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【子どもの頃の失敗が「経験」や「学び」に】おこづかいは貯金せず自由に使わせる/ファイナンシャルプランナー・櫻井かすみ

こそだてまっぷ

おこづかいは貯金せず「自由に使わせる」ほうがよい

「ねぇねぇ、おうちにお金ってどのくらいあるの?」
「毎月いくらお金をもらっているの?」
「うちは貧乏? お金持ち? どっちなの?」

子どもたちから、このようなお金に関する無邪気な質問をされて困ったことはありませんか? 

お金の話って大切なのはわかるけれど、「子どもにお金をいつ・どのように渡せばいい? 使わせたらいい?」「いつから、どのようにお金の話をしたらいいの?」こんな悩みが続出しています。

でも、難しく考えすぎなくても大丈夫! お金の話は、日常の中で楽しく自然に伝えられるんです。

「ファイナンシャルプランナー」「小学校教諭普通免許状」を保有し、多くの媒体で「お金」に関する情報を発信しているママ金融教育家・櫻井かすみ氏の著書『母が子に伝えたい大切なお金と社会の話』(Gakken)から、一部内容を抜粋してご紹介します。

幸せに生きるために必要なお金について、ぜひ一度親子で話し合ってみてくださいね!

親子でもっとお金の話をすることによる複利効果とは

親であれば、大切な我が子に「お金の苦労をさせたくない」と思うものでしょう。親として当然のことだと思います。

誰しもが生まれてから死ぬまで密接に関わる「お金」。こんな大切な存在にもかかわらず、今まで学校では教えてもらえることはありませんでした。

では、一体どのようにしたらお金に困らないのでしょうか。お金の苦労をさせないためには、家庭内でお金の話をすることを勧めています。子どもとお金の話をすることは、お金の大切さを知るだけでなく、今後お金とどう付き合うか知るために重要になってきます。

お金を通じて子どもが「将来やりたいこと」や「欲しいもの」を話せるようになり、理解することにもつながってきます。お金の価値観や使い方や管理方法、社会的責任に対する理解も深まり、人として成長するための基盤が作られます。

親がオープンにお金の話をすることで、子どもはお金に対してネガティブな感情を減らすことにもつながります。お金は物質的なものだけでなく、人々の努力や時間の対価であり、社会全体の中で重要な役割を果たすものであることを、知ることができるからです。

そして、子どもが単に金融リテラシーを育むだけでなく、早い段階での経済的自立をすることにつながってきます。お金に対する不安や抵抗を解消し、健全な態度を育むこともできるからです。

続いて、「お金の使い方」を実践的に学ぶチャンスを提供します。お金をただのものと
して扱うのではなく、使い方や管理方法について学び実生活に役立つスキルを身につけることができます。

たとえば買い物に行く際に、予算内で買うものを決める過程を通じて、お金の使い道を考える力を養うことができます。また、家計の一部を管理させたり、おこづかい帳をつけさせたりすることで、お金の管理方法や収支のバランスを学ばせることができます。

親が家計の支出や貯金の計画を一緒に話すことで、子どもは自分が本当に必要なものにお金を使うことを学ぶことができます。これにより、お金の使い道を自ら考える力が育成されます。

小さな失敗を繰り返そう

お金に関する「小さな失敗」を繰り返すことは、金銭感覚や判断力を育てる上で非常に重要です。小さな失敗から学ぶことで、大きな失敗を未然に防ぎ、将来の大きな成功につなげます。

なぜ「小さな失敗」が必要なのか? 第一に、「大きな失敗を未然に防ぐ」ためです。

小さな失敗を振り返り、何が原因で失敗したのかを分析することで、自己改善の機会を得ることができます。このプロセスは、将来の大きな失敗を防ぐための重要なステップです。子どもの頃の小さな失敗を通じてリスクや注意点を学ぶことで、大きな失敗の回避につながります。

親として子どもに小さな失敗を経験させる方法

① おこづかいの自由度を増やす
▪ 子どもが自由に使えるお金を渡し、失敗を通じて学ばせる。

②予算を与えて体験させる
▪ 買い物リストを作り、子どもの好きなように使わせる。

③投資を簡単に教える
▪ 模擬投資ゲームで、株の売買のシミュレーションをさせる。

④失敗を責めずに振り返る
▪ 「どうして失敗したのかな?」「次はどうしたら良いと思う?」と、一緒に学びを共有する。

「小さな失敗」は、学びと成長のチャンスです。破産して生活ができなくなる状態ではなく、安全な範囲で失敗を経験し、その教訓を未来の成功につなげていきましょう!

「おこづかい」の額・タイミング・管理方法

まず大前提として、おこづかいを始める年齢に決まりはありません。お金に興味・関心を持ち、お金の概念がざっくり理解できるようになってきたら渡すタイミングだと考えます。

一般的には、小学校入学前後が一つの目安だとされています。なぜならこの時期は、小
学校で算数の授業が始まり、子どもの行動範囲が広がることで、お金の基本的な使い方や価値を理解し始める時期だからです。

ここで考えたいのは、おこづかいをあげる目的。おこづかいをあげるのは、子どもに
「お金の使い方」「計画性」「価値観」を学んでもらうためです。単にお金を渡すだけではなく、子どもの発達や生活環境に合わせた方法を考えることが大切です。

おこづかいは、いくらがいい?

「おこづかいはいくらが良いでしょうか?」これもよく聞かれる質問です。
結論、子どもと一緒に金額を決めるとお伝えしています。

子どもの年齢、家庭の経済状況、地域の物価、そして子どもの必要性に応じて親子で話し合って決めていただくことです。

あくまで目安でありますが、以下で子どもの年齢に基づく金額の目安を挙げてみました。少しアレンジした目安、さらに他の目安も載せています。

知っておくとヒントになるトピックも盛り込みました。迷った際やお子さんと話し合って決める時に、参考にしてみてください。

子どもの年齢に基づく金額の目安

①幼児期(5~6歳)
● 金額の目安:50~100円前後/回
▪ 「お金を使う体験」を重視。
▪ 渡し方:少額を少しずつ渡し、駄菓子やおもちゃを買う中でお金の基本的な使い方を教える。

②小学校低学年(1~3年生)
● 金額の目安:100〜500円/月
▪ 小学1〜3年生では、自分で考えて計画的にお金を使う力を育てる時期。
▪ 子どもたち同士で遊ぶ機会が増える。
▪ 参考:例えば「学年×100円」の月額を目安にする。小学2年生なら200円/月というように

③小学校高学年(4~6年生)
● 金額の目安:400〜1000円/月
▪ 自分でお金を把握・管理し、欲しいものを計画的に購入する練習を開始。
▪ 習い事などで行動範囲が広がるため、少し多めに渡すことで交際費を含めた使い方を教える。

貯金はしなくてよい?

貯金は単なるお金の管理方法ではなく、子どもの未来を形作る大切な力です。親も一緒に取り組み、楽しく教えることで、子どもが自主的にお金の価値を学べるようになります。

しかしながら、子どもにお金の管理を教える際、「貯金を強制する」よりも「自由に使わせて失敗を経験させる」ほうが効果的だという考え方があります。

ある調査によると、お年玉の使い道の65%は「貯金」という回答だったようです。もちろん、貯めて増やすことも大切ですが、それではあまりにももったいなく思えてきます。

どういうことかというと、まとまった金額を子どもが手にしやすいお年玉などのイベントを活用して「お金の教育」ができるということです。

具体的には、子ども自身にお年玉をゆだねて「お金の使い方」を、実践を通じて子ども自身が学ぶのです。そのことにより、「どのような使い方をすれば、幸せを感じるのか?」「人に喜んでもらえるのか?」を学び、お金の必要性や価値を子ども自身が理解できるようになります。

将来のために貯金も大切ですが、子どもの考えで思うがままお年玉を使うという選択肢もあって良いと考えています。

「これは、自分が心の奥底から本当に欲しかったものだった」「逆に、こっちはそこまで欲しくなかった」など、実感することができるからです。この経験をなるべく幼いうちにさせることをお勧めしています。

子に伝えたい「一生お金に困らない生き方」

「お金に困らない生き方」は、単にお金をたくさん保有していることではありません。それは、お金の本質を知り、自分の価値観に合ったお金の使い方を行い、働き方を選び、得たお金を計画的に管理し、人生を自由に豊かにする方法を身につけることです。

お金は「ありがとうの対価」として、働く人の努力やサービスに対する感謝の象徴であり、また、ものやサービスを交換するための便利なツールです。

さらに、お金は信頼に基づく社会的な約束の上で成り立つツールであり、その使い方次第で未来に価値を生み出す手段となります。

子どもたちに、働くことの大切さや、賢くお金を使うことの意味を伝えることで、将来困らない生き方の基礎を作ることができます。

幸せに近づくお金の考え方を、子どもにわかりやすく伝えるには?

①お金は「ありがとうの交換」と教える
● お金の先に働く人や社会があることを伝える。
例)「このおもちゃはたくさんの人が働いて作ってくれたから、買えるんだよ」

②目的別にお金を管理させる
● 「自分のため」「将来のため」「誰かのため」に使うお金を分ける方法を教える。
例)貯金箱を3種類用意し、それぞれの目的に応じてお金を分ける。

③お金を使う「楽しさ」と「責任」を伝える
● 自分で稼いだお金や計画的に使ったお金の価値を感じさせる。
例)おこづかいで欲しいものを買わせ、その満足感を分かち合う。

子どもにわかりやすく説明するには、具体的な例を「楽しく、わかりやすく、実生活に結びつけて」伝えることが大切です。

お金そのものが幸せを生むわけではなく、どのように管理して使うのかが大切です。つまり、お金はあくまで「道具」であり、幸せを決めるのは自分自身だということです。

このようにして、ものの豊かさと心の豊かさを、日常生活を通じて考えるきっかけになればと思います。

母が子に伝えたい大切なお金と社会の話

親子で一緒に考える、幸せに生きるために必要なお金の知識を1冊に。
家計/小遣い/貯金と投資/キャッシュレス/働くとは?/お金の正体/
お金が作る未来などから紐解ける「一生役立つお金の話」を通じて説いていく。
【目次】
第1章 今すぐどうにかしたい! 「おこづかい」の額・タイミング・管理方法
第2章 これも即解決! 今起きているお金の「使い方」問題
第3章 ホントは母だって教えてほしい……。ネットですぐ買えてキャッシュレスの今。お金との「正しい付き合い方」とは?
第4章 【実践編】親子の絆を深める「お金に強くなるワーク」
第5章 「お金」って、そもそも何者なの? 何と答えるのが正解?
第6章 家庭のお金の流れを知ると生活が変わる!
第7章 「大人になると働かないといけない」ではなく、「働きたい」と思うために知っておきたいこと
第8章 人生の三大支出「住宅費」「教育費」「老後資金」にどう備えるか
第9章 投資で未来は明るくなるの? 誤解だらけの「投資」を正しく理解する
第10章 「お金と夢の羅針盤」 ~成し遂げたいことは何? 未来をどう生きたい?

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