“ヒロアカ”から続く“師弟は話してはいけない”決まり? 自分の可能性が広がる三間音響監督こだわりのアフレコーー『ヴィジランテ -僕のヒーローアカデミア ILLEGALS-』梅田修一朗さん、長谷川育美さん、間宮康弘さん インタビュー
大人気作品『僕のヒーローアカデミア』の公式スピンオフシリーズ『ヴィジランテ -僕のヒーローアカデミア ILLEGALS-』がTVアニメ化! 2025年4月7日より毎週月曜 23:00~TOKYO MX・BS日テレ、25:59~読売テレビにて放送開始です。
主人公は“ヒーロー”に憧れながらもその道を諦めた青年・灰廻航一(コーイチ)。平凡な大学生活をおくる彼は、自称アイドルのポップ☆ステップと無資格のヒーロー・ナックルダスターと出会い、“非合法(イリーガル)ヒーロー《ヴィジランテ》”として巨悪に立ち向かうこととなります。
今回、灰廻航一役・梅田修一朗さん、ポップ☆ステップ役・長谷川育美さん、ナックルダスター役・間宮康弘さんにインタビュー! “ヒロアカ”ならではの作品の魅力はもちろん、こだわり満載のアフレコ秘話を伺いました。
【写真】『ヴィジランテ』梅田修一朗、長谷川育美、間宮康弘 インタビュー
“ヒロアカ”らしからぬキャラクターたち
ーー灰廻航一の主人公像についてお聞かせください。
梅田:“ヒロアカ”といえばデクやかっちゃんたち高校生のイメージだったんですけど、コーイチは彼らと違って大人なんですよね。大学生は大人になっている人もいれば、これからの人もいると思うんですけど、コーイチは比較的落ち着き始めているといいますか。もちろん年相応な部分もあるんですけど、それでも「これからヒーローになるんだ!」という熱が落ち着いた後なんですよね。そこは外伝とはいえ“ヒロアカ”の主人公としては意外に感じました。
でも、そんな普通なところが共感できるんですよね。むしろ、普通の彼がどんな風に活躍していくんだろう?と気になってしまいました。
ーー普通なところは“個性”「滑走」にも表れていますね。
梅田:そうですね。ママチャリに抜かれてしまうところはコーイチらしい演出だなと思いました(笑)。
長谷川:私も“ヒロアカ”に触れたことがあるんですけど、デクは“個性”がないものの、気持ちの部分は秀でていて、ヒーローになり得るんじゃないかと最初から思えるような主人公でした。だからこそ『ヴィジランテ』の主人公はどんな子なんだろう?と思って読んだら普通の子で。
コーイチはヒーローへの憧れの気持ちを抱いているけど、身の程を知っている身の程マンといいますか(笑)。自分のできる範囲でやりたいことをやる主人公ということに驚きましたし、逆に、この子はどういう人に出会って、事件に巻き込まれ、変わっていくんだろうってワクワクしました。
間宮:コーイチは普通の大学生ですよね。ヤンキーに絡まれたり、ママチャリくらいのスピードしか出なかったりですが、そこからどうやってドラマティックに進んでいくのかという部分に見応えがあると思います。最終的に、オールマイトのような素晴らしいヒーローになれるのか。これから長きにわたって楽しんでいただけたら嬉しいです。
ーーポップ☆ステップについてはいかがでしょうか?
長谷川:ポップはこの作品の中で特殊な立ち位置です。3人での活動も「自分がこうしたい」とか、「こういうヒーロー活動がしたい」という想いを持っているタイプでもないのが個人的にちょっと面白いなって。
やっぱりコーイチという存在がいるから彼女は3人でいるんだと思います。私としても、ヒーローを題材とした作品でありながら、しかも、“個性”を持ちながらもヒーローに重きを置いていない役柄というのは新鮮です。
演じるうえでは、そもそも彼女は人に対する行為が原動力となって動いているので、なんでここで怒るのか、なんでわざわざ事件に赴いて声を張り上げたり、人を先導したりするのか。そういう行動理念とか、「なんで?」という気持ちを大事にしなければいけないと思いました。彼女には正義の心だけではないところがあるんですよね。“目的を見失ってしまうとポップではなくなってしまう”ということをよく意識して演じています。
ーー“ヒロアカ”にはあまりいないようなキャラクターですね。
長谷川:そうですね。“ヒロアカ”の雄英高校ヒーロー科の生徒たちはみんなヒーローになりたいという想いがありますが、ポップは別にそうじゃないんですよね。歌いたい意欲はあるんですけどね。
ーーナックルダスターについてはいかがでしょうか?
間宮:ナックルはまだ詳しくお話できないことがあるんですけど、コーイチやポップとは違い、大人の立場で、且つ、ずっと悪と向かい合ってきた立場のキャラクターです。彼には悪と戦ってきた歴史があり、その中で培った憎しみや怒りといったネガティブな心情があるんですよね。
本質的にはヒーローというより、敵(ヴィラン)に近い印象です。コーイチやポップと過ごしているときは素の顔ですけど、トリガーを打った人と相対しているときは、殺しはしないけどそれに近いくらいの感情で。特に、戦闘シーンなんかはそれくらいの感情をセリフの端々に込めて芝居を作っています。
ーー原作でもオールマイトがスーパーマンなら、ナックルダスターはバットマンという記載がありました。
間宮:そうですね。ダークヒーロー感が強いですよね。背負っているものが上手いこと伝わってくれたら嬉しいです。
ローカル感は『ヴィジランテ』ならでは
ーー梅田さん、長谷川さんは“ヒロアカ”をご存知とのことですが、間宮さんは過去シリーズに出演していますね。
間宮:敵(ヴィラン)として登場するギガントマキアとミミックをやらせていただきました。そんな中、今作はオーディションだったんですけど、「俺、ギガントマキアだからさすがにヒーローサイドはないだろう」と諦めていたら受かってしまって。めちゃくちゃ嬉しくて、つい駅のホームで叫んじゃいました(笑)。
ーー(笑)。みなさん“ヒロアカ”の雰囲気はご存知ということで、本作に感じた“ヒロアカ”らしさ、逆に本作ならではの魅力をお聞かせください。
梅田:“個性”社会の中、“ヒロアカ”ではメインに描かれなかった“ヒーローを目指さない人たち”、現実の僕たちと同じような普通の生活が深堀りされているところは『ヴィジランテ』ならではだと思います。それでいて、『ヴィジランテ』を見ることで“ヒロアカ”本編の解像度が上がるところも面白いなと思います。
間宮:鳴羽田という街のローカル感がありますね。街に根付いたヒーローみたいな。
長谷川:ローカルなアイドルイベントもありますからね(笑)。
間宮:登場人物が厳選されているので、掘り下げがすごいんですよね。準レギュラーキャラクターを含めてそれぞれが立っているイメージがあります。
梅田:あとは“ヒロアカ”にも出てくるキャラクターたちですよね。ちょっと昔の姿ではあるんですけど。
長谷川:スピンオフでその過去を見せてくれるんだって驚きました。
間宮:「ここでこのキャラ出す?」みたいなね。
長谷川:そこは“ヒロアカ”ならではだし、『ヴィジランテ』ならではの部分ですね。
間宮:クロスオーバーみたいでワクワクしますよね。
なにげない日常シーンで大苦戦? 三間音響監督のこだわりアフレコ
ーーアフレコはどんな雰囲気でしたか?
長谷川:音響監督の三間(雅文)さんが役柄の関係性を大事にされていて、最初は「あんまり仲良くならないでね」と言われていて。
梅田:僕は間宮さんと話すなと言われました。
間宮:そうそう。席も離されちゃってね。
ーー師弟だからあまり馴れ合ってはいけないと。
間宮:そうですね。ふたり(梅田さんと長谷川さん)はよく話しているんだけどね。僕も話したいなと思っているんですけど(笑)。
一同:(笑)
間宮:そもそも、みんなとはほかの現場でもあまりお会いしないんですよね。
梅田:そうですね。だから普段からお話しているというよりは、今日のインタビューみたいに、アフレコ以外でお会いしたときに話せる感じですね。
長谷川:今日は誰も見てないから(笑)。でもほかの現場でそういうことを言われたことがなくて。
梅田:ないですね。
長谷川:そういうところから作品作りを意識されているのかと思うと面白いなって。
間宮:“ヒロアカ”の山下大輝さん(緑谷出久役)と三宅健太さん(オールマイト役)もそうだったらしいですね。憧れているオールマイトにあんまり近づいてはいけないと言われていたそうです。
ーー今作、戦闘シーンは特に見応えがあるかと思いますが、改めて演じた感想をお聞かせください。
梅田:最初は師匠が戦っていますよね。
間宮:ナックルダスターが殴ってトドメを刺すことが多いですね。これは三間さんにも言われたんですけど、上擦らずに、腹に力を込めて。そして拳を振り上げながら演じています。そうじゃないと相手を倒せないんじゃないかと思うんですよね。
梅田:コーイチはできないことをできるようにギリギリで頑張れるように演じています。毎回、できないことを1mmでもできるようになるぞ、みたいなイメージです。コーイチ本人としては、できるのかできないのかではなく「やるぞ」という気持ちなので。
長谷川:ポップはあまり戦わないんですよね(笑)。基本的に街の人を逃がすとかの役割で。
間宮:それでいてピンチが多いよね。
長谷川:そうなんですよ。救われる側になることが多いので、とにかく「助けて」の気持ちに重きを置いて叫んでいます。
間宮:またこの作品、敵(ヴィラン)側のキャストもすごい勢いでやってくださるんですよ。それぞれ声を振り絞って迫力のあるヴィラン像を作ってくださるので、こちらもちゃんと立ち向かわないと勝てないくらいです。みんな声を枯らして演じているので、画面の向こうのみなさんにも通じてほしいなと思っています。
梅田:みなさんに個性犯罪を感じてもらいたいですね(笑)。
ーー三間さんは“ヒロアカ”でも音響監督を務められています。その分、こだわりのディレクションが多かったのでは?
梅田:常にですね。
長谷川:うん。
梅田:僕の中でコーイチがすごく良いやつという印象は変わらないですし、根っこはヒーローであることも間違いないんですけど、それが力強く表現できていなかったり、日常会話でもサラッとしていると「コーイチはそうじゃない」と。コーイチは思いやりがあって、頑張れるやつ、という部分をちゃんと表現しようと厳しくディレクションをいただいています。
ーーここぞという場面以外でも細かくディレクションがあるのですね。
梅田:ここぞという場面も、日常も、全部ですね。普段は言われないようなことも全部指摘してもらっています。僕としては自分の中の枠を広げていただけている感覚です。
長谷川:ポップとして一番言っていただくのは、コーイチに対する態度でした。彼に対してどれだけ感情を出すのかという塩梅は毎回細かく調整していて、本当に何度もテイクを重ねて詰めています。でも三間さんは、良いのが出たときに「かわいい」と言ってくださるんです(笑)。あの瞬間が嬉しいんですよね。
ーー(笑)。それだけ繊細なバランス調整をしているのですね。
長谷川:私の場合はポップの気持ちを考えすぎてオーバーになっちゃうときがあるんですよね。照れすぎちゃったりとか。そういうときは溢れるものをグッと抑えながら演じています。ほかにも、言葉をかけるときもそうですし、モノローグでも細かくディレクションをいただいています。本当に勉強になる現場です。
ーーポップといえば歌ですが、ライブシーンはどうでしたか?
長谷川:ポップなので上手く歌うというより、声を張り上げてみんなに届けることを心がけました。歌だけどお芝居なので、そこは三間さんにも細かくディレクションしていただきながら、なんとか頑張りました。
ーー間宮さんはいかがでしたか?
間宮:俺は格闘シーンが多いんですけど、どうしても人をぶん殴るシーンで楽しくなってしまって(笑)。
梅田:師匠と一緒じゃないですか!(笑)
一同:(笑)
間宮:だけど、その楽しさが芝居を超えてしまうんですよ。自分の中では気持ちよくぶん殴りながらナックルダスターとユニゾンして良い芝居ができているつもりなんですけど、実は俺のドS根性が働いて気持ち良くなっているだけになっていて。結局、ナックルにある憎しみや怒りといったネガティブな感情がなくなっていたんですよね。三間さんには「それは違うでしょ」とご指摘をいただきました。
ーーそこはご自身の気持ちを抑えているのですね。
間宮:個人的にはゲラゲラ笑いながら殴っちゃうんですけど(笑)、ナックルはそうではなく、犯罪を憎む気持ちを一撃一撃に込めているんですよね。彼はああいう顔ですし、「スカッとする」とか言っちゃうから本当に殺そうとしているように見えます。しかし、実際はそんなに薄っぺらいものではないので、指摘されるたびに「あぁ、また気持ち良くなってた」と我に返って方向修正することが多かったです。
あとモノローグが苦手なんですよね。例えば、コーイチの家の冷蔵庫からビールを取るとき、その前にコーイチにセリフをかけられたりするとつい反応してしまって。でも、ナックルというキャラクターは目の前のビールのことしか考えていないから、反応すべきではないんですよね。ここはどうしても会話をしたくなってしまって、結局、10テイクくらい重ねたかもしれない。
長谷川:声をかけられるとどうしても返したくなっちゃいますよね。
間宮:そうそう。無意識で返しちゃうんだよね。
ーーナックルは戦闘シーンが大変なのかなと思っていましたが、意外とオフのシーンで苦戦しているのですね。
間宮:苦戦しましたね。そういう何気ないことって日常生活で普通にできるからこそ、意識した途端にできなくなるんですよ。お芝居は特にそうです。
梅田:すごくわかります。無意識を意識的に表現するのは難しいです。
間宮:また三間さんはそれをすぐに見抜くんですよね(笑)。
長谷川:そうなんですよ〜。目線がちょっとズレているだけで見抜かれるんです!
間宮:「今、どこ見て言ってるの?」ってね。
梅田:本当にそうですね。コーイチがマイトパーカーをチクチク直しながらポップと会話するところがあるんですけど、そこも反応しすぎて「もっと目の前のことに集中して」と。あれは自分でもその通りだなと思わされました。
長谷川:私も、家にいるコーイチに声をかけるとき「コーイチが家のどこにいるのかわからないよね? じゃあ家の全体に声をかけないと」と言われて、「たしかに……!」って(笑)。
間宮:そうだよね。コーイチの家に帰ってきたときの「ただいま」は“誰かがいる”ことを考えるとかね。
長谷川:どれも意識したらそうなんですよね。そこは面白いなと思いました。
間宮:というように、指摘されるまで気が付かなかったことがすごく多かったです。
第1話は路地裏とライブシーンに注目?
ーー最後に、第1話放送に向けて、みなさんが映像を見た感想をお聞かせください。
梅田:“ヒロアカ”の空気感がありつつ、ダークな感じがしてかっこよかったです。
間宮:やたら路地裏が出てきたよね?
長谷川:たしかに、この3人は路地裏で出会いますよね。
梅田:本当に路地裏のイメージですね(笑)。
間宮:個人的には、ポップが3割増くらいでかわいくなっていたなって。
長谷川:第1話からライブシーンがありますからね。
梅田:決まってましたね。
間宮:ここは作画チームが気合を入れていますよね。
梅田:振り付けもちゃんとあるから動きがすごくて。
長谷川:実はアフレコのV(映像)にダンサーさんが踊っている映像が入っていたんですよ。
長谷川:振り付けがちゃんとしていて、第1話から見どころが炸裂していると思います。
間宮:あと、釘崎爪牙たちもポップに対してちゃんと悪いんだよね。そういうところでも“ヒロアカ”とのテイストの違いが出ているんだなと思いました。
長谷川:闇の部分を感じましたね。あそこはポップとして、タイミングを調整しながら喋るお芝居にこだわりました。特に、前半は巻き込まれていることが多いので、とにかく叫んでいますね。
ーー放送を楽しみにしています。ありがとうございました!
【取材・撮影 MoA】