文:はてな編集部・山田井ユウキ
編集:はてな編集部
制作:マイナビ転職

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